米国の金利上昇で、地銀が多額の含み損を抱えているという記事。
「今年に入って米国の金利が急上昇し、保有する外国債券(外債)などの価格が急落。2022年3月期決算では、有価証券で多額の含み損を抱えた地銀が続出した。」
きらやか銀行の公的資金注入申請方針も、有価証券含み損がきっかけとのことです。
「きらやか銀行は22年3月末時点で、有価証券合計で121億7900万円の含み損を計上。21年3月末も26億7900万円の含み損を計上していたが、さらに95億円も悪化した。中でも、外債などを含む「その他有価証券」の悪化が顕著で、22年3月末の含み損は119億2500万円と、21年3月末に比べて実に90億円以上も拡大している。」
他の地銀の状況は...
「多額の含み損を計上したのは、きらやか銀行だけではない。編集部は地銀全99行の22年3月期決算(単体)を基に、有価証券評価損益の状況をランキングしてまとめた。含み損が最も多かったのは栃木銀行の154億円で、もみじ銀行の151億円と続く。きらやか銀行と筑波銀行を合わせ、100億円以上の大幅な含み損となったのは計4行あった。
有価証券の含み損で、影響が大きいのはやはり外債などを含む「その他有価証券」だ。編集部がデータのなかった北九州銀行と非開示の琉球銀行を除く97行の「その他有価証券」の含み損益の状況をまとめると、最も含み損が大きかったのは横浜銀行の392億円で、山陰合同銀行の255億円、広島銀行の189億円と続き、6割超の63行が含み損となっていた。ただ、横浜銀行などは株式などの含み益で相殺している。」
満期保有目的債券に分類していれば、金利上昇で時価が下がったからといって、評価減しなければならないわけではありませんが、含み損が増えれば(含み益が減れば)、貸し出しに影響します。
「金融に詳しいマネックス証券の大槻奈那専門役員は「地銀の多額の含み損は直接、自己資本比率の低下に影響しなくとも、リスクを取って貸し出したり投融資したりする力を押し下げる」と指摘する。」
素人考えでは、金利が上がって債券価格が下がったのなら、むしろ債券投資を増やせばいいようにも思われます。さらに金利が上がってひどいことになっても責任は負えませんが...。
きらやか銀行、「3度の公的資金申請」に漂う不安(東洋経済)(全文読むには要無料登録)
「「株や債券の相場がどう動いても利益が出ないような、どうしようもないポートフォリオになっていた」。金融庁のある幹部は、きらやか銀の有価証券運用の惨状についてそう話す。
預金と貸し出しによる銀行本来のビジネスが年々細る中で、有価証券による余資運用は地銀経営の要になっているが、きらやか銀の運用商品の中身は周辺の地銀からも「がんじがらめ」「支離滅裂」と揶揄されるような状態にあった。」
外部への運用委託もうまくいっていないそうです。
「高度化を目指しSBIに運用委託した勘定を中心に、外国債券などでの含み損がわずか1年で4倍以上にも膨らんでしまったのだ。2022年3月末時点で、SBIの運用委託分が含まれている有価証券の「その他」項目における含み損は、119億円にも上っている。
欧米で今後利上げが進めば、含み損はさらに膨らむとみられており、きらやか銀としてはまたしても運用資産の損切りを迫られ、赤字を垂れ流すことになりかねない状況にある。」
「きらやか銀としては、経営のかじ取りの失敗を糊塗しコロナ禍のせいにすることで、返済が迫る公的資金を「特例の緩い公的資金に実質的に切り替えられて、ラッキーと腹の中では思っているのでは」(東日本の地銀役員)という見方すらある。」
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