ミスで自滅の3失点で決勝進出に黄信号。救いはアウェイゴールで、2ndレグへ望み。
17分 柿谷曜一朗のゴールで名古屋が先制
69分 木本恭生のゴールで名古屋が追加点
90+3分 FC東京がアダイウトンによるアウェイゴールを挙げる
90+4分 マテウスのゴールで名古屋が3点を奪う
長友佑都が日本代表、ジョアン・オマリがレバノン代表に選出され、小川、中村帆高、バングーナガンデ(鈴木準弥も?)らSB陣に怪我人が続出し、ディフェンスラインが苦しい台所事情となっているFC東京は、左SBに蓮川、右SBに中村拓海、森重とのCBコンビにはブルーノ・ウヴィニを起用したFC東京。フォーメーションは4-2-3-1というよりも4-3-3に近く、左SHに入った渡邊凌磨が攻撃時にはサイドの高い位置に陣取り、名古屋がボールを持つと最終ラインに寄せて変則的な5バックにも見える形で構え、蓮川とともにマテウスの突破を封じる構え。アダイウトン、東はベンチスタート。
一方、ホームの名古屋は直近のリーグ戦から先発を4人変更。怪我が心配されたキム・ミンテ、前田直樹、相馬、マテウスがスターティングメンバーに名を連ね、リーグでのFC東京戦で先発したシュヴィルツォクのほか、ガブリエル・シャビエル、森下、長澤がベンチスタートとなった。
どちらも様子を窺いながらの序盤となったが、次第にFC東京が攻め込む時間を作るも、名古屋も冷静に対応。FC東京は最終ラインでボールを繋ぎ、SHがサイドライン沿いで高い位置をとりながら、青木を経て前線へボールを預けるという形を目論むも、やや精度やスピードに欠け、効果的なパスがなかなか通らない。すると、名古屋もマテウスの突破や左の相馬からチャンスを窺うが、FC東京も森重を中心に粘りを見せ、明確な主導権がないまま、中盤でボールを奪い合うという展開へ。
だが、17分に中谷からのロングボールを処理しようとした蓮川が追いかけてきたマテウスと競り合った際にクリアミスすると、そのボールを奪ったマテウスからのパスを受けた稲垣が中央へクロスを送り、これを柿谷が流し込んで、ホームの名古屋が先制点を挙げる。セーフティにクリアをしていれば防げただけに、蓮川にとっては痛恨のミスとなってしまった。
失点はしたものの、アウェイゴールを得られれば有利となるFC東京は、永井やディエゴ・オリヴェイラにボールを供給して名古屋陣内へ攻めるも、名古屋のディフェンスをなかなか掻い潜ることが出来ず、シュートもブロックされる場面が目立つ。41分に左サイドを突破してエリア内へ侵入した永井のシュートもGKランゲラックが跳ね返し、続くCKからの森重のヘッドは僅かにクロスバーの上を行き、得点の匂いは感じさせるも決め切れずに前半を終える。
後半もFC東京の前からプレスを仕掛けて攻撃的に行くものの、ダイレクトやワンタッチで局面を打開するパスが生まれず、かえって中盤でボールを奪い返した名古屋がカウンターを狙うという構図も。それでもFC東京に攻め込まれる時間帯が増えるのを危惧した名古屋は、55分に森下と長澤を投入し、5バックへ移行して守備を固める形に。
FC東京は三田を東に、高さは見せたものの、前線へのパスの精度がイマイチだったブルーノ・ウヴィニを渡辺剛へスイッチし、さらに66分にディエゴ・オリヴェイラを田川に代えて攻撃の圧力を高めようとする。だが、69分にFC東京陣内の右サイドの浅い位置でフリーキックを得た名古屋が、ガブリエル・シャビエルの浮き球クロスをキム・ミンテが折り返し、ゴール前で混戦となったところで、こぼれ球に反応した木本がゴールへ流し込んで追加点。オフサイドにも見えた微妙なところだったが、判定は変わらず。ブルーノ・ウヴィニに代わって入った渡辺剛の対応も後手を踏んだ。
2点のビハインドとなったFC東京は、72分に左サイドの渡邊凌磨からの質のいいクロスにエリア中央で田川がダイレクトボレーを放つも、GKランゲラックがこれを弾いて立ちはだかる。2ndレグへ向けて是が非でもアウェイゴールを獲りたいFC東京は、76分には安部柊斗をアダイウトン、永井を高萩へと交代させるも、次第に時間を費やしながらゲームを進める名古屋に苦戦を強いられていく。
