
かなり評価が難しいというか殺し合いの表現が凄すぎて読みながら目を背ける本に出会ってしまいました。「赤刃(セキジン)」です。作者の長浦京は芥川賞の候補にもなったことがある有名な割と知られた作家だそうですが長浦さん自身が難病にかかってからが特に生きることと死ぬことについて自問自答する中で益々何のために生きているのかの疑問が深まりこの小説を書き始めたそうです。その疑問が作品の物言わぬ主人公のひたむきな、命を懸けることのできる使命感につながっているようです。のっけから凄惨な表現のオンパレード、死体やばらばらになった腕や脚がごろごろ転がり、どろどろの土まみれ血まみれ、読み始めは「気持ちが悪くなり、これは最後まで読み切れない本に出会ったかも?」と思いながら読み進めるうちに、人を殺すことによってこそ成り上がれた乱世の戦の中でこそ武士の誇りを感じた有り様に思いをつなぎ、太平の世の中になって戦うことができなくなった武士が、それでも武士であることのプライドだけで生き恥をさらしている武士の有り様に抗い「義賊ぶった、人を殺すことに生きる術を見出し辻斬りを始めた世捨て人達の一党」と「幕府の命を受け、最後まで、何で殺しあっているのか納得のいかないまま戦い続ける追討使」との肉と骨が飛び散り、血が噴き出す戦いに、ついつい最後まで読み終えてしまいました。人情、愛情一切お構いなしの不思議な作品です。皆さんも最初は「私、無理!」と思うと思いますが、ちょっと我慢して読んでいるときっと一気に読み終わりカリフォルニアの空を思い出してしまうこと必至です。一読を!