LED架空取引、5被告に無罪判決 東京地裁「詐欺でなく循環取引」
「広告代理店「電通」の子会社「電通ワークス(DW)」に発光ダイオード(LED)照明の架空取引を持ちかけ、前渡し金計約56億円を騙し取るなどしたとして、6件の詐欺罪に問われたLED販売会社「ワールド・ワイド・エンジニアリング」の元実質経営者、津田悦資(えつじ)被告(65)ら5人の判決公判が16日、東京地裁で開かれた。江見健一裁判長は「詐欺ではなかった」と認定し、5人をいずれも無罪とした。
江見裁判長は「DW側の担当者も、取引が実際に商品を納入する『実取引』ではなく、実績作りのために取引があったかのように装って関係企業間で資金を環流させる『循環取引』だと認識していた」と指摘したうえで、「DWの担当者は、循環取引を認めると自身や会社の責任が追及される恐れがあった。虚偽の供述をする動機が十分にあり、『実取引だと思っていた』などとの供述は信用できない」と判断した。」
循環取引は虚偽記載につながるものであり、循環取引をやっていた会社の財務諸表を信頼して損失が生じた投資家がいれば、純粋な被害者といえますが、循環取引をやっている当事者間では、だれもが、なにがしかの不正な意図をもってやっていることが多く、その場合は、だれが加害者でだれが被害者なのかを、明確に区別することは難しいのかもしれません。
この事件ではだまされたとされていた電通ワークス側は、循環取引であることを認識していたわけですから、電通ワークスも共犯者であり、この循環取引で虚偽記載が生じていた場合には、同社やその親会社である電通は、責任を取る必要があると思われますが、問題になったという話はないようです。
(金融庁は調査したのでしょうか。)
商工ローン「SFCG」元社長に全面無罪判決 東京高裁(朝日)
これは一審判決ですでに実質無罪だったものが、控訴審で全面無罪となったものです。
「商工ローン大手「SFCG」(旧商工ファンド)の破綻(はたん)直前に多額の資産が流出したとされる事件で、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪に問われた元社長の大島健伸被告(68)の控訴審判決が28日、東京高裁であった。朝山芳史裁判長は、懲役1年6カ月執行猶予3年とした一審・東京地裁判決を破棄し、全面無罪とした。
2014年4月の一審・東京地裁判決は、SFCGが保有する約418億円の債権を親族が代表を務める不動産会社に実質的に無償譲渡した会社法違反などについて、無罪とした。一方で、うその内容を登記した罪については有罪と判断した。
朝山裁判長は「一審が有罪の根拠とした会社関係者の証言は、客観的事実と整合していない」と指摘。「被告が虚偽の登記申請を指示したと認めるには、合理的な疑いが残る」と述べた。」
一審判決時の記事。
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SFCG資産流出、元会長に実質無罪 東京地裁判決(日経)
「公判では資産を譲渡した時点で倒産の恐れがあったかや、資産譲渡に自己の利益を図る目的があったかなどが主な争点だった。
公判で検察側は「大島被告は資産譲渡前に倒産の恐れを認識していた」と指摘した上で、譲渡が実質的に無償で被告が「早くしろ」などと部下に指示をしていたと主張。「すべて部下がやったとの主張は自己中心的で、被告が関与していたのは明らか」として懲役8年を求めた。
一方、弁護側は一貫して無罪を主張。「SFCGは当時、危機的状況になく、債権譲渡額も客観的に適正だった。検察は現実の経済や経営を無視している」と反論し、大島被告も意見陳述で「刑事責任を問われるようなことはしていない」と主張した。」
無罪になったとはいえ、相当あやしい関連当事者取引ばかりです。同社は、取引が行われた当時、まがりなりにも上場会社だったわけですが、ガバナンスはほとんど機能していなかったのでしょう。
当サイトの関連記事(SFCG元社長ら逮捕について)(2010年6月)(記事へのリンクは切れています。)
こちらは当局が摘発した例ではなく民事裁判の記事です。
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みずほ銀の調査「相当」 暴力団融資保証巡る差し戻し審(朝日)
「みずほ銀行の融資先が、後になって暴力団組員が代表取締役の会社と分かり、東京信用保証協会が融資の焦げ付き分を保証すべきかが争われた訴訟の差し戻し後の控訴審判決が14日、東京高裁であった。綿引万里子裁判長は「みずほ銀行は反社会的勢力かどうかを相当な方法で調査をしていた」と述べ、協会が保証するべきケースと判断した。」
「差し戻し審で協会側は、「みずほ銀行は十分な調査をせず、反社会的勢力であることを見逃した」と主張したが、判決はみずほ銀行の調査について「グループ会社で得た情報に、捜査機関など外部から得た情報もあわせてデータベースを構築し、融資の際に照会していた」と認定。「調査方法として相当だった」と認めた。」
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