会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日産 不記載の“ゴーン前会長報酬”91億円余を決算計上へ(NHKより)

日産 不記載の“ゴーン前会長報酬”91億円余を決算計上へ

日産自動車が、計上が漏れていて有価証券報告書虚偽記載だとされているゴーン氏の追加報酬91億円余りを今年度の決算にまとめて計上する方針を固めたという記事。

「日産のカルロス・ゴーン前会長はみずからの報酬を有価証券報告書に平成26年度までの5年間、48億円余り少なく記載したとして金融商品取引法違反の罪で起訴されたほか、直近の3年間についても42億円余り少なく記載したとして、追起訴されています。

また、この事件では法人としての日産も起訴されています。関係者によりますとこの事件を受けて、日産は、ゴーン前会長の報酬を確定するとして、来週発表する今年度の第3四半期決算に合わせて91億円余りをまとめて計上する方針を固めたことがわかりました。」

「ゴーン前会長は、この91億円余りについて、報酬として正式には決まっていなかったと主張していて、日産と主張が対立することになります。」

過年度の有価証券報告書の訂正も行うそうです。

ゴーン氏は、追加報酬を受け取りたいという願望を持っていて、いろいろな書類をつくっていたことは認めているようですが、取締役会などの承認前であり、法律的に効力があるものではない(したがって、会社の費用ではないし、役員報酬の開示も不要)という趣旨の主張を行っています。

「日産は、内部調査の結果を踏まえてゴーン前会長に損害賠償を請求する方向で、今回、新たに計上する報酬の扱いについては今後、さらに検討する見通しです。」

主張は対立しているとはいえ、ゴーン氏は追加報酬は法的に効力がない(したがって、もらえなくてもしかたがない)といっていて、日産側もゴーン氏には払いたくないでしょう。その意味では、両者の考え方は一致しています。その一致した考え方にそって会計処理すると、費用・負債計上は不要(ゴーン氏も日産も虚偽記載に関しては無罪)ということになるはずです。

費用・負債計上したとしても、損害賠償を請求するから、結果的に払わないということを会社は狙っているのかもしれませんが、それは91億円以上の損害を証明できてはじめて可能になるわけで、それよりは、ゴーン氏に対する報酬の負債はないというところから出発して、損害分をそのまま請求する方が、会社にとっては有利でしょう。

なぜ、わざわざ自社に不利になるような会計処理(しかも理屈からいっておかしい処理)を行うのか、不思議です。

いずれにしても、決算発表の際に、会社がどういう説明をするのかが注目されます。開示不正で摘発されているわけですから、何も説明しないという選択肢はありません。

日産、ゴーン被告の報酬凍結へ 90億円を決算計上(共同)

「約90億円分を確定報酬分として近く決算に計上するが、ゴーン被告の報酬過少申告の事件を巡る司法判断や、日産が検討しているゴーン被告への損害賠償請求をにらみ実際の支給は見送る。

関係者は「ゴーン被告が絡んだ不正の総額は、確定報酬額を上回る可能性がある」との見方を示した。」

会社の適時開示。91億円については特にふれていません。

日産自動車、臨時株主総会開催を決議(日産自動車)(PDFファイル)

コメント一覧

kaikeinews
税務のことは考えませんでしたが、たぶん有税処理でしょうね。税効果も計上できるかどうか...
高額な報酬なので、仮に支払われたとしても、損金にできないかもしれませんし(永久差異扱い)、一時差異だとしても、報道によれば、会社は支払う気がないわけですから、いつまでたっても損金にできず、繰延税金資産の回収可能性が不明だということになりそうです。

また、ゴーン氏を追放できたのは、特捜部のおかげですから、その筋書きに乗らざるを得ないのでしょう。そうでないと、裏切りとみなされて、みせしめに西川社長まで逮捕される可能性があります。

本当は、自分たちでガバナンスを発揮して、ゴーン氏の責任を問えばよかったのです。ゴーン氏は大株主でも何でもなく、単なるお雇い経営者ですから、ゴーン氏ら以外の取締役・監査役が十分対抗できたはずです。
JUN
2018年度の役員報酬、もしくは過年度の役員報酬として財務会計上、費用計上して、支払いは凍結して未払金とすると言うことなのでしょうか?
その場合、税務上損金計上できるのか、疑問が残ります。
支払う気のないのに、費用計上することは問題が大きいので、基本的に支払う前提で計上し、別に損害賠償請求を考えているのかもしれませんが、ゴーン氏の言うように確定した報酬ではないとした方がメリットが大きいのに、検察の筋書きに合わせて費用計上するとしたら問題が大きいですよね。
ステークホルダー無視も甚だしいと思います。
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