中野 独人 「電車男」 新潮社
ずいぶん楽しませてもらいました。今年10月に出版されてから2ヶ月で50万部を売り上げた本。純愛モノとなってるが、そういうジャンルで良いのだろうか?
2チャンネルという匿名掲示板があるのは周知のとおり。怪しげなモノから土木建築工学など専門的な分野まで各種取り揃えてある。電車男はある男性の恋愛を現在進行形で2チャンネルに書き込んだものを本にまとめたもの。
著作権はもちろん書き込みをした匿名氏たちにあるのだが、誰が誰なのやら分からないから二次著作権を持つ運営者に預けられている。
ドラマ、映画、漫画化も決まった。運営側はコミックの原作料と単行本化時の印税、テレビや映画の原作料を新潟の中越地震被害者に全額寄付することを表明した。とりあえず1000万円だそうだ。
ストーリーを簡単に言うと
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ある日、電車の中で酔っ払いの爺さんが女性客たちに絡みはじめた。見かねた青年がそれを止めにはいる。すったもんだの末に警官がはいり決着。女性客数人とともにその青年も身分証明を行った後に警察から解放される。その時に女性客のおばさんが「お兄さん、今度何かお礼をするから住所を教えて」と言う。住所を教える青年。おばさんだけでなく全ての女性客に教える。
その女性客の一人に若い女性がいた。中谷美紀似とある。
青年はその女性に好意をもった。実をいうと青年は「彼女のいない歴=自分の年齢」というなかなか晩熟(おくて)で、なおかつ「セーラームーンが好き」というヲタクなのだ。
青年は2チャンネルの掲示板に自分が経験した出来事を書く。自分の人生でめったにというかほとんどというか自分にめぐって来なかった「チャンス」だと。しかしすぐに自分からはアクションをおこせないことに気づいた。相手の連絡先を知らないのだ。
青年は逐一自分の彼女への想いを掲示板に上げていく。それをはやしたてる周りの匿名氏たち。
しばらくして中谷美紀似の女性から青年にお礼品物が届く。エルメスのカップだった。ここで中谷美紀似の女性に掲示板で名前がつく。「エルメス」だ。
青年にも名前がついている。「電車男」だ。
周りの匿名氏たちは「毒男」。
「彼女のいない歴=自分の年齢」の電車男は自分の想いをどうして良いのか分からない。「毒男」たちは掲示板で恋の手ほどきを始める。「エルメス」と電話で会話する時も「電車男」の後ろには「毒男」たちが掲示板を通してサポートしているのだ。
「電車男」は会った事もない「毒男」たちの助言と励ましに押されて行動をおこす。「毒男」たちの助言は着実に実を結び始めて・・・・・。2ヵ月後、この恋は成就してしまうのだ。
最初「毒男」たちは「電車男」を自分たちよりずっと晩熟(おくて)のしょうがないヤツだと思っていて、面白半分にちゃちゃを入れていたのだが、その恋の進行を見て考えを変えていく。そして最後には「電車男」が自分たちよりずっとずっと先に進んでしまったことに気づく。
話は「電車男」が「エルメス」の家によばれ、彼女の親に挨拶するところまで行く。そして「電車男」はことの顛末を、つまり自分が2ちゃんねるで自分たちの恋の進行状況をことの発端から今まで全て公開していたことを白状する。全ての生ロムを(掲示板に書いたこと書かれたことを)記録したCD-Rを彼女に読ませる。
果たして「エルメス」は許してくれるのか?
最後は「エルメス」がじかに掲示板を見ることになるのだが、その時の「毒男」たちが見せる掲示板での照れくさそうな様子(もちろん文字で書いてある文章なのだが)は、まるで親友の彼女を始めて紹介される時の悪友たちに似る。
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掲示板に投稿された文章の不要な部分をカットし整理したものが、日付付きで掲示板の雰囲気そのままに構成されているのだが、匿名氏たちの短い文章が冴えている。
「エルメス」対「電車男+毒男たち」の構図なんだけど、男たちの努力と思いとは関係なく、この恋愛はほんとはエルメスの思いのままに事が運んでいたんじゃないのか、とも見えるのだ(笑)。
コメント一覧
k-74
gin
スギス
とおりすがり←なるほど
k-74
なるほど
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