*** june typhoon tokyo ***

FC東京 vs 順天堂大学 @味フィ西【天皇杯】

 ちぐはぐな攻守で格下の“青赤”に翻弄され、4季連続で“ジャイアントキリング”を献上。

  9分 永井謙佑のゴールでFC東京先制 
88分 白井海斗の同点ゴール
105+2分 小林里駆がPKを決め、順天堂大学が逆転

 青と赤を基調としたユニフォーム、両チームの監督を務めるのが清水東高校サッカー部で活躍した“清水東三羽烏”(大榎克己、長谷川健太、堀池巧)のうちの二人(長谷川、堀池)、FC東京ユースで育った3名が先発に名を連ねるなど、因縁めいたものも感じた天皇杯2回戦、J1のFC東京と関東大学リーグ1部の順天堂大学との対戦は、FC東京ユース出身の小林里駆のPKが決勝点となり、順天堂大学が“ジャイアントキリング”に成功した。

 FC東京は2種登録の安田虎士朗のほか、品田、蓮川、中村拓海といった若手に、永井、東、レアンドロら主力を混ぜた布陣。一方、順天堂大学はFC東京U-18出身の長谷川光基、寺山翼、小林里駆がスターティングメンバーに起用された。

 FC東京としては、週末のルヴァンカップ2ndレグのことも考慮し、ベンチには置いていたが、出来るだけディエゴ・オリヴェイラやアダイウトン、高萩、三田などを起用する展開にはしたくなかったはず。すると、序盤の9分、アルトゥール・シルバがボールを奪うと、東を経て、オーヴァーラップした中村拓海にボールが渡る。中村拓海の深い位置からのグラウンダーのクロスを順天堂大学のGK・後藤佑介が弾くと、詰めていた永井が押し込んでFC東京が先制に成功。以降は試合を優位に進めながら、得点を重ね、セーフティリードを保つ展開になるかと思われた。

 だが、これでゴールを奪いに行くという共通意識が強くなったか、以降は順天堂大学が試合を支配する場面が多くなる。得点機は幾度か訪れ、内容でFC東京を上回りながらも、最後の牙城を崩せぬまま時計が進む。FC東京も押し込まれる時間を解消し、追加点を挙げてとどめを刺すべく、ディエゴ・オリヴェイラやアダイウトンを投入。71分に順天堂大学のオフサイドトラップをすり抜けて左サイドを突破した品田がクロスを送ると、ファーサイドから三田がダイレクトボレーで折り返したボールを、レアンドロがダイレクトボレーシュート。しかしクロスバーに阻まれ、追加点が奪えない。その後も疲れが見え始めた順天堂大学陣内へ押し込み、ゴールへ迫っていく。

 それでも勝利へ貪欲に走る順天堂大学は、再び攻めの姿勢を繰り出し、88分に中盤左サイドから小林里駆が大きく右へ展開すると、ファーサイドからヘディングで折り返す。このボールがルーズになったところで、中村拓海と品田が連係をとれずにボールを失うと、途中出場の長倉がボールを中へ。これに反応した白井が右脚一閃すると、グラウンダーのシュートがGK・児玉の手をかすめて左隅へ吸い込まれて、順天堂大学が同点に追いつく。

 90分で決着がつかず、延長戦に突入してもなかなか主導権が握れないFC東京は、延長前半のアディショナルタイムに蓮川がエリア内で小林里駆を倒してPKを与えてしまう。これを小林里駆が冷静に流し込んで、順天堂大学が逆転。後がないFC東京は、パワープレーやGK・児玉がゴール前へ上がるなど順天堂大学に立て続けに攻め込む。アルトゥール・シルバからのエリア内へのスルーパスに反応した中村拓海がエリア内で折り返すも、ゴール中央へ走り込んできたアダイウトンのシュートは枠を越え、絶好の同点のチャンスを逸してしまう。
 ようやく攻撃のギアが上がり始め、順天堂大学陣内へ立て続けに攻勢に出るが、最後の精度を欠き、ネットを揺らせずにタイムアップ。FC東京は、クラブ創設史上初めて公式戦で大学に敗れるという屈辱を味わうこととなった。

