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ひびき監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)

ひびき監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(PDFファイル)

金融庁の公認会計士・監査審査会は、ひびき監査法人を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、同監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました(2023年1月20日付)。

以下、指摘事項から引用。いつもどおりのスタイルで、こてんぱんに批判しています。

業務管理態勢。

「理事長は、職業倫理の遵守を重視する組織風土を醸成できておらず、当監査法人の社員及び職員は、職業的専門家としての誠実性・信用保持の重要性に対する認識が著しく不足している。このため、今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務について、不適切な検査対応が行われるなど、当監査法人の社員及び職員においては、法令、倫理規則、内部規程等を遵守して業務を遂行する意識が欠如している。」

「理事長及び品質管理部長は、大手監査法人での勤務経験がある公認会計士の採用や、当監査法人が受講を求めている研修等を通じて、現行の監査の基準や監査の基準が求める手続の水準に対する理解が法人内部で十分に浸透しているものと思い込んでいる。このため、品質管理部長は、各種監査調書様式や「自主点検チェックリスト」等の監査品質を改善するためのツールを提供しさえすれば、社員及び職員が当該ツールを適切に利用するものと思い込み、当該ツールの利用状況を直接確認するまでの必要性はないものと考えている。」

「当監査法人の社員においては、被監査会社の監査リスクはいずれも相対的に高くはないとの認識の下、被監査会社の監査リスクに対応した十分かつ適切な監査証拠を入手したかについて慎重に見極める意識が不足しており、また、職業的懐疑心を発揮して、経営者の主張を批判的に検討する意識が不足している。このため、当監査法人の社員においては、監査調書の査閲や監査業務に係る審査等に際し、監査補助者や監査チームが実施した業務内容を批判的に検討することにより監査品質の維持・向上を図るという姿勢が不足している。」

冒頭部分では、同法人の経営理念を揶揄しているかのようにも読める記述がありますが、まず、立派な経営理念を掲げて、それに向かって改善を図るというやり方は、何ら批判されることはないと思います。

品質管理態勢。

「当監査法人は、検査実施通知日以降、今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務について、当該監査業務に係る業務執行社員又は監査補助者が事後的に作成した監査調書を監査ファイルに差し込むなどした上で、その旨を秘したまま、検査官に当該監査ファイルを提出した。」

「当監査法人は、監査ファイルの最終的な整理後における監査調書の差替えなど、当監査法人の方針及び手続に従わない監査調書の変更を防止するための実効性のある措置を講じていない。」

当局検査前の監査調書変更については、米国のKPMGが多額の罰金を課せられたりしています。金融庁も、そういう事例は知っているでしょうから、日本でも、今回の悪質さの程度はわかりませんが、同様のことをやっていれば、厳しい対応になるのでしょう。監査基準では、調書整理期限後の変更が全く認められないということではなく(期限後に不備に気付いて追加手続実施も含めて修正するということはありうる)、変更の履歴を残せばよいということだったと思います。(変更履歴を残せば、不備があった箇所を検査官に教えることになりますが、それはしかたがない。)

個別監査業務

「業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準や、現行の監査の基準が求める手続の水準の理解が不足している。特に、不正による重要な虚偽表示リスクや会計上の見積りの監査に係る手続についての理解が不足している。」

「業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社の会計方針及び会計上の見積りに関する経営者の主張並びに財務諸表の表示について批判的に検討していないなど、職業的懐疑心が不足している。」

「業務執行社員は、長く監査業務に従事している監査補助者に過度な信頼を置いていたことから、監査補助者に対する適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を実施していない。」

「非支配持分の検証が不適切、構成単位の固定資産の減損、企業結合取引における無形資産の評価と開示及び収益認識に関する誤謬リスク対応に係る監査手続が不十分といった重要な不備が認められる。」

「収益認識に関する会計方針及び工事損失引当金の計上方針に係る検討が不十分、さらに、収益認識に関する不正リスクの識別と評価、収益認識に関する不正リスク対応、仕訳テスト、企業結合取引における取得原価の配分、のれんの減損テスト、棚卸資産の評価、退職給付債務、株式報酬に係る負債、売上原価、買掛金の残高確認、分析的実証手続、注記及び内部統制の運用評価に係る監査手続が不十分、くわえて、グループ監査に関する監査役等とのコミュニケーション、個人情報の取扱い、虚偽表示の評価、専門的な見解の問合せの取扱い及び監査概要書の記載内容が不十分といった広範かつ多数の不備が認められる。」

公認会計士・監査審査会による処分勧告について(ひびき監査法人)

監査品質に関する報告書」を発行したりして、品質管理に熱心なようにも見えるのですが...

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