逆境の絵師 久隅守景
親しきものへのまなざし
2015年10月10日~11月29日
サントリー美術館
前期と同様、ゆったりとした展示に、ゆったりとした気持ちで鑑賞する。
印象に残る作品を記載する。
1)
No.15《四季耕作図屏風 旧浅野家本》個人蔵
No.16《四季耕作図屏風 旧小坂家本》個人蔵
No.17《四季耕作図屏風》個人蔵
本展で初めて農村風俗画・四季耕作図の魅力を知る。
耕作図は、中国から伝わった画題。そのため通常は中国風俗で表現されたらしい。
旧浅野家本は、中国風俗の農村。夏の驟雨の描写が印象的。
旧小坂家本も、中国風俗の農村。橋のない大きな河を歩いて渡る者5人。牛に乗って渡る人。老人を支えながら渡る3人組。
もう1点の個人蔵は前期からの出品(ただし11/9まで)。これは日本の風景・風俗にて描かれる。桜で覆われた山の描写が印象的。
3点いづれも、農作業などに勤しむ人々を観ていて飽きない。
守景の作品は、1点が国宝(納涼図屏風)、3点が重文に指定されているが、重文指定の2点の《四季耕作図屏風》は本展に出品されていない。京都国立博物館と石川県立美術館の所蔵、いつか実見したいもの。
2)
No.22《鷹狩図屏風》日東紡績株式会社蔵
人が鷹を狩るのではなく、鷹を使って鳥を狩る。
左隻が秋の小鷹狩、右隻が冬の大鷹狩。確かに規模が違う。
画面を駆け回る鷹匠たち。白鳥を追う、あるいは仕留めた鷹。左隻の左隅には、鳥刺しや遊ぶ子供たちの姿。右隻の右隅下の方には休憩する人たち。解説「鏡を見ながらヒゲを抜く人も見られる」に助けられた。スマホにしか見えない状態に陥って、自力では正解にたどりつけなかった。
本作も魅力的な風俗画。
3)
重文《賀茂競馬・宇治茶摘図屏風》大倉集古館蔵
左隻が競馬。右隻が宇治の春の風景、右のほうに茶摘み風景があるが主役には見えない。
実に楽しめた展覧会。No.23《近江八景図》滋賀県立近代美術館蔵(11/11から展示)も気になるところ。