歌舞伎学会事務局

歌舞伎学会の活動を広報します.

2016年度歌舞伎学会秋季大会のお知らせ

2016-11-29 09:13:40 | お知らせ
2016年度の歌舞伎学会秋季大会を、二松學舍大学九段キャンパスにておこないます。
 
参加費:会員 (1,000円)
    非会員(1.500円)

【第1日目】12月10日(土)
 二松學舍大学九段キャンパス1号館地下2階 中洲記念講堂


 受付開始(12:30~) 大会開始(13:00~) 
◆開会 会長挨拶(13:00~) 

◆大会企画「国立劇場の50年」 (13:10~)
 今大会一日目には、開催校である二松學舍大学の近隣であり、今年50周年を迎えた国立劇場をめぐる講演とシンポジウムを開催いたします。石橋健一郎氏による講演「国立劇場の調査研究、及び資料の収集・公開事業について」は、国立劇場において実際に長年にわたり調査研究・資料収集の部門に携わってこられた“内側”の観点からお話しいただきます。
 シンポジウム「国立劇場公演の50年」は国立劇場の支柱たる公演に関して、開場から今日まで評論―“外側”の視点から言及されてきた諸氏を中心に、国立劇場の50年をふりかえり考察します。どうぞ御期待ください。

◆講演「国立劇場の調査研究、及び資料の収集・公開事業について」(13:10~14:00)

 石橋 健一郎 (国立劇場調査養成部 主席芸能調査役)

◆シンポジウム「国立劇場公演の50年」(14:15~16:15)

 犬丸 治 大笹 吉雄 神山 彰 児玉 竜一(五十音順)

◆第40回総会(16:30~17:15)
◆懇親会(18:00~20:00)於 九段キャンパス1号館13階 展望レストラン


【第2日目】12月11日(日)
 二松學舍大学九段キャンパス3号館2階 3021教室(休憩室:同3階3031教室)

 受付開始(10:30~) 大会開始(11:00~)

◆研究発表(11:00~) 

1.『三千世界商往来』論 ―並木正三の人物造形を中心に―
  陳 夢陽(早稲田大学大学院)


2.『伊賀越道中双六』「誉田家城中の場(奉書試合)」の演出の変遷考
  金生谷達也(明治大学大学院)


3.近松没後の義太夫節文字譜索引の作成について
  田草川みずき(日本女子大学 学術研究員)

4.享保期歌舞伎典拠考 ―二代目市川団十郎の日記を元に―
  ビュールク・トーヴェ(埼玉大学)

5.明治期における吉原遊廓と歌舞伎 ―「盛糸好比翼新形」を中心に―
  後藤隆基(立教大学)

◆閉会 会長挨拶(~16:00)

一日目(1号館地下)、二日目(3号館2F)と会場が異なりますので、ご注意ください。



11月7日(月)電話問い合わせ休止のお知らせ

2016-11-03 23:23:42 | お知らせ
現在、歌舞伎学会では、12月10日(土)、11日(日)に、二松學舍大学九段キャンパスにて行われる秋季大会の詳細を載せた会報の発送準備をしております。来週中には、会員の皆様に発送される見込みですので、しばらくお待ちください。

当学会は、毎週月曜日13時~17時に早稲田大学演劇博物館にて業務を行い、電話問い合わせの対応をしておりますが、来週11月7日(月)は、担当者の都合により、電話での問い合わせを受けられなくなりました。

皆様には、ご不便をおかけしますが、お問い合わせの際は、Eメールをご使用ください。


kabukiga2014@yahoo.co.jp


11月14日(月)以降は、電話での問い合わせにも対応もできるようにいたしますが、時間短縮の場合もありますので、どうぞご理解くださいますようお願い申し上げます。


歌舞伎学会事務局(メール担当N)

「演劇の証言・竹本駒之助師に聞く」(2015年7月18日)

2016-07-14 15:44:59 | 企画報告
2016年の夏期企画が今週末に控えておりますが、本日は、前年2015年に開催されました夏期企画をレポートいたします。

昨年の夏期企画は「演劇の証言・竹本駒之助師に聞く」と題しまして、国立能楽堂大会議室に女流義太夫の人間国宝・駒之助師匠をお迎えしました。


開演を待つ会場には歌舞伎学会会員の皆様の他、義太夫ファン、女義ファンの方々、そして一際目を引くお弟子さん達のお姿。
資料とともに配られた沢山のチラシが、駒之助さんが牽引されてきた女流義太夫の隆盛を物語っています。