左サイドからのアダイウトンの突破もFC東京はサポートが遅く、単騎になりがちゆえ、名古屋も複数の選手を結集させて対応。警戒と対策をされるなか、FC東京はスペースを見つけられず、圧力をかけられ、ボールを下げさせられるという悪循環に陥り、なかなか前線でシュートという場面を作り出せずにいたが、アディショナルタイムに自陣でボールを奪うと、東から展開したボールを受けたアダイウトンがカウンターで森下を振り切ってエリア内へ突入。ようやくGKランゲラックの牙城を崩すゴールを決めて、1点を返すことに成功。貴重なアウェイゴールを奪い、あわよくばもう1点というところで、直後に金崎のヒールパスを受け、ゴールライン際まで駆け上がった吉田からのマイナスの浮き球クロスを、マテウスが左脚で決めて、名古屋が3点目。決勝戦進出へ向け、名古屋が幸先よい結果を収めた。
FC東京は、名古屋の堅守に慎重になったというところもあろうが、やはりディエゴ・オリヴェイラや永井、途中出場のアダイウトンへのサポートが薄く、孤立に近い状態での攻撃では、なかなかシュートまでやり切るチャンスを作ることは難しい。それでも名古屋を上回るシュートを放ったが、ゴールの可能性が高かったシュートがそれほど多かった訳ではない印象だ。何回かディフェンスの裏のスペースへ走り込み、カウンターを発動させた永井も、シンプルにスルーパスを出したいところでややボールを保持し、自らシュートの視野を狭くしてしまった場面もあった。
また、パススピードや球離れが遅く、フリーランニングが少なかったりと、ビルドアップ時に圧力を受けて結局最終ラインへ戻される形も多かった。味方との距離も離れがちで、ボールを幅広く素早く動かせずに、狭いスペースで引っ掛けられて、剥がされピンチを迎えることもあった。
そして何よりも、守備での連係が覚束なかった。前述したように怪我人や代表選出によりやり繰りが難しいところではあるが、すべてにスーパーなプレーを要求している訳ではなく、まずは失点を防ぐための基本対策を励行すべきなのだが、1点目の失点に絡んだ蓮川にしろ、2失点目の渡辺剛にしろ、地に足をつけた対応が出来なかったことが悔やまれる。森重を除いてDF陣の浮き足立ちが目立ち、ここで長友やジョアン・オマリの穴の大きさを知ることにもなってしまったのは残念だ。
4日後には2ndレグが待ち構える。FC東京はアウェイゴールの1点があるため、2対0か3得点以上の差をつけて勝つことが出来れば、ルヴァンカップ決勝への道が開ける。逆境ではあるが、過去の対戦を振り返ってみると、ルヴァンカップでのホーム名古屋戦は2勝2分と無敗、味スタでの対名古屋戦は2016年以降無敗で複数得点も多いなど、決して悲観することはないデータもある。もちろん、それはあくまでもデータ上での話。チームの現況を考えれば、チームに大きな活力と喝を与えた長友やジョアン・オマリ、リーグの名古屋戦のラフプレーで出場停止となっているレアンドロなど、勝利への貢献度が高い面々が不在の中では、そう易々とデータ通りにはいかないだろう。
しかしながら、難しく考えすぎるのも不要。前・後半に1点ずつを奪い、無失点で抑えての2対0で十分次へ駒を進めることが可能だ。短いインターバルで劇的な変化は難しいだろうが、序盤からフルスロットルでゴールを奪いに行く姿勢を見せ、相手を怯ませて自らのペースへ引き込むくらいが丁度いい。
使える選手が限られているなかで、嫌な流れを劇的に変化させるような選手を探すのは難しいが、あえて名を挙げるとすれば、GKの児玉剛か。波多野はビッグプレーでの貢献も大きいのは確かだが、前線へのフィードやDF陣との連係にはいまひとつで、脆さも露呈している。当然、久しく先発から外れていた児玉を決勝進出が掛かる舞台で起用するのは、実践感覚を含めて勇気がいるところだが、どちらにせよも劣勢からチームを勢いづかせなければならないゆえ、出場に飢えているヴェテランの力を注入するのも悪くないはずだ。