 しかしながら、FC東京の近年の天皇杯での成績は芳しくない。2016年に準々決勝に進出して以降は、2017年に2回戦で長野にPK負け、2018年に4回戦で山形にPK負け、2019年に3回戦で甲府に零封されるなど、カテゴリーが下のチームに連続で敗れている。これは、カテゴリーが下のチームに、ターンオーヴァーや若手を起用して臨むものの、主力メンバー構成とは異なりクオリティに差があり、選手層の厚さやチームとしての底上げがそれほどなされずに苦戦しているということの証左でもあるか。
 また、チームとしての共通理解や連係が乏しいため、この試合でも途中から主力を継ぎ込み、ブラジル人5名がピッチに立つというなりふり構わずの選手起用をしてきたが、個の力による打開に偏ってしまうから、集中して対策されてしまうと、なかなか個で凌駕することも難しくなる。最後は自らの精度も欠いて、あっけなく天皇杯の道が閉ざされてしまった。

 順天堂大学は機敏に動き、最後まで貪欲に戦い続けたことが、PKの獲得に繋がったのだろう。気持ちを全面に表わして闘う姿は、現在のFC東京にどこか足りないものの一つなのだろうか。
 FC東京は、簡潔に言えば自滅。しかも、プレー以上に各選手が精神的に余裕を持てていないことで、より疑心暗鬼に、悪循環に繋がっているようにも見えた。当初は天皇杯の勝利で勢いをつけて、ルヴァンカップ湘南戦2ndレグへ向かう算段だったろうが、真逆の結果で不安を払拭出来ぬまま週末を迎えることになってしまった。インターバルも少なく、新たな“特効薬”“得策”を与える時間もないゆえ、チームの一変を望むのは酷かもしれない。

 とはいえ、湘南との初戦に敗れたことで、2得点以上で勝つという明確な指標が生まれたことをポジティヴに捉え、まずはピッチ上で90分間懸命に球を追い、走ることを徹底することだ。そして基本に立ち返り、シンプルにプレーを続けること。味方との距離、連係を常に頭に入れてプレーすること。選手起用やフォーメーション、戦術など改善点は山ほどあろうが、結果が出れば、嫌な流れは少しずつ減退していくはず。時間はないが、ひとまず天皇杯の敗戦は引きずらずに、リフレッシュと疲労回復に努めながら、ピッチでやり切るための準備をしてもらいたい。

◇◇◇

【天皇杯 2回戦】
2021年6月9日(水)18:00試合開始 味の素フィールド西が丘
入場者数 1,682人
天候 晴 / 気温 26.5℃ / 湿度 40%
主審 岡部拓人 / 副審 戸田東吾、大矢 充
第4の審判員 関根 司

 FC東京 1(1-0 / 0-1 / 0-1 / 0-0)2 順天堂大学

得点:
(東)永井謙佑(9分)
(順)白井海斗(88分)、小林里駆(105+2分、PK)


【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 01 児玉 剛
DF 05 ブルーノ・ウヴィニ → 大森理生(120+4分)
DF 22 中村拓海
DF 25 蓮川壮大
DF 29 岡崎 慎  → バングーナガンデ佳史扶(91分)
MF 02 アルトゥール・シルバ
MF 10 東 慶悟  → アダイウトン(79分)
MF 18 品田愛斗
MF 20 レアンドロ → 高萩洋次郎(87分)
MF 45 安田虎士朗 → 三田啓貴(70分)
FW 11 永井謙佑  → ディエゴ・オリヴェイラ(70分)

≪サブスティテューション≫
GK 13 波多野豪
DF 34 大森理生
DF 49 バングーナガンデ佳史扶
MF 07 三田啓貴
MF 08 高萩洋次郎
FW 15 アダイウトン
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ

≪監督≫
長谷川健太



◇◇◇


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