駒之助さんの登壇を前にして、まずはVTRで『一谷嫩軍記・林住家の段』をじっくりと聞かせてもらいました。聞く者の腹にも染みわたるようなずっしりと響く語りに圧倒されます。
その後に登場された駒之助さんは、軽やかな夏のお着物に、お多福をあしらった帯を締められた洒脱な装いで、聞き手の濱口久仁子さんのインタビューに答えながら、幼少期の思い出から語り出されました。



昭和十年九月、浄瑠璃が盛んな淡路島に生まれた女の子が、自然に息をするかのように義太夫節と出会い、その才能を見いだされて十五歳で大阪に出て、女流義太夫の竹本春駒師匠の内弟子となり、義太夫の道を究めて行く様が、まるで一篇の映画を見るように目に浮かんできます。
その師匠は女義にとどまらず、十代目豊竹若太夫、四代目竹本越路太夫にも入門され、小松太夫や土佐太夫、岡太夫といった個性的な師匠達とのエピソードを聞いていると、時間が経つのを忘れるほどでした。

最後に質問に立たれた内山美樹子先生が、駒之助さんの語りで忠臣蔵の「お軽」が鮮やか浮かび上がった思い出を話され、駒之助さんの「芸の華」を堪能する二時間の締めくくりとなりました。



ちょっとした手振りでも目をひきます。

最後にお多福の帯を見せて下さいました。

〈事務局N〉

2016年度歌舞伎学会夏期企画のお知らせ

2016-07-07 11:38:03 | お知らせ
本年の夏期企画「演劇の証言」では、映画監督の山田洋次氏をお迎えし、監督が昔から親しまれてきた歌舞伎・落語のお話や、メガホンを取られた「シネマ歌舞伎」のお話などを伺います。

例年は、国立能楽堂大会議室を使用させていただいていますが、本年は開場五十周年の国立劇場・伝統芸能情報館レクチャー室にて行います。

会員の皆様をはじめ、非会員、学生の方、多数の参加をお待ちしております。



事前予約は行っておりませんので、直接受付に起こしださい。受付開始時間は14時半を予定しております。

なお、レクチャー室の定員を超えますと、入場をお断りする場合がありますこと、あらかじめご了承ください。

問い合わせ先
【e-mail】kabukiga2014@yahoo.co.jp

書籍紹介『歌舞伎―研究と批評―』53・54・55号

2016-04-11 13:34:45 | 書籍紹介
このところ刊行の遅延が続いておりました学会誌『歌舞伎―研究と批評―』ですが、2015年には3月に53号、7月に54号、12月に55号と、三冊を刊行することができました。
この三冊の刊行により、特集「歌舞伎の戦後七十年」が(上)(中)(下)として完結いたしました。
歌舞伎学会精鋭の論者を得て、第二次世界大戦後から現代に至る歌舞伎の流れを振り返り、歌舞伎の過去を未来の「歌舞伎」へと繋ぐ、貴重な三冊となっています。








15号以降の学会誌は、雄山閣HPより直接ご購入いただけます。

それ以前の学会誌の在庫状況につきましてはご歌舞伎学会事務局〈kabukiga2014@yahoo.co.jp〉にお問い合わせ下さい。

事務局より新年度のお知らせ

2016-02-21 16:47:16 | お知らせ
新年のご挨拶も申し上げないまま二月も終わりに近づきまして申し訳ありません。
歌舞伎学会は一月より新年度を迎え、続投の神山彰会長のもと、新体制の委員で運営して参ります。

昨年末に共立女子大学及び学士会館にて開催いたしました秋季大会は、二日間ののべ人数、約150名という多数のご参加をいただき、盛会にて幕を閉じることができました。

ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。


本年も、春に『歌舞伎―研究と批評―』56号の刊行、夏に「演劇史の証言」シリーズの講演会と、準備をすすめておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


2015年度 歌舞伎学会秋季大会開催のお知らせ

2015-11-21 13:16:25 | お知らせ
2015年度歌舞伎学会秋季大会を、共立女子大学において開催します。

一日目は午後から研究発表及び総会、二日目は学士会館に会場を移し
午前中に研究発表、午後に「劇界の新陳代謝」と題したシンポジウムを
行います。

会員の皆様だけでなく、非会員の方も当日受付でご参加できますので、
ご興味のある方は是非足をお運びください。


§秋季大会プログラム
 
【第1日目】12月12日(土)共立女子大学1208教室(一ツ橋キャンパス本館12階)
受付開始(12:30~) 


