東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ロンドン・ナショナル・ギャラリーの思い出

2020年05月25日 | ロンドンナショナルギャラリー展
   大昔、ロンドン・ナショナル・ギャラリーを訪問したことがある。
   どのくらい大昔かというと、現在初期ルネサンス絵画の展示場になっているというセインズベリー・ウィングが開館する前の時代である。
   往復ロンドンでの乗換の旅程で、帰路はロンドンで一泊し、翌日夜間の出発まで半日強のロンドン観光を行ったもの。
   ナショナルギャラリー滞在は、よく覚えていないが、1時間強くらいだっただろうか。
 
 
    「見た」もの。
 
   レオナルド《岩窟の聖母》《聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ》、ミケランジェロ《キリストの埋葬》、ブロンツィーノ《愛の寓意》、ホルバイン《大使たち》、ベラスケス《鏡のヴィーナス》、フェルメール《ヴァージナルの前に立つ若い女性》《ヴァージナルの前に座る若い女性》は見た。見たといっても、その作品に反応することはなく、展示されていることを確認した程度の「見た」である。
 
 
   「見なかった」もの。
 
   初期ルネサンス絵画の展示室が何故か閉鎖されていた。展示室の入口にロープが張られていたこと、ロープの向こう側遠くに1点の宗教画が見えたこと(誰の作品は分からない)を覚えている。ピエロ・デッラ・フランチェスカを密かに楽しみにしていたが、叶わなかった。
 
   あと、カラヴァッジョ《エマオの晩餐》。当時、画家の名前は知っていたが、特に興味はなかったので、おそらく展示されていたのにスルーしたものと思われる。
 
 
  そんな雑な鑑賞でも、強く印象に残った作品が3点。
 
 
1)ヤン・ファン・エイク
《アルノルフィーニ夫妻の肖像》
 
    ヤン・ファン・エイクは凄い。その描写の緻密さ。 その色彩の美しさ。早く離れないと残り時間が、と思いつつ見続けた記憶がある。
    後年見たルーヴルの《宰相ロランの聖母》でも同様の経験をした。私が見たヤン・ファン・エイクはその2点。《ヘントの祭壇画》や肖像画群も、いつの日か見たいものである。
 
 
2)ボッティチェリ
《神秘の降誕》
 
    この作品は、高階秀爾氏の『ルネッサンスの光と闇』で知り、密かに楽しみにしていたが、とんでもなく凄い作品であった。その画面の鮮やかさ。画面上部の輪舞する天使たち、画面下部の抱き合う人間と天使3組。圧倒された。
    後年ウフィツィ美術館で、あるいは日本の展覧会で画家の作品を見る機会を得たが、私にとってナンバー1のボッティチェリは、この作品である。
 
 
3)レンブラント
《水浴の女》
 
    当時レンブラントのファンであった私、期待どおり展示室一面に多数のレンブラントが並んでいるのに喜ぶ。確か一番端っこに展示されていたこの作品から鑑賞をスタートし、その親密なエロティックさに参ってしまう。
    おかげで他のレンブラントの印象がゼロ。
 
 
   訪問時に購入したナショナルギャラリーのカタログ。250点ほどが紹介されているが、改めて眺めると、そのコレクションの豪華さに溜息。
    
 
    今回のナショナルギャラリー展の東京会場開催は諦めていたのだが、ここ最近、ふたたび希望を持ち始めている。「新しい生活様式」のもと、大規模展をどう運営していくのかも注目である。
 
   
   割引引換券は確保済みなのだが。


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ロンドンNGのことなど (むろさん)
2020-05-25 15:23:42
私もロンドンNGにはいろいろと思い出があります。ホルバインの大使たちの絵の前でしゃがんで斜め下から骸骨の形を眺めたこととか。今まで3回行きましたが、それはレオナルドの聖アンナ画稿の銃撃前・修理中で展示不可・修理後に相当しています。初めて行った時の最大の目的はボッティチェリの神秘の降誕でした。ボッティチェリで最も好きな作品(それは全ての西洋絵画で最も好きな作品でもある)はプリマヴェーラや初期の聖母子などですが、晩年作では神秘の降誕とハーバードの神秘の磔刑が双璧だと思っています。どちらが好きかは甲乙つけがたいですね。

東京のLNG展はもう諦めています。大阪展が開催できたとしても、先日ご紹介された博物館協会のガイドラインとか山口県立美術館の事例を見ると、とても見に行くのは無理だという気がします。私が最後にロンドンにいってから30年ぐらい経過し、その間に興味の対象もカラヴァッジョやクリヴェッリへと広がったので、このコロナ騒動になるよりも前から、次に海外旅行に行くとしたらロンドンと決めていました。(その次がイタリアのボローニャやトリノ、ベルガモなど行ったことのない町です。)2,3年後に普通に海外旅行ができるようになるのなら、無理して大阪には行かないでロンドン旅行に期待しようと思っています。そしてそれが実現したらLNGには3日間ぐらい入り浸りという贅沢をしたい、そして行ったことのないロイヤルアカデミー(ミケランジェロの大理石製聖母子トンド)やテートブリテンにも行きたいと夢は膨らみます。

ついでながら、最近発表されたボッティチェリの神秘の降誕に関する日本語論文をご紹介しておきます。
「サンドロ・ボッティチェッリ《神秘の降誕》-天使と人間の抱擁のモティーフについて」(平井彩可 美術史186号2019.3)というもので、ボッティチェリ作のダンテの神曲挿絵における同様の形などを引用しながら、サヴォナローラの影響を論じています。また、同じ美術史183号2017.10には平井氏が美術史学会全国大会で発表した同じテーマの内容の要旨が掲載されていますので、これも合わせてどうぞ。

返信する
ロンドンNG展 ()
2020-05-26 12:02:00
むろさん様
コメントありがとうございます。

「サンドロ・ボッティチェッリ《神秘の降誕》-天使と人間の抱擁のモティーフについて」(平井彩可、美術史186号)ですね。教えていただいた資料がたくさん、早く図書館が開館して欲しいところです。

ホルバインについては、私も骸骨の形に見えることの確認だけはしました。

LNG展の開催については、ちょっとした情報を都合良く解釈して、勝手に期待しているところですが、やっぱり大きすぎてそもそも無理なのでしょうか。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。