東京でカラヴァッジョ 日記

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「ハプスブルク展-600年にわたる帝国コレクションの歴史」(国立西洋美術館)

2019年10月30日 | 展覧会(西洋美術)
日本・オーストリア友好150周年記念
ハプスブルク展
600年にわたる帝国コレクションの歴史
2019年10月19日〜20年1月26日
国立西洋美術館
 
 
 
【本展の構成】
 
1.ハプスブルク家のコレクションの始まり
2.ルドルフ2世とプラハの宮廷
3.コレクションの黄金時代:17世紀における偉大な収集
   1)スペイン・ハプスブルク家とレオポルト1世
   2)フェルディナント・カールとティロルのコレクション
   3)レオポルト・ヴィルヘルム:芸術を愛したネーデルラント総督
4.18世紀におけるハプスブルク家と帝室ギャラリー
5.フランツ・ヨーゼフ1世の長き治世とオーストリア=ハンガリー二重帝国の終焉
 
 
   10年前の2009年、日本・オーストリア友好140周年記念として国立新美術館で開催された「THE  ハプスブルク」展。本展と同様にウィーン美術史美術館とブダペスト国立西洋美術館所蔵作品から構成されていたが、そのコンセプトは「西洋美術の名品・優品を見せる」。最初にハプスブルク家の肖像画を置き、以降イタリア、ドイツ、オランダ・フランドル、スペインの絵画を並べる。そのなかに名品が多数。加えて、明治天皇が皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に贈った品も特別出品。21世紀最初の10年でトップクラスの西洋美術の展覧会であった。
 
 
   一方、本展は、副題のとおりテーマは「歴史」。ハプスブルク家の歴史とそのコレクション蒐集の歴史を順に追っていく。その観点で選ばれたハプスブルク家の肖像画、宮廷の一場面を描いた画、そして蒐集したコレクションの品々が並ぶ。10年前が派手であったが故に、正直、地味に感じる。
 
 
   ところが、個々の展示作品を見ていくと、興味深いものが多数。
   特に印象に残る作品3選。
 
 
ベラスケス  
《宿屋のふたりの男と少女》
1618/19年頃
ブダペスト国立西洋美術館
    本展にはベラスケス名の作品が4点出品されている。その中でも目玉作品は、青いドレスを着る王女マルガリータ・テレサ8歳の肖像画であろう。別画家による再制作作品も従えている。
   私的には、画家の初期、故郷セビリア時代に描いた厨房画である本作に注目する。
   画家の厨房画の鑑賞経験は極めて乏しい私であるが、イメージしていたほどの張りを本作には感じなかった。やはり私の鑑賞力不足だろうか。次の企画展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」では画家の厨房画《マルタとマリアの家のキリスト》が出品予定であるが、どんな感じだろうか。
 
 
 
カルロ・ドルチ
《オーストリア大公女クラウディア・フェリツィタス(1653-1676)》
1672年
ウィーン美術史美術館
   カルロ・ドルチには、甘い雰囲気の聖母像の画家というイメージがあるが、貴人の肖像画も描いていたのだなあ。ちょっとミステリアスな雰囲気の女性クラウディア。母方の祖父はトスカーナ大公コジモ2世と、フィレンツェに縁がある。
   クラウディアは、最初の妻マルガリータ・テレサ(ベラスケスが描いた王女様)を亡くして間もないレオポルト1世の次の妻となる。
   肖像画制作の翌年1673年に結婚、3年半の結婚生活後、結核により22歳で亡くなる。二人の子供も夭折。
   しかしながら、その間、夫の心を掴み、敵対していた宰相を失寵させ、夫を継母からの影響力から遠ざけるとともに、宮廷財政の健全化に努め、内閣や行政組織の腐敗を夫に対して次々と注進するなど、かなりやり手の皇后であったようだ(Wikipediaによる)。
 
 
 
マンフレディ
《キリスト捕縛》
1613-15年頃
国立西洋美術館
(常設展展示時に撮影)
   国立西洋美術館は、2015年に本作品を購入。初公開は、2016年開催の「カラヴァッジョ展」に、カラヴァッジェスキの画家の作品として、であった。
   それから3年後、再び国立西洋美術館の企画展に登場する。今度は、第3章の3の主人公であるネーデルラント総督レオポルト・ヴィルヘルムが所蔵していた作品として、である。
   本作品を、レオポルト・ヴィルヘルムは英ピューリタン革命で処刑されたハミルトン公のコレクションから購入、その後、皇帝レオポルト1世のコレクションに入っている。
   なんと使い勝手の良い作品を国立西洋美術館は入手したことだろうか。
 
 
 
   あと、ル・ブランによるマリー・アントワネットの肖像画。この王妃とこの画家との組合せは鉄板。

   また、《神聖ローマ皇帝レオポルト1世と皇妃マルガリータ・テレサの宮中晩餐会》や《ホーフブルクで1766年4月2日に開催されたオーストリア大公女マリア・クリスティーナとザクセンのアルベルトの婚約記念晩餐会》。この参列者のひしめき合いは史実なのか?
 
   さらに、最初のほうに展示されている工芸品。動物の大きな「角」できた《角杯(グリフィンの鉤爪)》*、大きな「鼈甲」からできた《ハート形の容器》、大きな「ホラ貝」からできた《ほら貝の水差し》、大きな「ヤシの実」からできた《大実椰子の水差し》、通常ありえない/手に入らないような大きさのものを、最大限に原型を利用して制作した工芸品シリーズ。
 
*北ドイツ?、15世紀初頭、ウィーン美術史美術館
 
 

   など、挙げだしたらまだまだたくさん、である。
   余裕があれば再訪して、今度は 「コレクションの歴史」の観点から鑑賞したいところ。


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