 ◇開会 会長挨拶(13:00~)
 ◇研究発表 (13:10~)

 1.「大正・昭和期における義太夫節『博多小女郎波枕』の上演をめぐって」
    早稲田大学演劇博物館 小島智章

 2.「『当秋八幡祭』初演から合巻までの問題点」
    フェリス女学院大学 中村恵

 3.「芝居小屋の構造的変遷と演劇に及ぼした影響三
    ―近世芝居小屋構造の完成(瓦葺きから再びこけら葺きへ)―」
    公益財団法人 文化財建造物保存技術協会 賀古唯義

 ◇第39回総会(16:00~)
 ◇懇親会(17:30~) 於 学士会館203号室


【第2日目】12月13日(日)学士会館203号室
受付開始(9:30~)


 ◇研究発表(10:00~)

 1.「坪内士行と宝塚男子選科」
    早稲田大学演劇博物館 水田佳穂

 2.「福地桜痴試論―『侠客春雨傘』をめぐって―」
    日本学術振興会特別研究員 村島彩加

 3.「一九二六年十月三十一日撮影映像より
    ―七代目松本幸四郎とデニショーン舞踊団―」
    早稲田大学 児玉竜一

 ◇大会企画「劇界の新陳代謝」(13:30~)
 今大会二日目には「役者の世代交替」を巡る講演とシンポジウムを開催いたします。
 いま、歌舞伎界は何十年かに一度の世代交替の時期を迎えつつあります。
 演劇界における世代の交替は、演者、作者、観客を含む、多様な層にわたって起こ
 る出来事です。それは、感覚の変容、作風の変化などとも関わる時代の裂け目とも
 なります。歌舞伎の歴史をさかのぼるとき、かつての世代交替にともなう新陳代謝
 はどのようなものであったのか、なにが新しくなったのか、隣接ジャンルにも関心
 を寄せつつ、世代と時代を捉える枠組みについて考えたいと思います。


 第一部: 講演「役者の世代交替」            
       近藤瑞男(共立女子大学)

 第二部: シンポジウム 「劇界の新陳代謝―元禄から今日まで―」
    近藤瑞男(共立女子大学) 鈴木国男(共立女子大学)
    神山彰(明治大学) 光延真哉(東京女子大学)
    〈司会〉児玉竜一(早稲田大学)

参加費(全日参加、一日参加とも同額)
会員  1,000円
非会員 1,500円


問合せ
kabukiga2014@yahoo.co.jp

事務局夏期休業のお知らせ

2015-08-10 17:52:49 | お知らせ
本日8月10日(月)より、8月24日(月)まで、演劇博物館においての事務局開設はお休みをいただいております。

次回の開設日は、8月31日(月)13:00~17:00です。

それまでのお問い合わせにはメールにて回答いたしますので、ご利用ください。
(詳細データの確認や郵便物の発送などは8月31日以降となります。)

メールアドレス
kabukiga2014@yahoo.co.jp


早稲田大学演劇博物館浮世絵コレクションNo.101-3893~3894

2015年度歌舞伎学会夏期企画のお知らせ

2015-05-31 10:59:38 | お知らせ
歌舞伎学会夏期企画は「演劇史の証言」シリーズで企画しておりますが、2015年度は、女流義太夫の竹本駒之助さんをお迎えします。

会員の皆様には既に会報57号にてお知らせしておりますが、非会員の方の参加も受け付けておりますので、詳細をご確認の上、多数ご参加ください。



当企画は、当日受付となっておりますので、会員、非会員ともに、直接会場にお越し下さい。
受付開始は13:30を予定しております。
お問い合わせは kabukiga2014@yahoo.co.jp まで。


事務局インタビュー「この人、どんな人?(3)犬丸治」

2015-03-16 13:44:09 | 人物紹介
この突撃インタビュー企画も、めでたく3回目を迎えました(パチパチ)! 
お声をかけては「いやいや、私は(僕は)いいです~」とフラれ続けた事務局Sを「来ましたか」と迎えてくださった今回のゲストは犬丸治先生。
企画委員でもあり、歌舞伎学会奨励賞の選考委員でもある先生をつかまえたのは、先日、皆様のおかげで成功裏に終了しました秋季大会の初日が幕を開ける直前のことでした。では、始まり始まり…。



犬丸 治(いぬまるおさむ)
1959年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。歌舞伎学会運営委員、日本ペンクラブ会員。現在「テアトロ」、読売新聞夕刊に歌舞伎劇評執筆。著書に「市川新之助論」(講談社現代新書 2003。のち「市川海老蔵」岩波現代文庫 2011として増補)、「菅原伝授手習鑑精読 歌舞伎と天皇」(岩波現代文庫 2012)など。


