IASBが債務と資本の両方の特徴を有する金融商品に関する会計処理の要求事項の改善について公開協議
IASBが、「債務と資本の両方の特徴を有する金融商品に関しての企業の財務報告における課題に対処するため」IAS第32号、IFRS第7号「金融商品:開示」及びIAS第1号「財務諸表の表示」の改正案を公表したというプレスリリースの日本語版。(debt を「債務」、equityを「資本」と訳しています。)(プレスリリース原文はこちら→IASB consults on improved accounting requirements for financial instruments with both debt and equity features)
「IAS第32号「金融商品:表示」は、金融商品を発行する企業が負債性金融商品を資本性金融商品とどのように区別すべきかを示している。その区別が重要なのは、当該金融商品の分類が企業の財政状態及び業績の描写に影響を与えるからである。」
「IASBは次のことを提案している。
- 企業が債務と資本を区別するのに役立てるため、IAS第32号の基礎となっている分類の原則を明確化する。
- 債務と資本の両方の特徴を有する金融商品の複雑性をさらに説明するための情報を開示するよう企業に要求する。
- 普通株式に帰属する金額(純損益及び包括利益合計を含む)について(資本性金融商品のその他の保有者に帰属する金額と区分して)、新たな表示の要求事項を公表する。」
公開草案のサマリーより。IN7が債務と資本の区別、IN8が開示、IN9が普通株式に帰属する金額に関する修正の説明です。
オリンパス巨額粉飾事件に関連して、新日本監査法人の検証委員会が、債務と資本の区分に関する日本基準の不備を指摘したということがありました。しかし、その後、何の動きもなく、ASBJの検討テーマにも上がっていません。新日本出身で、金融商品会計の専門家でもある現・公認会計士協会会長が指導性を発揮して、基準の改善を進めるべきでしょう。
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(再掲)新日本の検証委、オリンパス監査で「法的責任認められず」(2012年3月)(ロイター)
「報告書では、制度面の見直しを通じた再発防止も主張した。例えば、オリンパスが損失隠しの過程で利用した配当優先株について、資本扱いする日本の会計基準を、負債扱いとする英国基準や国際会計基準(IFRS)と同等の制度に見直せば、時価評価による損失計上を通じて不正が露見した可能性がある、などとした。」
たしか、オリンパスの英国子会社が、あやしげな金融商品を粉飾指南役に対して発行し、その後、それを株式と同様の金融商品として、巨額の資金で買い取った(その資金は海外に飛ばしていた金融商品含み損の解消に使われた)という問題がありました。
オリンパスの会計処理については、こちらの論文でもふれています。
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オリンパス事件の会計問題(明治学院大学)(PDFファイル)