散り椿
2019-12-01 | 読書
愛情、友情、人の情にまつわる儚さ尊さを権力争いの中で見事に描いている。江戸時代の武士たちゆえ刀を交えることとなってしまう運命に身を委ねざるを得ない切なさを散りゆく椿に重ね合わせ物語を進めていく。ついつい颯爽と剣を使う主人公「新兵衛」に目が行ってしまうが、真の主役が物語の中では既に亡くなってしまった病弱ではあるが気丈な凛とした女性であることに 寂寥を感じると同時に生きることの切なさも感じてしまうが、それにもまして作者の登場人物一人ひとりに対する愛情の注ぎ方(表現の仕方)、特に物語の中では悪者に位置付けられた人々に対してさえも作者の心遣いを感じてしまう物語であった。