―まずは現職を教えてください。
「演劇評論家」ですが、本職はテレビ局で放送内容の間違い・放送表現の是非などをチェックする「番組考査」という仕事をしております。
そもそも僕が歌舞伎を観始めたのは、昭和46年(1971)9月の国立劇場。演目は『東海道四谷怪談』で、それで歌舞伎が大好きになったんです。


―おいくつの頃でしたか?
小学校6年生ですね。
我が家の人間はそれほど歌舞伎というものに縁が無くて、どちらかというと欧米文化派。
僕みたいな「日本文化が好きだ」っていうのは異色だったんだけど(笑)、とにかく「昔のものが好きで、調べることが好き」で、っていう性格と歌舞伎とが、妙にマッチしてね。


―昔のものが好きというのは、小さな頃から?
古今東西の美術とかが好きで、美術全集を抱えては飽かずに眺めていた、マセた子どもでした。

―その『四谷怪談』は、誰が出ていたか覚えてらっしゃいます?
この前、三十三回忌をやった白鸚の伊右衛門。お岩が(十七代目)勘三郎(※1)
直助が猿之助(今の猿翁)で、与茂七が今の幸四郎。お袖が精四郎、今の澤村藤十郎でした。
なかなか良い舞台でね。最後の「蛇山庵室」が、原作通り、雪なんですよ。
伊右衛門がお岩さんに祟られて、よろぼい出たときに、雪が降っていて。後ろが黒幕なんだけど、それがパッと振り落とされて雪の遠見がわあっと拡がったときに、「なんなのこれ!?」って子ども心にすごく新鮮で。
鮮やかな記憶が今でも残ってますよ。


―その中で一番印象に残った役者は?
僕は猿之助ですね、不思議なんですけど。
「三角屋敷」で、(直助が)お袖とまさに関係をもとうとしている。上手のところで、衝立を立てて濡れ場になってて、そこに与茂七が訪ねてくるんだけれども、そのときに(直助が)上半身裸になって出てくるわけ。その肉体が生々しくてね。
あるいは、奥田庄三郎を殺して、顔の皮を剥ぐところなんか結構リアルに演ってねえ。そういう細部が、妙に印象に残ってるんですよ。「歌舞伎っていうのはこういうこともやるのか」って、すごく新鮮な感想をもちました。


―歌舞伎好きの犬丸少年が演劇評論家になるまでに、そこからどんな道のりがあったんでしょうか。
僕の家と家族ぐるみの付き合いがあった方に、巌谷慎一さんという方がいらっしゃいました。
歌舞伎座の監事室ってありますよね、客席の一番後ろの方の小部屋で、ダメを出したり、いつも観ている所。
巌谷さんはその監事室長だったのですが、なぜか、小学生か中学生くらいの僕をとても可愛がってくれて、いつも監事室に入れてくれたので、そこで観ていたんです。
僕は十一代目團十郎や寿海は間に合わなかったけども、(十四代目)勘弥や(八代目)三津五郎ってよく観てたので、それは良かったなぁと思います。
たとえば、勘弥の与三郎が「見染め」で浜辺というか客席を歩いてきて、監事室の前を通って、ガッと曲がるんですよね。ああいうところなんか、監事室側から勘弥の顔を見られる経験をしたという(笑)。
舞台稽古なんかも結構見せてもらって、勘三郎と(二代目)松緑の『安政奇聞佃夜嵐』とか、今でも覚えてますね。


―それは貴重なものをご覧になって。劇評を書いてみたいと思った一番のきっかけは?
いやぁ、なんでしょうね。
大学では歌舞伎研究会に入りました。慶應の歌舞伎研究会は、古くは戸板(康二)先生や渡辺(保)さんとかを輩出した歴史ある部で、今でもそうですが、学生は実演というのがありまして、僕も…。

―どのお役を?
僕は二年から入って、そのときが『盛綱陣屋』のあばれの信楽太郎を演って、三年のときが『伊勢音頭』の喜助。
―良い役ですね!(笑)
ねえ(笑)。ですから、書くことや調べることはもともと好きで、中学校のレポートで南北について書いたりもしてましたので、今にして思うと素地はあったのかなとは思いますけれど、当時は歌舞伎好きの若者に過ぎませんでしたね。

