*** june typhoon tokyo ***

『クラシコ』上映会

■ 映画『クラシコ』も山雅のように全国(公開)へ“昇格”するか



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 阿佐ヶ谷ロフトAにて映画『クラシコ』を鑑賞。

 徹マガPRESENTS“徹マガライブ!vol.1 映画『クラシコ』上映会”というイヴェントで、写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱とサッカー地域リーグを題材にした映画『クラシコ』の監督・樋本淳を迎えての上映&トークというもの。13時からの開演だったが、祝日とはいえ昼時間、さらに雨の中という条件でも、ざっと5、60人はいたか。この手のイヴェントではかなり集客数が多いと思う。それだけコアなサッカー好きがいるということの証左かもしれない。
 観客の中心は徹マガ会員の方々。自分は会員でもなんでもないので、一般客としてシラッと後方で鑑賞した。上映が100分弱、その後約1時間トーク&質疑応答(徹マガ会員の方は、その後に“二次会”があった模様)。
 松本での上映はあったものの試写会に近い形であったようで、東京での公開、しかも金額を払っての上映はこれが初めてとのこと。そういう意味では、この映画の最初の鑑賞者という貴重な経験となった。今後はすでに来春、池袋のシネマ・ロサにおいての公開が決定しているようで、順次全国公開をしていきたいとのこと。吉祥寺での公開も依頼していて、仁義として現在同カテゴリ(JFL)で吉祥寺がいわば地元の横河武蔵野などへ挨拶に行ったとか。(笑)

 この映画『クラシコ』は、サッカーリーグで第4部にあたる地域リーグに焦点を当て、その全国9ブロックに区分される地域リーグの中でも最激戦区といわれる北信越リーグにおけるAC長野パルセイロと松本山雅FCの因縁の対決、“信州ダービー”を題材にしたサッカー・ドキュメンタリーだ。長野と松本を中心とした戦いと、地域リーグというなかなか日の当たらない、しかしながら、そこに精魂を注ぐサポーターや市民たちの熱く泥臭く、そして生々しい日々の情熱を追う。出演は上述の2チームやそれを取り巻く選手、監督、関係者のほかに、ナレーターとして安めぐみが起用されている。サッカーはJも地域もただでさえ“オレの、オレたちの…”という男人称(笑)が蔓延る世界だが、この映像も非常に男臭い。そのなかでの唯一の花、癒しという部分を彼女に託したともいえるか。(苦笑)

 映画は上田ジェンシャン対サウルコス福井の試合の映像から始まる。松本山雅のサポーター数は地域やその上のJFLでも別格として、リーグとはいえ4部というところの過疎率(苦笑)を瞬時に表現させてみせた。ドキュメンタリーでは、まず本筋ではなく主軸のテーマや人物の周辺の映像やインタヴューなどから本編へと繋いでいくという展開はそれほど珍しいことではないが、サウルコス福井のキャラである恐竜のぬいぐるみを着たサポーターがポツンと佇む姿とゴールキーパーの怒号が響き渡るピッチを描いた構図は、ものの見事だった。導入としては秀逸だったといえる。

 展開は松本山雅がサポーター、長野パルセイロが関係者・スタッフを中心にして話が進む。そのためか、映像の印象としてはやや松本山雅寄りに見受けられる(その後のトーク・イヴェントで時間的にはそれほど差がないとのことだった)。長野と松本との歴史的な対立構造、そしてサッカーでも……といったところでクラシコというタイトルなのだが、実際はそういった対決というよりも、地域リーグの現状とそれを支える人たちとの幾千日といった感じで、ややタイトルに沿っていない気がした。
 ただし、それは前例がないからなどといった映像使用の不許可や、使用料がNHKと同等などといった予算的な問題が大きく、この映画のテーマとなる重要な映像を使えないという事情があった模様。それならば、マイケル・ムーア的なゲリラ的な撮影方法も一つとしてあるだろうが、実際はなかなか難しいだろう。これらについて、トーク・イヴェントで宇都宮は「なぜJリーグや協会は邪魔をするのか」と憤っていた。松本山雅が天皇杯で浦和を負かしたところは、新聞切り抜きのみだったのも、そういう事情なのだと思われる。

 樋本監督は「松本山雅サポーターが多く出演しているが、長野のサポーターの映像は撮ったのか」という質問に対して、「サポーター同士という対比で見せることもあるが、完成度や人数において山雅の方が長野を圧倒していたので、山雅はサポーター、長野はフロントを中心に描いた」と言っていた。それも一理あるとは思うが、個人的には、人数は問題ではなくて、その熱がどのくらいかにフォーカスを当てた方がいいのではないかと感じた。完成系vs発展途上やそれぞれの人数の差が対立構造にならない訳ではないのだから。現在県庁や県の中心である門前町・長野への執着心が城下町・松本のサポーターや応援規模の大きさとなっている、という図式でもいいのだから。

 ただ、地域リーグというなかなかスポットが当たらないところから、市民とスポーツ、地方社会の現状、サッカー(Jリーグ)の未来などを語る切っ掛けとなる映画としては、素晴らしい作品になったと思う。
 この映画を通じ、地域とスポーツについての現状理解と可能性について各方面で語られる端緒になることを祈るばかりだ。

◇◇◇

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 永井秀樹(現・FC琉球)がJFLや地域リーグについてシラッと語るところも面白かったが、一番盛り上がったのは、長野パルセイロの監督バルディエール・バドゥ・ビエイラの誕生日に選手・関係者たちから贈られた、ビエイラの顔をかたどったバースディ・ケーキか。(笑)

 音楽は長野県諏訪郡原村の幼なじみ同士で結成され、長野県松本市でのライヴ・イヴェント“Crazy Rhythms”に出演し本格的な活動を開始したOGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)。挿入歌は「ステージ」「フォグランプ」「ワイパー」。

 ちなみに、安めぐみのナレーションは前半だけで、中盤以降は全く出てこなかった(はず)。
 
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