金融庁の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」の第1回会議が7月15日に開催され、会議資料が公開されています。
資料によると、監査法人のガバナンス・コード(Audit Firmのことを監査法人と訳しています)は、英国とオランダで導入されているそうです。英国では当局と会計士協会、オランダでは会計士協会が設定主体となっており、そもそも、金融庁だけで作る予定となっている日本と設定主体が違っています。コードの遵守状況は、オランダの場合会計士協会がモニタリングするそうです(英国は当局)。また、コードを適用しているのは英国が8事務所(自主適用含む)、オランダが9事務所にすぎません。
両国のガバナンスコードの概要(資料3)が紹介されているので、たぶんこれらを参考にして作るのでしょう。
これを作って、どういうふうに使うかですが、監査事務所が自らガバナンス構築に用いるほか、どちらのコードも外部への報告という項目があるので、外部への開示の指針となるのでしょう。
また、金融庁検査にも使われるのでしょう(そうでなければ金融庁で作る意味はない)。監査基準や監査品質に関しては、ルールに従ってきちんとやっていれば文句をいわれないはずですが、いくらでも難癖をつけることができるガバナンスやマネジメントまで検査対象となれば、ますます金融庁に頭が上がらなくなり、組織としての自律性を失っていくおそれがありそうです。
少し具体的なコード策定の意義(論点)も列挙されています(資料4)。
1.最近の事案における問題点
2.監査法人における近時の取組みの評価
3.パートナー制と実態の乖離
4.乖離を埋めるコード策定の必要性
5.監査法人の組織的な特性
6.経営陣のマネジメントの知見の重要性
7.人材啓発・人事評価
8.マネジメント・ガバナンス機能強化、透明性の向上
9.監査の担い手の多様化との関係
1の「最近の事案」というのは東芝事案のことで、「単なる会計士個人の力量や審査態勢、品質管理態勢の問題だけでなく、監査法人のマネジメントの問題と捉えるべきとの指摘について、どのように考えるか」といっています。
「監査法人における近時の取組み」については、4大監査法人の例が示されています(資料3)。例えば、外部の識者を入れた組織を作るということは、新日本とあずさでやっているようです。
細かい話ですが、7の「人材啓発」という言葉は「会計監査の在り方に関する懇談会」提言にも出てきますが、グーグルで調べても、そういう言葉は見つかりません。「人材開発」の間違いでしょうか。
いずれにしても、人が余るとリストラし、ダインピング受注に走り、人が足りないと無資格者を甘い言葉でかき集めて員数あわせをするというのでは、長期的な人材開発(人材啓発?)にはマイナスでしょう。「監査法人の経営陣にはマネジメントの経験が豊富な者が必ずしも多くないとの指摘」(上記6より)も出て来ます。
マネジメントやガバナンスではなく、スキルのレベルの話ですが、米PwCの人材開発を取り上げた記事。career progression frameworkというのがあるそうです。
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Nurturing the human element(JofA)
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