監査・保証基準委員会有識者懇談会(2022年9月26日)の議事要旨等の公表について
2022年9月26日開催の監査・保証基準委員会有識者懇談会の議事要旨と会議資料が公表されました。
監査基準委員会報告書 600「グループ監査」の改正案などについて、懇談会委員の意見を聴いたようです。
「グループ監査」の改正(公開草案)に関する意見より。
「○ 重要な懸念はないとの印象であるが、監査時間・被監査会社の負担の増加にならないよう効率性重視で対応してほしい。また、監査の手法・範囲が変わるのであれば前広に企業にも伝えて議論を行ってほしい。改正概要の資料では具体的な実務への影響が把握しづらい点がある。財務諸表の作成者側にも理解できるような資料を作成いただき、周知活動を行っていただきたい。
(意見への回答)
従来は、重要な構成単位と追加選択する構成単位に対して、どのようなリスクがあるか識別して手続を行っていたが、改正後は、リスク・アプローチで考えることになる。そのため、リスクを再整理してグループレベルのリスクの識別を行うことになる。その上で、リスクを拾い漏れている構成単位がないかを検討することになると思う。そのため、ゼロリセットではなく、これまで識別していたリスクをベースに、改正後の監査基準委員会報告書 600「グループ監査」(以下「改正監基報 600」という。)のアプローチに沿うように考えていくことになる。今後、実務上の影響についても検討したいと考えている。」
「○ 持分法適用会社についても適用対象となるとの記載があるが、現時点で分かる範囲で、監査手法等が変わるところがあるのであれば教えてほしい。
(質問への回答)
従来から持分法適用会社がグループ財務諸表に与える影響を考慮して、グループ監査の手続を実施してきたものと考える。今後も、従来の監査手法と大きく変わることなく、持分法適用会社の財務諸表のリスクの影響度を勘案して、グループ監査の手続を実施することになると考える。」
「○ グループ監査人の責任が相当程度強調されているが、構成単位の監査人からの協力がますます重要になると考える。構成単位の監査人の協力の在り方についても説明・浸透が必要と考える。
(意見への回答)
財務諸表作成側の持分法適用会社に対する持分割合が低い場合、構成単位の監査人の協力について、実務上で苦労が生じてしまう可能性があると理解している。情報及び人へのアクセス制限がされる可能性もあり、その場合の対応については改正監基報 600 の適用指針にも定められているところである。」
そのほか、 IAASB の活動状況についても説明がなされ、意見を聴いています。関連して、継続企業の会計基準開発について、質疑があったようです。
「<継続企業(ISA 570)>
○ 継続企業の会計基準については、2018 年に協会より企業会計基準委員会(ASBJ)の企業会計基準諮問会議へテーマ提案がなされたが、2019 年に検討テーマから除外されて開発が中止となっている状況と理解している。開発中止となった経緯も踏まえながら対応していく必要がある。なお、継続企業の前提に問題がない企業が大半であるため、過度な負荷をかけることには懸念がある。
○ 協会としては、今後も会計基準開発に向けて積極的に働きかけを行っていく予定か。
(質問への回答)
・ IAASB から継続企業の評価期間の始点等について問題提起がされたことも踏まえて、関係各所と協議の上で会計基準開発に向けて働きかけを進めていきたい。
・会計基準開発について企業会計基準委員会(ASBJ)へ再提案という形になると思うが、過去にご指摘いただいた点や開発中止の経緯を整理した上で進める必要があると認識している。関係各所と改めて議論した上で検討したい。
○ 過去の会計基準の検討経緯を踏まえながら対応していく必要があると思うが、継続企業の前提の判断が全て監査人側の判断に依拠するのは正しいとは言えない。経営者側で主体性を持って継続企業の前提を判断し、監査人がチェックするという仕組みが必要と考える。負担感への考慮も必要であるが、経営者の判断も重要になる。」
そのほか、サステナビリティ/ESG 情報の保証に関して意見発信が必要という意見もあったようです。