コートールド美術館展
魅惑の印象派
2019年9月10日〜12月15日
東京都美術館
居心地のいい印象派の展覧会。
21年ぶり来日のマネ《フォリー=ベルジェールのバー》。

マネ
《フォリー=ベルジェールのバー》
1882年
コートールド美術館
1883年に亡くなるマネがその前年に完成させた晩年の代表作。
美しい女性がカウンターに手をついて立っている。一息ついたところなのか、その表情は物憂げ。右手では、同僚の女性が紳士の接客をしている。のではなく、この女性が鏡に映っている姿。金色の鏡の枠が画面の下部に走っており、そこから上は、鏡の中の世界。その不自然な鏡像は、異時同図法のよう。
バラを差したガラス瓶、オレンジを載せたガラス鉢、様々な酒のボトル、これら部分を切り取っても魅力的な静物画となりそう。鏡に映るそれらの姿は位置、向き、本数が合っていない。黄色のバラは女性と紳士の間に映っている。
鏡に映る観衆たち、照明、華やいだ世界。
一体どんな空間なのだろう。えらく幅の狭いところに女性は立っているようだが、この幅を広げれば多少は自然な空間になるのだろうか。
「フォリー=ベルジェール」は、パリにある1869年開館(1872年改称)の多彩な演し物が上演される大衆劇場の名前。フォリー=ベルジェールの20世紀初頭の外観写真と当時の広告ポスター図版6点(✳︎)のパネルも参考展示されている。現在も営業中のようで、今年2019年は開館150年。その一角にあったバーが本作の舞台。実際にこのバーで働いている女性をモデルとしたという。
1 曲芸、バレエ、パントマイム、オペレッタ/O.メトラとそのオーケストラ
2 象&エドマンス卿
3 正真正銘のザゼル
(→「ザゼル」は女性曲芸師の名前。空中ブランコ、綱渡りや人間大砲を演じる姿が描かれる。人間大砲の最初の演じ手として知られるようだ)。
4 パガニーニの亡霊
5 カンガルー・ボクサー
6 蜘蛛タランチュラ
なお、本作品をルツェルンのタンホイザー画廊で購入した際の領収書も出品されている。
この作品にあてられたようで、他作品の印象が総じて薄くなっているのだが、マネの他の出品作2点も良い。
マネ
《アルジャントゥイユのセーヌ河岸》
1874年
個人蔵(コートールド旧蔵、美術館に長期貸与)
マネの「アルジャントゥイユ」と言えば、ベルギー・トゥルネー美術館所蔵の《アルジャントゥイユ》を思い出す。
強烈なセーヌ河の「青」。
遠景の煙突。
マネ
《草上の昼食》
1863年頃
コートールド美術館
オルセー美術館所蔵のスキャンダル作《草上の昼食》の準備習作、または完成作のレプリカとされる。前者の可能性が高いと考えられているそうである。サイズは、完成作と比べ縦横とも半分弱、完成作の大きさと迫力を想像する。
この3点で入場料の元は取っている。