2018 年3月期の内部統制報告書において、「開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない」旨を記載したというスルガ銀行のプレスリリース。
「下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。したがって、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました。
記
当社は、2018 年 1 月に株式会社スマートデイズがシェアハウスオーナーに対する賃料支払を中止したことに端を発するシェアハウス関連融資の問題の発生を受け、外部の弁護士で構成される「危機管理委員会」を設置して、事実関係の調査を実施しました。
これを踏まえて、財務報告に関する以下の全社的な内部統制における不備を認識しました。
・シェアハウス関連融資については、シェアハウス案件のビジネスモデルや不動産業者を窓口とした営業に起因するビジネスリスクを把握しないまま、それまでの投資用不動産関連融資の一つとして捉えて、融資を推進したこと。また、融資の実行に当たり、審査部門による牽制機能が十分に発揮できていなかったこと。
・シェアハウス関連融資においては、融資実行後のシェアハウス案件に関連する情報の収集やモニタリングが不十分であったこと。
上記の不備に加えて、決算・財務報告プロセスにおいて、シェアハウス関連融資等がもたらすリスクを当社が認識した際に、当該貸出金に対して適切な償却・引当を行なうために必要なリスク情報を分析し、反映する仕組みが整備されていませんでした。その結果、当事業年度において、当該リスクを決算処理に十分に反映することができず、貸倒引当金の追加計上を行ないました。
よって、当社は、上記の全社的な内部統制の不備及び当該決算財務・報告プロセスにおける不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。」
重要な不備があるという結論はそのとおりなのでしょうが、この記述を読む限りでは、シェアハウス案件でしか不備がなかったように書いています。しかし、報道などでは、シェアハウス以外の中古アパート・マンション融資でも不正があったとされており、銀行も認めているようです。とすると、この内部統制報告書の結論は正しいとしても、その内容はでたらめということになります。
内部統制報告書は会計監査人が監査しているはずですが、会計監査人はきちんと監査したのでしょうか。
念のためEDINETで監査報告書を見てみると、以下のような記載となっており、銀行の報告書に完全なお墨付きを与えています。
「当監査法人は、スルガ銀行株式会社が2018年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は開示すべき重要な不備があるため有効でないと表示した上記の内部統制報告書が、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価結果について、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。」
2018年3月期決算の訂正を発表した際には、シェアハウス以外の投資用不動産融資についても、訂正を行っていました。
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「スルガ銀は問題の融資が焦げ付く恐れが強まり、2018年3月期連結決算を一部訂正する異例の事態に追い込まれ、最終利益が激減。金融庁の森信親長官が絶賛した高収益モデルは根底から揺らいでいる。株価も下落の一途をたどっており、数十年来の株主という85歳男性は「信用商売なのに、監査役を含め経営陣は何をやっていたのか」と厳しい表情を見せた。」
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「スルガ銀行は株主総会の翌日である6月29日、有価証券報告書を関東財務局長に提出した。
それによると、2018年3月期の報酬は、岡野会長が1億9700万円、米山社長が1億6800万円。元副社長の岡野喜之助氏(2016年7月に死去)には退職慰労金として5億6500万円が支払われた。」
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