パリ・オペラ座 - 響き合う芸術の殿堂
2022年11月5日〜2023年2月5日
アーティゾン美術館
5階展示室。
第3幕「19世紀(2)」の第1場「グランド・オペラの刷新」にて、マネの2点の大型肖像画《ハムレット役のフォールの肖像》を、第3幕の第2場「ドガとオペラ座」にて、ドガの踊り子作品を楽しんだあと、次の部屋に移る。
次の部屋は、第3幕の第3場「劇場を描く画家たち」。
この場の目玉は、
マネ
《オペラ座の仮面舞踏会》
1873年、59.1×72.5cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
が、アーティゾン美術館の同名作品
マネ
《オペラ座の仮面舞踏会》
1873年、46.5×38.5cm
アーティゾン美術館
と、共演する。
1821年、パリのル・ペルティエ通りに、仮設劇場として竣工したル・ペルティエ劇場。
恒久的劇場の建設は進展せず、仮設劇場が「グランド・オペラの刷新」の舞台となるが、1858年に劇場の正面でナポレオン3世が爆弾を投げられる事件が起こった事を機に、新オペラ座建設計画が具体化する。1862年の着工後も、普仏戦争とナポレオン3世の亡命、パリ・コミューンと第三共和制の発足などの大事件があり、工事がなかなか進まずにいたところ、1873年10月にル・ペルティエ劇場が火災で焼失。結果、工事が促進されたのだろう、1875年1月に、第三共和制のもと、新オペラ座「ガルニエ宮」の落成式が行われる。
ワシントンNG所蔵の《オペラ座の仮面舞踏会》は、焼失する前のル・ペルティエ劇場が舞台。毎年四旬節に開催される仮面舞踏会における、黒ずくめの紳士たちと、高級娼婦と思われる女性たち。
紳士たちのなかには、マネの友人たちが描かれるほか、右から二番目の鑑賞者の方にまなざしを向ける人物は、マネ本人らしい。マネ自身、この仮面舞踏会に一度は参加しており、その際に本作の準備スケッチを制作したという。画面上部に見られる女性の足のみの描写は、本作の主題、同時代人の欲望に満ちた姿を強調する。
1874年のサロンに応募し、落選する。
本作は、2011年の国立新美術館「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」以来の来日となるようだ。
アーティゾン美術館所蔵の《オペラ座の仮面舞踏会》も、ル・ペルティエ劇場が舞台。オペラ座の正面玄関からロビーを見る方向にて、黒ずくめの紳士たちと、色鮮やかな服装の女性たちが素早いタッチで描かれる。
第3幕の第3場は「劇場を描く画家たち」ということで、マネ以外の画家による、オペラ座に集う人々たちを描く作品も並ぶ。
桟敷席の人々を描いた作品、舞台裏の人々(踊り子と黒ずくめの紳士)を描いた作品、仮面舞踏会を描いた作品など。その直裁的な描写を見ていると、マネやドガが彼らといかに違うものを見ていたのかを思う。