延長で千葉に敗れ、今季も下位カテゴリにジャイキリ喰らう。
2017年にPK戦で長野に敗れて以来、2018年は山形、2019年は甲府、2021年は順天堂大学、2022年は長崎、2023年は熊本(2020年はコロナ禍の影響で出場資格なし)と下位カテゴリのチームに敗戦を続けているFC東京だが、2024年もJ2千葉に延長で逆転負けを喰らい、ACLへ繋がるタイトルを逃してしまった。
試合前、FC東京ゴール裏と千葉のゴール裏のサポーターが、同じネタ元を持つチャントを互いにそれぞれ歌い合うという、天皇杯ならではの牧歌的な光景が発生。FC東京ゴール裏が「俺たちJ1」と煽り、千葉のサポーターがブーイングでレスポンスし、スタジアムに拍手がこだまするシーンもあったが、試合ではFC東京が「俺たちJ1」と胸を張って言えるのは、正直なところ松木がゴールを決めた場面くらいだった。
互いにあまりシュートを打てない展開が続く中、千葉はファールも辞さずにタフにプレスを掛け続け、FC東京の出足を挫く。FC東京もそれをかわして中央から前進して好機を迎えそうな場面も散見されたが、その後が続かない。トラップ、パス、連係などで相変わらずのズレが生じて、そのミスが千葉に攻撃を防がれてしまう。
千葉は開始早々5分に佐久間が負傷するというアクシデント。代わりにピッチへ入ったのは、浦和学院在学中の2017年にFC東京の特別指定選手となり、同年にFC東京U-23でJリーグデビューを果たした田中和樹。直後に右サイドからのクロスでドゥドゥのヘディングシュートシーンを演出し、存在感を発揮していた。
技術的にはFC東京が上回っていたが、チームとして終始主導権を握っていたのは千葉。がむしゃらにやることが全てではないが、シンプルにプレッシャーを掛けてボール奪取、すぐさま攻撃へ転じてゴールを目指すという姿勢を崩さなかった。それでも前半の終わり頃よりFC東京が少しずつ好機を生み出していくと、後半の49分、ジャジャ・シルバが千葉CBの間の狭いスペースにいた松木へ鋭い縦パスを送ると、松木が巧みにターンしながらゴールへ向いて千葉CBの間を割って、倒れながら左脚でゴールへ流し込んだ。千葉の寄せが一瞬遅れたところを突いた先制点は、J1ならではのスピードと技術を見せたシーンと言っていいだろう。
だが、FC東京が輝きを見せた場面もそこまで。千葉が風間宏矢とドゥドゥを高木俊幸と小森にそれぞれ代えると、再び流れを引き寄せ、小林祐介、日高がシュートで迫ると、79分に松田陸が奪ったボールを高木、小森と繋ぎ、ペナルティエリア内で素早く林が右脚を振り抜くと、GK波多野が伸ばした手の先をすり抜け、同点に追いつく。
時折降る雨やとめどなく吹き付けていた強い風の影響もあって、両者浮き球の処理に手ごずる場面も散見するなどなかなか落ち着きが見られず、次のゴールが遠いまま延長を迎えたが、その直後に試合は動く。延長前半開始直後、後半途中から交代出場していた佐々木翔悟のクロスをGK波多野が弾いたこぼれ球を、同じく後半出場の呉屋が押し込んで、千葉が逆転。
まずは同点にしたいFC東京だったが、セカンドボールは奪えず、攻撃もチグハグなままで、千葉の優勢は変わらず。延長から長友を徳元に、荒木を仲川に代えて攻撃の活性化を狙ったが、最終ラインからのビルドアップにてこずり、なかなかボールを前進させられず。ピッチ、スタンドともに焦りが見えるなかで、111分にラストピースとしてMF原川を下げてDF木本を投入。CBの岡を前線に上げてのパワープレイを試みようとしたが、GK波多野は上背のない仲川へロングボールを蹴ってしまうなど、ピッチ上での迷走ぶりを露呈したまま、タイムアップ。千葉がラウンド16への切符を手にし、フクアリがチームカラーよろしく黄色い歓声に包まれた。
