コートールド美術館展
魅惑の印象派
2019年9月10日〜12月15日
東京都美術館
居心地のいい印象派の展覧会。
マネ《フォリー=ベルジェールのバー》が凄すぎて、他作品の印象が薄れざるを得ないのだが、マネに辿り着くまでの作品について記載する。
ゴッホ
《花咲く桃の木々》
1889年
「前景の葦の垣根に囲まれた果樹園では、小さな桃の木々が花盛りだ-この地のすべては小さく、庭、畑、庭、木々、山々でさえまるで日本の風景画のようだ。だから、私はこのモティーフに心惹かれたのだ」
画面を横に流れる優しい色彩の帯。農夫が1人作業中である。
セザンヌが9点並ぶ様は素晴らしい。そのなかから厳選3点。
セザンヌ
《大きな松のあるサント=ヴィクトワール山》
1887年頃
松の木の枝が山の稜線をなぞったかのように伸びて、山の形を際立たせる。優しい色彩の山の起伏の豊かさ。右手に小さく見えるのは、ローマ帝国時代の水道橋、ではなくて19世紀の鉄道の陸橋とのこと。
セザンヌ
《カード遊びをする人々》
1892-96年頃
カードを見つめる2人、近寄りがたい雰囲気。テーブルの水平もそうだが、全体にやや左に傾いている。解説にあるどおり、画面のほぼ中央、2人の間に置かれた黒いボトルが効いている。
セザンヌは、この主題について、カード遊び3人バージョンを2点(メトロポリタン美術館、バーンズ財団)、2人バージョンを3点(オルセー美術館、個人蔵、本作)を制作している。本作は2人バージョンのなかでは2番目の制作とされる。
セザンヌ
《キューピッドの石膏像のある静物》
1894年頃

ひどく傾いてしまって変形してしまった床、その奥に置かれたリンゴが静止しているのは不思議。手前のテーブルの上のリンゴの載る皿、皿の下の青い布は、壁に立て掛けられた静物画の方向に伸びて、画に描かれた果物の下の布に化ける。赤カブの緑の葉も、画の一部に化ける。この空間の歪み、異様さが怖い。が、楽しい。今回のお気に入り作品の一つ。
ドガ
《舞台上の二人の踊り子》
1874年
画面の多くを占領する床。画面左端に、部分が少しだけ映る3人目の踊り子。
ロートレック
《ジャヌ・アヴリル、ムーラン・ルージュの入口にて》
1892年頃
ムーラン・ルージュにてダンサーとして人気を博したジャヌ・アヴリル、描かれた当時は24歳くらい。なのにこの生活に疲れた感。ロートレックは彼女を描いたリトグラフポスターも制作している。
1番目・2番目のフロアと見てきて、2番目のフロアの最後に、マネ《フォリー=ベルジェールのバー》と対面する。すっかりマネ《フォリー=ベルジェールのバー》にあてられる。
最後のフロアにも、スーラやゴーギャン、スーティン、モディリアーニなど作品の展示は豊かに続いているのだが、あまり印象に残らず終わる。
本展は、私にとって、マネ《フォリー=ベルジェールのバー》を観た展覧会として記憶に残るだろう。