スローなブギにしてくれで有名になった片岡義男の短編集「ジャックはここで飲んでいる」を読了しました。まさに「ウオンチュー君のオー」で始まる南佳孝の音楽が頭に浮かんでくる、文章にリズムの有る不思議な短編集でした。トレンチコートの襟で顔が隠れている男が一歩一歩煉瓦の道を歩いて、次の角を左に曲がって手すりのついた地下に続く階段を下り、ドアを押すとそこはバーテンダーが一人の場末のバーで、一番奥の席にジャックダニエルをちびちび飲んでいる一人の男がちらっとこちらを見る、また、ふらっと入ってくるハイヒールの女性がウインクする様が目に浮かんでくるそんな文章です。こんな音楽が後ろに流れているような書き方ができる作家に初めて出会いました。真似をしたいのですが、なぜバックグラウンドに音楽が流れている感じが出せるのかそのテクニックが不思議です。