東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

NHK日曜美術館で観る「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクション」

2021年06月02日 | 展覧会(西洋美術)
   録画していたNHK日曜美術館を観る。
 
NHK日曜美術館
(5/23放送、5/30再放送)
「フランシス・ベーコンの秘密 バリー・ジュール・コレクション」  
 
   20世紀で最も重要な画家の一人とされるフランシス・ベーコン。その死の直前に、千点を超える作品群が、親しかった友人バリー・ジュール氏に秘密裏に託された。それは、生前の「ドローイングは描かない」「デビュー前の作品は破棄した」といった伝説を覆すもの。存在が知られるや世に衝撃を与え、真贋をめぐる議論も巻き起こしてきた。初来日した作品に、ベーコンを愛してやまない写真家・レスリー・キーが迫る。
 
 
   金髪で長身の青年だったバリー・ジュール氏本人が現在の姿で映像出演。
 
   1978年の出会いのきっかけや、1992年の最後の対面となる、元恋人を追ってスペインへ旅立つ画家をアトリエからヒースロー空港へ車で送迎した際の様子などを語る。
   本コレクションは、最後の対面時にジュール氏に託された。画家の指示により車から溢れるほどの物を積み込んで、その状態で市内を寄り道しながら空港まで行ったという。
 
   また、ジュール氏が保有する、ベーコンの許しを得て録音された160時間にも及ぶという肉声テープ。シュルレアリスム運動(ミシェル・レリス、アンドレ・ブルドン、ピカソ、ジャコメッティ)の思い出を語った部分が流される。
 
 
 
   1996年、本コレクションの一部が初公開、初期作品《自画像》などベーコンの未公開作品の発見は大きなニュースとなり、美術界はわきたつ。しかし、画家特有のおどろおどろしさとは無縁の作品に、真贋が問われる。ジュール氏は一枚の宣誓供述書を作る。そのなかには、画家がジュール氏のトランクに絵画か薄い本を入れるのを見たというアトリエの向かいに勤める女性の証言が含まれる。画家の遺産相続人はジュールに作品返却を求めるが、後に訴えを取り下げている。
 
 
   今回ベーコンの著作権管理団体「フランシス・ベーコン・エステート」の本コレクションに対する見解を求めたところ次のような回答が返ってきたという。
 
「いずれもベーコンの手によるものではない」
「バリー・ジュール・コレクションの作品群はベーコン以外の誰かが作ったものだと信じている」
「本物と認めていない作品と一緒に番組の中でベーコンの作品を使うことは認めない」(←番組では多数使っていたけど。)
 
 
  神奈川県立近代美術館館長は語る。
「作家本人がそれをオーソライズするためにも死んでしまってるのが決定的ですよね。そうするとどうしても真実はちょっと見えにくくなる。そのことに対していろんな反応が起きた。でもそれ、ある意味その反応自体を見ていくことも面白いことです。あれほど生きてる時から伝説のような人が死んだ。見せないものが見えてきた。それはじゃ何と、みんなが思う。見る人によってその見え方が違う。一流のアーティストであればあるほどその部分は非常に複雑に反応を呼び覚ます。その経緯も含めてこの展覧会は興味深い展覧会だというふうに思っています。」
 
 
   しかし、本展はコロナ禍に翻弄される。
   当初、2020年秋に渋谷区立松濤美術館にて開催予定も、翌年に延期される。
   次の巡回地・神奈川県立近代美術館では、予定どおり開幕するが、会期2021/1/9〜4/11のうち1/12〜3/22が臨時休館となり、開催できたのは最初の3日間と最後の18日間のみとなった。
   そして、渋谷区立松濤美術館に巡回し、予定どおり開幕するが、会期2021/4/20〜6/13のうち4/26以降は臨時休館となり、開催できたのは最初の6日間のみとなった。
   以降の巡回はない。
 
   残念なのは、他の首都圏の美術館が概ね開館するなかでの神奈川・埼玉・千葉の県立美術館・博物館の臨時休館実施によるものであること。
   そして、他の東京の美術館が概ね6/1から再開するなかでの渋谷区の区立美術館・博物館の臨時休館継続によるものであること。
   不幸な展覧会は全国に数多くあるだろうけれども、本展については巡回の順番が逆だったらほぼ予定どおり開催されていたかもしれないと思うと、なんとも。
 
 
   本番組の現地収録は、2/15に臨時休館中の神奈川県立近代美術館にて行われている。物凄い雨の様子が映されていた。その日の横浜の1日の降水量は91mmで、特に11〜14時頃が強かったようだ。再開を期待しての5/23の本放送だったのだろう。再開することなく閉幕することが発表されたのは、再放送の翌日だった。
 


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