東京でカラヴァッジョ 日記

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アンリ・ルソー《婚礼》&《ジュニエ爺さんの二輪馬車》、ー 「オランジュリー美術館コレクション」展2019(横浜美術館)

2019年12月03日 | 展覧会(西洋美術)
横浜美術館開館30周年記念
オランジュリー美術館コレクション
ルノワールとパリに恋した12人の画家たち
2019年9月21日〜20年1月13日
横浜美術館
 
 
   13人の画家の作品が出品される本展。
 
 
   第一のお目当て、アンリ・ルソー。5点の出品。
 
   大型作品2点は、期待を大きく上回る魅力で迫ってくる。
 
アンリ・ルソー
《婚礼》
1905年頃、163×114cm
   結婚式の集合写真風。宙に浮く花嫁、前景の黒い犬、何故かルソー本人も中に収まっている。背景の緑の木々。
 
 
アンリ・ルソー
《ジュニエ爺さんの二輪馬車》
1908年、97×129cm
   ジュニエ爺さんは、ルソーの家の近くに住む食品雑貨商。妻がルソーの料理人だったこともあって、ルソーは一家と親しくしていたらしい。
   馬車に乗っているジュニエ爺さん一家。爺さんとその妻と子供2人、この子供たちは亡くなった兄弟の子供を引き取って育てていたらしい、真正面向きの犬、そして何故かルソー本人が交じる。
   白い馬、馬車の下の黒い犬、馬の前を歩く小さな黒い犬。背景の緑。
 
 
 
   次にスーティン。
 
   会場の最後に、8点の作品が並ぶ。
   一度にこんなに多くのスーティン作品を味わうのはいつ以来のことであろうか。20年以上前に遭遇して以来ご無沙汰の「スーティン展」の開催を願う私にとって、実に嬉しい機会。
 
   人物像《小さな菓子職人》や《ホテルのボーイ》、《聖歌隊の少年》。死んだ動物を描く《牛肉と仔牛の頭》、《七面鳥》。花の静物画《グラジオラス》。風景2点も含めて、見応えたっぷりの作品群。
 
 
 
   モディリアーニの3点も。
 
   そのなかでは、ギヨームを描いた《新しき水先案内人ポール・ギヨームの肖像》。2人が出会った翌年の1915年の制作。当時、画廊経営を始めたばかりの「NOVO PILOTA」ギヨームはまだ23歳。ギヨームは、画家のためにアトリエを借りたり、作品を数多く購入したりしている。
   モディリアーニはギヨームを描いた作品を他に3点残している。ミラノ市立近代美術館、アメリカ・オハイオのトレド美術館、個人の所蔵となっているようである。
 
 
  
   1917〜25年限定のマティスや、1905〜15年限定のユトリロも楽しい。
   1917〜25年限定のピカソや1920年代前半限定のローランサンも興味深い。
   1919〜32年のドランは日本でこれほど多くの作品を一度に見る機会はもうないだろう。
   会場の冒頭に登場するモネ、シスレー、セザンヌ、そして途中のドンゲンは私的にはスルーして支障ない。
 
 
   やはり触れたいのはルノワール。
 
   8点展示される。
   《ピアノを弾く少女たち》、政府からの制作委託を受けて、1892年に制作した計6つのバージョンの油彩画のなかの1点、も良いが(政府買上げのオルセー美術館所蔵バージョンより良いかも)、一番印象に残る作品は。
 
ルノワール
《桟敷席の花束》
1878-80年頃、40×51cm
   劇場の桟敷席、ビロードの長椅子らしきところに置かれた花束だけがクローズアップされる。東京都美術館のコートールド美術館展に、桟敷席の華やかな婦人と紳士を描いた1874年制作の《桟敷席》が出品されているが、本作は同じように華やかな桟敷席を舞台としながらも人物は描かれず、観者は描かれていない人物を想像させられることとなる。
 
   本作は、ギヨーム死後に妻ドメニカが購入し、コレクションに加えたもの。本展出品作では《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》もドメニカが購入した作品である。彼女はルノワールの世界がお好みであったようだ。
   それはギヨーム自身も同じだったようで、原コレクションにおいても、印象派のなかでは唯一ルノワール(の後期作品)だけが厚くなっている印象である。
 


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