俄然優位に立ったといえる名古屋も、この試合でキム・ミンテ、稲垣、マテウスがイエローカードをもらった。イエローカード2枚で次の試合で出場停止となるだけに、それが頭を過ぎって……ということもなくはない。90分間力の限り走り切り、タイムアップの笛が鳴った時点での“劇的な逆転”による朗報を期待したい。
◇◇◇
【JリーグYBCルヴァンカップ 準決勝 第1戦】
2021年10月6日(水)19:03試合開始 豊田スタジアム
入場者数 7,778人
天候 晴 / 気温 25.7℃ / 湿度 58%
主審 木村博之 / 副審 大塚晴弘、堀越雅弘
第4の審判員 清水勇人
VAR 荒木友輔 / AVAR 聳城 巧
名古屋 3(1-0 / 2-1)1 FC東京
得点:
(名)柿谷曜一朗(17分)、木本恭生(68分)、マテウス(90+4分)
(東)アダイウトン(90+3分)
【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 13 波多野豪
DF 22 中村拓海
DF 05 ブルーノ・ウヴィニ → 渡辺 剛(55分)
DF 03 森重真人
DF 25 蓮川壮大
MF 07 三田啓貴 → 東 慶悟(55分)
MF 21 青木拓矢
MF 31 安部柊斗 → アダイウトン(76分)
FW 23 渡邊凌磨
FW 11 永井謙佑 → 高萩洋次郎(76分)
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ → 田川亨介(66分)
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 04 渡辺 剛
MF 10 東 慶悟
MF 18 品田愛斗
MF 08 高萩洋次郎
FW 15 アダイウトン
FW 27 田川亨介
≪監督≫
長谷川健太
◇◇◇
【2021 Jリーグ YBCルヴァンカップ Bグループ順位表】
1位 FC東京 12/6/3/3/0/6/2/+4
2位 神 戸 08/6/2/2/2/6/4/+2
3位 大 分 06/6/1/3/2/4/6/-2
4位 徳 島 05/6/1/2/3/3/7/-4
※(順位/チーム/勝点/試合/勝/分/敗/得点/失点/得失点差)
◇◇◇
【2021 JリーグYBCルヴァンカップ FC東京 試合日程】
〈グループステージ・グループG〉
第01節 03月03日(水)19:00〇FC東京 1-0 徳 島(H・味スタ)
第02節 03月28日(日)14:00〇FC東京 2-0 神 戸(H・味スタ)
第03節 04月21日(水)19:00〇FC東京 1-0 大 分(A・昭和電ド)
第04節 04月28日(水)19:00△FC東京 1-1 徳 島(A・鳴門大塚)
第05節 05月05日(水)15:00△FC東京 0-0 神 戸(A・ノエスタ)
第06節 05月19日(水)19:00△FC東京 1-1 大 分(H・味スタ)
〈プレーオフステージ〉
第1戦 06月05日(土)14:00✕FC東京 0-1 湘 南(H・駒 沢)
第2戦 06月13日(日)17:00〇FC東京 4-1 湘 南(A・レモンS)
※トータルスコア: FC東京 4-2 湘 南
〈プライムステージ〉
《準々決勝》
第1戦 09月01日(水)19:00✕FC東京 1-2 札 幌(A・札幌厚別)
第2戦 09月05日(日)18:00〇FC東京 2-0 札 幌(H・レモンS)
※トータルスコア: FC東京 3-2 札 幌
《準決勝》
第1戦 10月06日(水)19:30✕FC東京 1-3 名古屋(A・豊田ス)
第2戦 10月10日(日)14:00 FC東京 vs 名古屋(H・味スタ)
《決 勝》
決勝戦 10月30日(土)13:05 未 定 vs 未 定(埼 玉)
◇◇◇