歌舞伎学会事務局

歌舞伎学会の活動を広報します.

書籍紹介『歌舞伎―研究と批評』第4号

2013-02-28 10:00:37 | 書籍紹介
 『歌舞伎―研究と批評』第4号は、平成元年(1989年)12月7日に刊行されました。

 この年6月に、二代目尾上松緑が亡くなったため、この号の特集は追悼記事との二本立てになっています。

 特集・昭和歌舞伎回顧では、まず藤田洋氏による「菊・吉歌舞伎の検証」。菊・吉とは、「六代目」と言えばその人の姿が浮かぶ六代目尾上菊五郎と、一代でその名を大きくした初代中村吉右衛門。ともに昭和三十年代を待たずに他界しますが、その後の歌舞伎界に多大な影響を及ぼしました。

 松井俊諭氏は、明治後期に人気を博し昭和初期の不遇な時代を経て戦後に再評価された七代目澤村宗十郎を論じ、小笠原恭子氏は、吉右衛門劇団の立女形であった六代目中村歌右衛門の政岡をとっかかりに初代吉右衛門の死後の歌舞伎を考察。上総英郎氏は昭和三十年代の南北劇ブームについて語っています。

 特集・尾上松緑追悼では、劇評家三氏がそれぞれの視点でその芸を語り、生涯の出勤演目・役名を収めた「二世尾上松緑年譜」を掲載しました。

 バラエティに富んだ研究論文の中では「歌舞伎研究とコンピューター」という表現が、その時代を感じさせます。今では電話並の普及率となったパーソナルコンピューターですが、平成元年当時はコンピューターを使用したデータベースの作成方法が論文になり得たのです。





舞台批評は平成元年6月から8月まで。この時の「福助」は、現中村梅玉です。

舞台写真は松緑の代表的な三役。
↓↓


事務局在庫、数冊あります。問い合わせは、kabukiga02@mai.goo.ne.jp まで。
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書籍紹介『歌舞伎―研究と批評』第3号

2013-02-12 08:23:57 | 書籍紹介
『歌舞伎―研究と批評』第3号は、平成元年(1989年)7月15日に刊行されました。

特集は「武智鉄二の業績」、歌舞伎の演技・演出を改めて問い直す時に必ず持ち上がってくるテーマです。

いわゆる「武智歌舞伎」は、昭和24年(1949年)から27年(1952年)にかけて関西を拠点に上演された実験的な公演で、坂東簑助(八代目坂東三津五郎)を指導役として、実川延十郎(三代目延若)、坂東鶴之助(五代目中村富十郎)、中村扇雀(現四代目坂田藤十郎)ら若手俳優達が参加していました。現代において「怪人」とも称されるその人柄や、歌舞伎演出の詳細、その俳優論などを明らかにしながら、武智の試みを見つめ直しています。

舞台批評は、批評家五人が集まってそれぞれの感想を述べ合う「合評」になっています。

題して「東京大歌舞伎評判記」。

昭和63年(1988年)11月から平成元年(1989年)4月までの歌舞伎座と国立劇場、浅草公会堂の演目を役名(役者名)ごとに評していくスタイルで、なんと百三十頁近い長編です。今の劇評では読めないような辛辣な批判や、意外な擁護などを通して、当時の舞台の息づかいが感じられるとともに、歌舞伎の見方の多面性を知ることができます。





舞台写真巻頭は、合評で驚くほど酷評されている「二人道成寺」。
↓↓


現在のところ、事務局在庫は一冊のみです。
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歌舞伎学会の歩み(平成元年)

2013-02-05 18:09:57 | 学会の歩み
昨年末に十八代目中村勘三郎、そして今月は十二代目市川團十郎という大名跡を続けて失いました。謹んでご冥福をお祈りするとともに、第五期歌舞伎座の開場を四月にひかえた平成歌舞伎のさらなる発展を願ってやみません。

さて、本稿では歌舞伎学会が二年目を迎えた平成元年(1989年)の活動記録を振り返ります。

前年より闘病中だった昭和天皇は、この年の1月7日に崩御し、元号は平成と改められました。2月には手塚治虫、6月には美空ひばりと昭和を代表する有名人が相次いで亡くなりましたが、歌舞伎界でも前年の十七代目中村勘三郎に続いて二代目尾上松緑が帰らぬ人となりました。

この年の歌舞伎学会は、1月と12月に東武百貨店での連続演劇講演会、5月に歌舞伎フォーラム、11月と12月と場所を変えての秋季大会と盛りだくさんのイベントを開催しました。

5月のフォーラムでは、澤村田之助丈をお招きして、歌舞伎での上演が途絶えている「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」を取り上げたシンポジウムを開催しましたが、この時田之助丈にお願いした台詞の朗唱の素晴らしさは学会の語りぐさになっています。

11月には特別秋季大会として、歌舞伎の創始者阿国のふるさと出雲市大社町まで出向いて、講演とシンポジウムを行いました。出雲市は、この年5月に第一回出雲阿国歌舞伎(富十郎、團十郎、澤村藤十郎らによる本興行)を開催しており、出雲阿国座の設立を目指した事業に力を入れ始めた頃でした。

このフォーラムと、特別秋季大会の内容は、翌年6月に刊行された『歌舞伎―研究と批評』第5号に載録されています。


詳細は↓↓
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