企業会計基準委員会は、リサーチ・ペーパー第2号「のれん及び減損に関する定量的調査」を公表しました。
国際会計基準審議会(IASB)の依頼を受け、当委員会スタッフが欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)スタッフと協力して行った調査です。
「各国の会計基準設定主体による、のれんの会計処理に関する技術的及び概念的な議論を促進すること」を目的としています。英文が原文で、和文は仮訳となっています。
この調査では、2005年から2014年までの期間における米国、欧州、日本及び豪州における4つの主要な株価指数を構成する会社(一部を除く)1,069社を対象としています。
調査項目は...
・株価指数別ののれんの金額及び1社当たりののれんの金額の推移
・純資産に対するのれんの割合及び時価総額に対するのれんの割合の推移
・時価総額をのれん、のれん控除後の純資産、未認識の価値に分解した場合の推移
・減損と株価指数のポイント又は価格との比較の推移、及び前年末ののれんの金額に対する減損(該当がある場合、償却を含む)損失の割合の推移
・業種別の1社当たりののれん金額、及び純資産に対するのれんの割合(2014年のみ)
「主な調査結果」より(一部)。
・米国と欧州の株価指数が、純資産に対するのれんの割合(2005 年から 2014年の米国の平均が 33%、欧州の平均が 31%)と時価総額に対するのれんの割合(2005 年から 2014 年の米国の平均が 15%、欧州の平均が 19%)について、一貫して高い割合を示していた。
・2014 年の株価指数を構成する個々の会社を見た場合、米国の株価指数を構成する 32%の会社、欧州の株価指数を構成する 25%の会社において、のれんの金額がその会社の純資産の 50%を超えていた。さらに、米国の株価指数を構成する 14%の会社、欧州の株価指数を構成する 11%の会社において、のれんの金額が、その会社の純資産の 100%を超えていた。少数の米国、欧州及び豪州の会社において、のれんの金額がその会社の時価総額の 100%を超えていた。
・のれんの減損と株価指数の相関を分析した結果、明確な時間差は観察されなかった。
・前年末ののれんの金額を当期ののれんの費用化額(すなわち、減損又は償却のいずれかによる)で除すると、2005 年から 2014 年までの米国の株価指数では 82 年、欧州の株価指数では 37 年、日本の株価指数では 9 年、そして豪州の株価指数では 34 年となった。
純資産に対しても、時価総額に対しても、のれんの金額は相当高い割合になっている、費用化される年数も長い(なかなかなくならない)(特に米国、欧州では)ということのようです。(日本の費用化年数が短いのは、のれん要償却という会計基準の影響はもちろんあるのでしょうが、リーマンショックの時期を挟んでいて、減損が多かったという要因はないのでしょうか。)
「減損と株価指数の相関」に関しては、どういうことがいえるのかはよくわかりません。株価指数に連動しているのであれば、(常識どおりですが)減損処理には意味があるということでしょうか。
最近の「企業会計基準委員会」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事