東京でカラヴァッジョ 日記

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アルフレッド・シスレー展(練馬区立美術館)

2015年09月21日 | 展覧会(西洋美術)

アルフレッド・シスレー展
印象派、空と水辺の風景画家
2015年9月20日~11月15日
練馬区立美術館

驚きの3章構成。

第1章は、シスレー作品。

   2013-14年の「光の賛歌 印象派展」で怒涛のシスレー12連発を観てから、ようやくシスレーに関心を持ち出した私。

   本展で、国内コレクションからのシスレーの優品20点(油彩は18点)を堪能する。

   出品数が少ない感はあるが、その分非常にゆったりと展示されており、鑑賞しやすい。

   一部の作品には、描かれた風景の古写真葉書が参考に添えられているのが好ましい。

   日本にこれだけのシスレー作品があるなんて、素晴らしいこと。以下、油彩18点の所蔵元。
1)吉野石膏美術振興財団
2)三菱一号館美術館(寄託)
3)国立西洋美術館
4)東京富士美術館2点
5)姫路市立美術館
6)上原近代美術館
7)大原美術館
8)鹿児島市立美術館
9)サントリーコレクション2点
10)ブリヂストン美術館
11)ひろしま美術館
12)ポーラ美術館2点
13)松岡美術館
14)茨城県近代美術館
15)個人蔵


   第2章は、「シスレーが描いた水面・セーヌ川とその支流ー河川工学的アプローチ」と題して、パネルにより、19世紀半ばに行われたセーヌ川の水面革命、可動堰・閘門の建設による水面の水平化(鏡のように水平)が紹介される。印象派が描いた河辺の風景は、この水面革命が生み出したものなのだ。


   シスレーとの絡みでいえば、1876年のセーヌ川の洪水。ルーアン美術館所蔵《ポール・マルリーの洪水》(1876年)の左手に描かれた、建物の壁に沿って渡された歩道代わりの板を支えているワイン樽に着目。酒類の流通に用いられる容器は施政者が規格を定めていることを踏まえ、絵のワイン樽がどこまで水に浸かっているかに基づき、ポール・マルリーの水深を推測する。実物のボルドーワイン用の樽2樽に板をかけて展示する凝り様。


   1876年のパリでの洪水は、10年に1度の中程度のもの(作品6《サン=クルー近くのセーヌ川、増水》のキャプションを読んで思ったが、第2章のパネルで、この洪水によるパリの被害を紹介している内容は、1879年の洪水での被害と混同しているのではないか?私の誤解、あるいは同じ被害が2度繰り返されたのかもしれないが)だったが、その30数年後の1910年、パリは100年に1度級の超大型洪水に見舞われる。


   同じ1910年、東京においても荒川が洪水を起こし、記録的な被害となった。と、別の展示室に移り、国土交通省関東地方整備局協力による荒川放水路の歴史と効果の紹介に繋げる。美術館に印象派を観に来たはずが、いつの間にか、防災資料館にいる。その荒技に感心する。


   驚きの構成、この秋お勧めの展覧会の1つである。


   なお、第3章「シスレーの地を訪ねた日本人画家」(4画家7点+参考5点の展示)はスルーした。



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