―それで、就活してテレビ局に入られるわけですよね。
テレビ局に入ってしばらくは、全然芝居が観られなかった。僕は、ラジオを経てテレビの報道に異動になったんですね。ちょうど昭和天皇の崩御とかにもぶつかって、宮内庁担当で宮内記者会(記者クラブ)にいたから、メチャクチャ忙しい。
ですから、勘三郎や松緑の晩年は見逃してるんですよ。
で、非現場(テレビの現場以外のセクション)に移ってからは少しは土日が空くようになって、自分の時間ができるようになったのね。そのときに「また芝居に行ってみようか」って昔の虫が疼いて。観に行ったんです。
そのうち「自分でも(劇評を)書いてみたい」という欲求が抑えきれず、「演劇界」の懸賞劇評に書いた頃もありました。
歌舞伎学会ができて一番魅力的だったのは、僕たちが憧れてた渡辺(保)さんや服部(幸雄)さんや、今尾(哲也)さんといった方々と、気鋭の学者が集まって「歌舞伎をなんとかしたい」「現状の歌舞伎を考えよう」という動きができたこと。
そのとき「自分も参加できたら」という熱い思いが込み上げたのは事実ですよね。
歌舞伎を観るだけじゃなくて、学んで、それを今の歌舞伎に反映させたい。その気持ちを実現できる場はないかと考えていたときに、歌舞伎学会ができた。
学会も開かれていたけれど、何より紀要(学会誌)が投稿を受け付けていたということですね。
そこで自分の力試しという気持ちもあって、応募したら、大変温かい評価をしていただきました。
また、その頃「劇評」という小さな雑誌があって、清水一朗さん(学会員)からも声をかけていただいて書くようになったり、そういったさまざまな巡り会わせが講じて、今に至るというか…。


―そうだったんですか。
紀要に投稿していくうちに、こちらでの発表もさせていただいて、その結果、僕が光栄にも委員にも選ばれて。
つまり歌舞伎学会での活動が、今の僕が新聞なり雑誌なりで、劇評家の末席に名を連ねることに繋がったという感じがします。
ですから、歌舞伎学会にもしご興味があるのでしたら、開かれた学会で、誰にでも開かれた道がある、ということを知ってもらいたい。決して、学問的に敷居が高いわけでもないし、歌舞伎が好きなら誰でも参加できますから。


―紀要が一般の方々にも開かれている点は特長ですよね。ちなみに、これまでの『歌舞伎 研究と批評』のなかで印象に残っているものは?
投稿したものでは、最初に書いた「明治婦人の観劇記録~演劇資料としての『穂積歌子日記』」(第7号)ですね。
これは、研究者としての僕なりの習作みたいなものなんだけれど、その次の「お辰の残像 『謎帯一寸徳兵衛』論」(第8号)は、自分の研究と劇評とがマッチングしたらどうなるだろうかっていう試みだったのね。
紀要でも「研究と批評」と謳っているから、「それをうまく融合させたものがなにかできないかな? それまでにないものを考えよう」という気持ちがありました。


―お読みになって印象に残っているものは?
渡辺(保)さんの「九代目団十郎の弁慶」(第7号)かな。
やっぱり、我々が『勧進帳』として後生大事に語っていたものがいかに崩れているか。
九代目がこれだけ掘り下げて、工夫してきたんだということを、非常に実証的に事例を挙げておられて「なるほどなあ」と思いましたよ。
これが一つの、僕なんかは、劇評を書くときのある意味での「お手本」というか。
型というものを知悉した上で書かなければ、ただの印象批評になってしまうし、建設的ではないなと思います。


―書くこと、読むこと、観ることが、歌舞伎学会の活動を通して先生の中で融和しているんですね。
たまたま、僕の中では、本当に幸福な出会いだったと思いますね。

<取材・文=事務局S>


【MEMO】
※1 お岩・小佛小平・吉野屋お波(十七代目中村勘三郎)伊右衛門(八代目松本幸四郎=初代松本白鸚)直助(三代目市川猿之助=二代目市川猿翁)与茂七(六代目市川染五郎=九代目松本幸四郎)お袖(澤村精四郎=二代目澤村藤十郎)喜兵衛(二代目市村吉五郎)奥田庄三郎(四代目市川段四郎)四谷左門(四代目坂東秀調)藤八(二代目市川子團次)秋山長兵衛(七代目市川寿美蔵)お梅(十七代目市村家橘)宅悦(二代目坂東弥五郎)宅悦女房おいろ(二代目中村小山三)後家お弓(中村万之丞=二代目中村吉之丞)ほか