会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

裁判資料で明らかになった「架空循環取引」(東京商工リサーチより)

裁判資料で明らかになった「架空循環取引」

架空取引により実体があるように見せかけていた会社の詐欺手口が、裁判資料で明らかになったという記事。

大手リース会社が、事業会社を相手に提起した裁判の資料です。以下のA社というのが、詐欺スキームの中核だそうです(B社、C社も共謀?)。

「2. A社は、大手家電量販店の名義で自己またはB社、C社の口座に振り込み、外形的に大手企業との取引があるように見せた。振込名義人は「(カ)●●(TSR注:大手家電量販店)」などとしていた。または、B社らから同様の手法でA社の口座に振り込みを受けた

3. そのうえで、A社やB社、C社は振込履歴に併せて計算書類や架空の契約書類を作成し、金融機関に提出して多額の融資を受けた。A社の取締役から経理資料の任意提出を受けたところ、「基本契約書(ウソ)」(原文ママ)と記載されたあからさまな偽造書類が存在した。

4. A社は偽装した書類、振込履歴、通帳の記載を利用して大手企業と継続的な取引があるように装いファクタリングを利用。将来生じる債権を第三者に対して譲渡し、金銭を詐取した。取引確認のため、譲渡債権の債務者とされる大手企業に対して架電されることもあるが、A社はこのような場合に備えて、大手家電量販店名義の名刺を作成し、架空の電話番号を記載。偽の従業員に対応させていた。また、大手量販店の虚偽のオフィスで第三者に取引の経緯を説明した。」

「架空循環取引」というのは、書類上の取引参加者が、ものやサービスの動きは存在しないにせよ、実際に取引に関与しているのが普通ですが、この記事のケースは、大手家電量販店は、振り込み者として名前を勝手に使われていただけですから、ちょっと違うように思われます。(B社やC社は、不正だということを知っていたかどうかはともかく、実際に関与していたのでしょう。)

いずれにしても、銀行の計算書や通帳上に記載された資金の流れや、書類(今の傾向だと紙ではなく電子ファイルの場合もあるでしょう)だけでは、実態はわからない、どこかで現物を見ておかないといけないということでしょうか。

この事件では破綻に追い込まれた会社もあったようです。

「一連の取引を巡っては、6月30日に東京地裁に民事再生法の適用を申請した(株)虎杖東京(TSR企業コード:295604204、東京都中央区)が、B社の債務約13億円を連帯保証していたことを明らかにしている。

虎杖東京の債権者説明会では、「B社はA社などの架空取引に巻き込まれたものと認識している。B社はこの件について、刑事告訴して受理されている」との説明がなされている。」

虎杖(いたどり)東京が民事再生 寿司店「ま石」「築地虎杖」、カレー担々麺の「麺屋虎杖」など展開(Yahoo)

「今年に入って関係会社の信用問題が発生、当社の動向も注目されていたところへ、新型コロナウイルス感染拡大の影響により店舗の閉鎖が相次ぎ、今年6月時点の営業店舗数は7店舗と大幅に減少。今春以降、一部の金融機関に対する約定弁済が滞り、返済猶予を申し入れていたが、今回の措置となった。

負債は債権者約540名に対し、約32億7800万円。」
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