公開開始から約1ヶ月、ようやく観に行く。
クリムトの《アデーレ》。
ウィーンで制作され、ウィーンの美術館で半世紀も展示されてきたのだから、今後もウィーンの美術館で展示して欲しかったなあ、と素朴に思っていた。
が、アメリカの美術館に展示されるのが相応しかったのだろう、という思いにもなっている。当時のウィーンにおいてユダヤ人が置かれた環境は、本当に恐ろしい。
映画ではテンポよく返還が実現したように見えてしまうが、実際には長い月日を要している。
その間、老婦人に近づく人間が多数いただろう。
映画では、返還要求が却下されて諦めた老婦人に強引に継続させるもう一人の主人公である青年弁護士、好意の調査協力者以外の姿がないウィーンのジャーナリスト、最高裁に臨む時弁護引受けを申し出る実力者弁護士、帰還しないうちから《アデーレ》の高額購入を申し出るコレクターの4人くらいだが。
《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I》は、ニューヨークのノイエ・ギャラリーにある。20世紀初めのドイツ・オーストリア美術を専門とする美術館であるらしい。
映画ではほぼ取り上げられない《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像II》は、オークションで入手した個人コレクターからMOMAに長期寄託されているようだ。
今はニューヨークに生きる《アデーレ》。