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「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」論点整理の公表について(金融庁)

「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」論点整理の公表について

金融庁は、「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)論点整理― 会計監査の更なる信頼性確保に向けて ―」を、2021年11月12日に公表しました。

「会計監査を巡る環境の急速な変化を踏まえ、将来に向けて会計監査の信頼性を確保するには何が必要か、幅広い論点について総合的に議論を行った」とのことです。

20ページほどの報告書です。全2ページの概要も掲載されています。

大きく、「会計監査の信頼性確保」、「公認会計士の能力発揮・能力向上」、「その他」に分けて、さまざま議論しています。

以下、重要と思われる箇所の抜粋です。

会計監査の信頼性確保

1.上場会社の監査に係る取組み

(1)中小監査事務所等に対する支援

「今後、例えば、電子監査調書の導入等のデジタル化支援や人的基盤の整備、経営相談体制の強化など、中小監査事務所に対する体制面・ノウハウ面での支援を講ずるといった上場会社の監査の担い手の裾野を広げるための方策の一層の充実を検討する必要がある。」

(2)上場会社の監査の担い手に対する規律の在り方

(より高い規律付けの検討)

「現状の自主規制としての上場会社監査事務所登録制度について、登録審査やその後のレビューを通じて監査事務所が上場会社を監査するに十分な能力・態勢を備えていることを担保する規律としての実効性をより高める観点から、法律に基づく制度の枠組みを検討する必要がある。その際には、コンプライアンスのチェックに留まるような形式主義に陥ることのないよう、上場会社を監査する監査事務所に対する規律としての実質が伴う制度・運用を目指すべきとの意見があった。」

「規律付けの1つの方法として、監査法人に一定の社員の数を有することを求めるべきとの指摘があるが、この点に関しては、所定の社員の数を満たすため、監査品質の向上を伴わない形式だけの合併を招く懸念があるとの指摘もあり、上場会社の監査を行う監査法人への規律付けの観点として適切であるかなお慎重な検討が必要と考えられる。」

(監査法人のマネジメント/ガバナンス)

「今後の取組みとして、例えば、上場会社の監査を行う全ての監査法人に対して、「監査法人のガバナンス・コード」の受け入れや、業務運営上の KPI等の情報開示の充実を求めることなどについて検討されるべきである。」

「中小監査法人においてもコードの受け入れが進むよう、コードがコンプライ・オア・エクスプレインの手法によることを再確認することに加えて、必要に応じて、コードの適用に当たっての指針の整備等を行うとともに、コードの受け入れに際しての課題について日本公認会計士協会が相談に応じることなどが検討されるべきである。」

「「監査法人のガバナンス・コード」は、2017 年 3 月の策定時から内容が見直されていないが、策定時からの受入状況・取組状況等を踏まえ、必要に応じて、改訂すべき点がないか検討することが必要である。」

2.「第三者の眼」によるチェック機能の発揮

「公認会計士・監査審査会の検査において、業務の運営の状況の検証に際し、虚偽証明に係る監査手続についても検証を行えるようにするとともに、監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用状況に応じたモニタリングの実施方法について継続的に検討していく必要がある。」

「品質管理レビューと審査会検査が全体として最大限の効果を発揮するという観点から、両者の役割やそれを踏まえた深度ある連携等に関して日本公認会計士協会と公認会計士・監査審査会との間で継続的に議論が行われることも重要である。」

「監査法人の独立性の確保を徹底する観点から監査法人自体を一定期間ごとに交代させる「ローテーション制度」の導入については、...日本公認会計士協会において、報酬依存度に基づく新たなルールの導入等を内容とする倫理規則の改訂に向けた作業が行われていることを踏まえ、このルールが監査人の交代に与える影響も見極めながら、引き続き検討されるべきである。」

公認会計士の能力発揮・能力向上

1.公認会計士の能力発揮

(1)女性活躍の進展等を踏まえた環境整備

「監査人の独立性を確保するための、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限について、監査人の独立性は引き続き確保しながらも、女性活躍の観点も踏まえ、能力ある公認会計士にその能力に見合った活躍の機会を確保できるよう見直すべき点はないか検討される必要がある。」

(2)いわゆる組織内会計士向けの指導・支援

公認会計士登録上の組織内会計士の位置づけを明確にするなど、組織内会計士向けの指導・支援がどのように行き届くようにするかを検討すべきである。」

2.公認会計士の能力向上

「公認会計士としての知識の習得や自己研鑽の機会として、公認会計士試験、公認会計士登録を行う前に修めることが求められる実務補習、公認会計士登録後に継続して履修することが求められる継続的専門研修(CPE)などが挙げられるが、これらが系統だった適切な能力開発の機会となるよう、内容や実施方法について見直しが必要である。」

「CPE を長期に受講しない等、CPE の受講義務を適切に履行しない者に対しては、公認会計士の登録を取り消すことも含め、厳格に対応することが求められる。」

公認会計士試験制度の在り方については、公認会計士が担う役割の広がりや監査を取り巻く環境の変化を踏まえ、公認会計士に求められるべき資質に関する議論が尽くされる必要があり、中長期的な目線で継続的に検討を行う必要がある。」

その他の論点

1.高品質な会計監査を実施するための環境整備

内部統制報告制度の在り方について、まずは内部統制の整備・運用状況について分析を行った上で、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論の進展も踏まえながら、必要に応じて、内部統制の実効性向上に向けた議論を進めることが必要である。」

2.その他

「その他、本懇談会では、

・ 公認会計士の業務が拡大しており、個々の業務の公認会計士法上の位置づけについて中長期的に整理すべきではないか

・ 上場企業以外の有価証券報告書提出会社における中間財務諸表・中間監査に非常に手間がかかっており、見直しの議論をすべきではないか

会社法と金融商品取引法の財務報告について、法体系としての一元化を考えるなど、企業の情報開示については、投資者の投資判断に必要な情報が、適時に、信頼できる形で開示されることを確保する観点から効果的なものとなるよう、その在り方を検討する必要があるのではないか

等の指摘もなされた。」

今後どのように具体化していくのかにもよりますが、上場会社監査事務所登録制度見直しなど、上場会社を監査している中小監査事務所に、それなりの影響が生じる制度改正が行われるのでしょう。

大手監査法人に影響が出そうな項目は、「監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限」見直し検討ぐらいでしょうか。制限を緩和する方向への見直しでしょうから、実現した場合には、むしろ、大手には有利となります。中小はクライアントが少ない(したがって制限のかかる役員も少ない)のでほとんど影響はないでしょう。
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