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日本光学 Nikon S2

2011-10-15 22:30:00 | ニコン

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Nikon S2 (1954-1958)

唯一持っているレンジファインダー機です。
この当時は"Nikon"はカメラの名前であって社名ではありませんでした。

戦前~戦時中にかけて軍用の測距儀や望遠鏡などを作っていた日本光学は戦後、民間用の製品への転換を模索し
結果、それまでの技術や経験を活かす事の出来るカメラ・レンズ製品を生産する事を決定し初のカメラ、
Nikon I 型 (1948年)を完成させます。

その後も改良を重ねながらNikon M 型 (製造年不明?)、Nikon S (1950年)と経て、1954年に新設計でこのS2を発表しました。
フォーマットもこのS2でようやく36mm×24mmのライカ判に準じ、プリント時にカットの問題も解決されました。

S2はニコンS型では最も生産数が多く、今日でも手に入れやすいカメラです。
当時は輸出が主で、アメリカではライカより人気があったそうです。

本来、Nikon S2はもう少し早い段階でほぼ完成していたのですが、同年の春に発表されたライカM3の完成度の高さに圧倒され、
S2の発売を延期しさらなる機能の充実・改良を施し、12月の発売となりました。

とは言え、この時代の国産カメラはまだまだ「ライカやコンタックスのコピー」の域を脱していないもので、このS2も
「外観はコンタックス、メカニカルはライカ」と、例えられる事が多いです。

等倍の50mm固定ファインダーの見えは、ライカM3には遠く及ばないとの事ですが、ファインダー中央付近は
二重像のコントラストもあり、ピント合わせもそう難しくはありません。
でも開放で撮る勇気は無いのでひと絞りくらいから使っています。

もっとも、もう50年以上も前のカメラなので二重像のコントラストの劣化度は個体差があると思います。

僕のS2は1/4秒だけが実測1/30秒で切れています。スローガバナーの不調でしょう。
あとは全速正確に切れています。






Nikon S2 の各部を見てみます。ごく普通の前期型です。
ブラックペイント仕様のS2も欲しいのですが、希少で高価ですし、ボディを黒にすると、今度はレンズも黒で揃えたくなると
思いますので怖くて手が出せません。






軍艦部はダイヤルだらけです。いかにも「機械」ってカンジがたまりません。
数字もたくさん踊っていて見ているだけで嬉しくなります。
ボディ本体の梨地塗装の鈍い輝きは趣きがあります。



(A) 低速シャッターダイヤルと(B)高速シャッターダイヤルが同軸上にあるのですが、それぞれ独立しているので
操作には注意が必要です。

特に、低速シャッター (T、1秒~1/30秒) 使用時には高速シャッターダイヤルを「30-1」の所に合わせておかないといけません。
これを忘れると高速側で決めたシャッタースピードが選択されてしまい、どアンダーもしくは真っ暗な写真を撮ってしまう事になります。(汗)

この辺がドイツ製カメラに大きく遅れを取っていました。
Nikon S2の後を受けて登場するNikon SPでは高速・低速ともひとまとめになり使い勝手が大きく向上しました。
尚、S2には1秒以下のシャッター選択は無いので、さらにシャッタースピードを落とすにはB(バルブ)かT(タイム)を使う事になります。


(C) フォーカシングギヤ
回すとレンズが前後してピント調整をしますが、フォーカシングギヤを使うより、レンズを回してピント調整する方が速いです。

昔、"スナップの達人"と呼ばれる方などはとっさの撮影の場合など、ファインダーを見ずに被写体との間合いでピントを合わせていたそうです。
ある程度絞って被写界深度を稼いでいたかとは思いますが、"居合い抜き"みたいなカンジでカッコいいですね。憧れます。


(D) 絞りリング
Sマウントレンズ全般にですが、非常に小さく回しづらいです。
おまけに絞りリングを回そうとするとレンズも回ってしまいピントが合いません。

なので、片手でレンズが動かないように掴み、もう片手で絞りリングを回して絞りを決める。
それから撮影に入る方がスムーズかもしれません。


(E) レンズ着脱用バネ
レンズを外す時はこれを押しながらレンズを回すとレンズが外れます。
Sマウントレンズはカメラ側のヘリコイドを無限遠∞に合わせてから着脱しないと「地獄バネ」の状態となり
外れなくなるそうです。

どういう状態になるのか試してみたい気もしますが、「地獄」という響きの前に恐れをなしています。とても試せません。



(F) アクセサリーシュー
外付けのフラッシュガンなどを取り付ける事が出来ます。


昔の新聞記者のようでカッコいいですね。


フラッシュガン本体に積層電池が必要なのですが、とうの昔に廃止されています。
もし見つけたとしても、もう電池残量が残っていないでしょう。

フラッシュガンのソケットに"1発使い捨て"の閃光球を取り付けて発光させるのですが、この球もなかなかありません。
あったとしても発光するかどうか保証がついていません。

つまり、現在では自作・改造でもしないと使えないという事です。(^▽^;) 

単なる"飾り"として買いました。
まるで"エリマキトカゲの威嚇"みたいな佇まいです。(笑)




とにかく、一眼レフカメラと違ってレンジファインダーって非常に使いにくいです。
ファインダーを通して被写体を見ている訳で、一眼レフのようにレンズを通して被写体を見ている訳では無いので、
ボケ味も、ゴーストやフレアが出ているかも分かりません。何よりファインダーとレンズの位置が違うので構図が微妙にズレます。

じゃあ、なぜ買ったのかと訊かれれば、
「オールドレンズを使ってみたかったから。」
「クラシックな精密機械ってカンジでカッコいいから。」

それに尽きます。


S2以降、日本光学はNikon SP (1957年)、Nikon S3 (SPの廉価版 1958年)、Nikon S4 (S3の廉価型 1959年)と発表していきますが、
SPでレンジファインダー機としてほぼ登り詰め、ライカM3に肉薄しました。

しかし、"究極のレンジファインダー機 ライカM3の壁" と "レンジファインダー機の限界" から、日本の各メーカーは
一眼レフの開発に力を注ぐようになります。

日本光学でもNikon SPと同時に、同社にとって初の一眼レフの開発が進められていました。
1959年登場のNikon F です。

Nikon Fが登場すると世の中は一気に一眼レフへとシフトして行き、レンジファインダー機の時代は終わりました。


1954年-
戦後10年を前に登場したNikon S2。
まだまだ外国との差は大きかったけれど、「外国に追いつけ追いこせ。」と、戦後から立ち直ろうと日本が必死だった時代の一機です。

「スパン。」と小気味良く響く布幕のシャッター音や、高級感溢れる質感は現在のカメラにはない上品さがあります。

外に持ち出す機会は殆どありませんが、年に何回かぐらいは連れ出してあげたいものです。

※2011年11月、Nikon S2(ブラックペイント)が手に入った為、このS2は手放しました。



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