財務会計基準機構の企業会計基準諮問会議(7月20日開催)の議事概要(会議資料、議事要旨など)が公表されました。
「資金決済法上の「電子決済手段」の発行・保有等に係る会計上の取扱いについて」というテーマが金融庁より提案され、議事要旨によると、議論の結果、議長より、企業会計基準委員会の新規テーマとして提言する旨の発言がなされたそうです。
新テーマの詳しい内容や事務局による分析結果はこちら。
↓
今回の企業会計基準諮問会議における新規テーマの提案(PDFファイル)
「提案理由」より。
「近年、金融のデジタル化が進む中で、法定通貨と価値を連動させたステーブルコインを用いた取引が海外において増加しており、将来的に幅広い分野で送金・決済手段として用いられる可能性とともに、国際的に利用者保護やマネロン上の課題が指摘されていること等を踏まえ、「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第 61 号、以下「改正法」という。)において、広く送金・決済手段として用いられるステーブルコインの取引を行う事業者について必要な規律を導入することとしている。
いわゆるステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの及びこれに準ずる性質を有するものについて、「電子決済手段」と定義し、これを取り扱う電子決済手段等取引業者について登録制を導入し、必要な規制の整備を行っているところ。...
電子決済手段については、価格の安定した電子的な決済手段である点で、預金や電子マネーと類似するものの、新たに法律上定義される財産的価値であり、今後、送金・決済手段としての利用が広がっていくことが想定されていることから、改正法の施行までに会計上の取扱いを整備することが必要であり、本テーマを提案した次第である。」
「電子決済手段」には、1号から4号まであって、
- 第1・2号は、不特定の者に対して代価の弁済に使用すること等ができる通貨建資産であって、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値
- 第3号は、特定信託受益権(金銭信託による受益権であって、信託財産の全部が預貯金により管理されているもの)
- 第4号は、これらに準ずるもの
とのことです。
事務局の分析によると、
- 「第一号及び第二号電子決済手段については法定通貨等をもって債務の履行等が行われる点で、金融商品(金銭債権)に該当すると考えられ、企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)等が適用されることになると考えられる。」
- 「第三号電子決済手段についても、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値であるが、信託財産の全部が預貯金により管理されている金銭信託による受益権であり、金融商品(金銭信託)に該当すると考えられ、金融商品会計基準等が適用されることになると考えられる。」
ということで、1号から3号までは結論のめどがついているようです。論点としては、「預金と同様に現金同等物として取り扱うか否か」、「時価評価の対象とするか否か」、「仮に時価評価の対象としなかった場合においても、貸倒引当金等の評価減の対象とするか否か」などを挙げています。
4号については、「現時点においては、会計的な性質が明らかではなく、内閣府令の内容が公表されるまでは、基準開発を行うことが困難」としています。