FC東京はこれで公式戦3連敗。ルヴァンカップ、天皇杯が終了し、残るはリーグ戦のみとなった。ベンチ、ピッチ上の選手ともども、部分的には上手さを見せながら、チームとして連動せず、結果が出ない状況に、もどかしさ以上に困惑と迷走に覆われているように思う。選手個々のタレント性もあり、選手層もそれなりに厚いなか、チームとしての基軸となるスタイルが霧に包まれたように見えてこない。極端なところ、これが残留争い真っ只中であれば、即座に対応が迫られるだろうが、不思議なことにリーグでは5位まで勝ち点3差と1試合で追いつく中位にいるから、大胆な手を施すタイミングも難しい。
このような混迷となった場合の最適な改善策などはない。ただ、言えるのは、勝利という結果を出せば、雰囲気や流れを変えるきっかけになるということ。そして、その勝利を手繰り寄せるためには、基礎に立ち返ることだ。戦術などを落とし込むなどは一朝一夕では困難ゆえ、まずは、パス、トラップ、判断をシンプルに繰り返していくことだ。基本に戻ることで、悩みで覆われていた状況も少しずつ良い兆しが見えてくるようになるはずだ。時間がないなか、中2日でリーグ・新潟戦を迎えるが、舞台は新国立となってから無敗を継続している国立。FC東京にとって相性の良いホームだが、ここで勝ちを取りこぼすようなことがあると、チームが一気に低下する危険性も孕んでくる。プレーはシンプルに、気持ちはがむしゃらに、90分間走りまくり、不調都市う濃霧を晴らす奮闘を期待したい。
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天皇杯 3回戦
2024年7月10日(水)19:03KO
フクダ電子アリーナ
入場者数:7,442人
天候:曇 / 気温:28.8℃ / 湿度:84%
主審:上田益也
副審:五十嵐泰之、塚田健太
第4の審判員:川俣 秀
FC東京 1(0-0 / 1-1 / 0-1 / 0-0)2 千 葉
【得点】
(東):松木玖生(49分)
(千):林 誠道(79分)、呉屋大翔(91分)
〈試合経過〉
08分 交代 千葉 佐久間太一 → 田中和樹
18分 警告 千葉 小林祐介
31分 警告 東京 中村帆高
41分 警告 東京 東 慶悟
49分 得点 東京 松木玖生
57分 警告 千葉 松田 陸
63分 交代 千葉 風間宏矢 → 高木俊幸 / ドゥドゥ → 小森飛絢
68分 交代 東京 東 慶悟 → 小泉 慶 / 遠藤渓太 → 野澤零温 / ジャジャ・シルバ → 俵積田晃太
79分 得点 千葉 林 誠道
82分 交代 千葉 林 誠道 → 呉屋大翔 / 日高 大 → 佐々木翔悟
91分 得点 千葉 呉屋大翔
91分 交代 千葉 横山暁之 → 田口泰士
96分 交代 東京 長友佑都 → 徳元悠平 / 荒木遼太郎 → 仲川輝人
96分 警告 千葉 高橋壱晟
111分 交代 東京 原川 力 → 木本恭生
112分 警告 東京 松木玖生
【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 02 中村帆高
DF 03 森重真人
DF 05 長友佑都
DF 30 岡 哲平
MF 07 松木玖生
MF 10 東 慶悟
MF 40 原川 力
FW 22 遠藤渓太
FW 70 ジャジャ・シルバ
FW 71 荒木遼太郎
〈控えメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 04 木本恭生
DF 43 徳元悠平
MF 37 小泉 慶
FW 28 野澤零温
FW 33 俵積田晃太
FW 39 仲川輝人
〈監督〉
ピーター・クラモフスキー
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【天皇杯 FC東京試合日程】
2回戦 2024年06月12日(水)19:00〇FC東京 3-0 V三重(味スタ)
3回戦 2024年07月10日(水)19:00✕FC東京 1-2 千 葉(フクアリ)
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