日本公認会計士協会は、監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」を、2019年7月18日付で公表しました。
監査基準改訂(2018年)や監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」等の公表による新しい監査報告書の実務の定着を支援するための、より具体的な解説を提供するQ&Aとのことです。
監査報告書全般のQ&Aが7件、監査上の主要な検討事項(KAM)関係のQ&Aが20件示されています。
Q&Aの項目は以下のとおりです(目次より)。
1. 監査報告書全般のQ&A
1 従来の監査報告書と新しい監査報告書の変更点及び共通点
2 監査報告書における監査役等の財務報告に関する責任の記載
3 監基報700 と ISA700 に基づく監査報告書の記載内容の差異
4 日本の監査の基準に基づいて英文で監査報告書を作成する場合の留意点
5 監査事務所の所在地の記載
6 除外事項の重要性と広範性及び除外事項の記載上の留意点
7 継続企業の前提に関する注記又は開示の検討における変更点
2. 監査上の主要な検討事項関係のQ&A
1 監査上の主要な検討事項の適用範囲
2 監査上の主要な検討事項の決定プロセス
3 監査上の主要な検討事項と特別な検討を必要とするリスク
4 監査上の主要な検討事項と内部統制の重要な不備
5 監査上の主要な検討事項と未修正の虚偽表示
6 監査上の主要な検討事項がない状況
7 監査上の主要な検討事項の個数及び記載量
8 個別財務諸表の監査上の主要な検討事項
9 監査上の主要な検討事項における固有の情報の記載
10 監査上の主要な検討事項の経年比較
11 監査上の主要な検討事項の記載順序
12 監査人が行った手続の結果や監査人の主要な見解の記載
13 監査上の主要な検討事項における専門家又は構成単位の監査人への言及
14 会社に対する財務諸表における注記の拡充の要請
15 会社の未公表情報の記述と監査人の守秘義務との関係
16 監査上の主要な検討事項を監査報告書において報告しない場合
17 訂正監査報告書における監査上の主要な検討事項の取扱い
18 監査スケジュールや監査役等とのコミュニケーションにおける留意点
19 株主総会における対応
20 監査上の主要な検討事項の監査人の法的責任に及ぼす影響
いっしょに公表された「公開草案に対するコメントの概要及び対応について」をみると、公開草案から見直している箇所も相当数あるようです。
目次も含め、全部で60ページの報告書となっています。
(メインのKAMに関する事項ではありませんが、公開草案のときに当サイトでふれた外国語の監査報告書の場合の社員の自署・押印について、コメント対応表では、「公認会計士法等の法令により、業務執行社員の自署・押印が求められていることから、 日本の監査の基準に基づく監査を実施する場合は、言語によらず、業務執行社員の署名・押印をもって当該要求事項を満たしたものとして扱う」としつつ、「実務的な影響を勘案し、会社が広く頒布する監査報告書においては自署・押印を省略可能としています」とのことです。理屈になっていないような...。
報告書本文では以下のようになっており、従来どおり、社員の署名は省略でもよいように読めます。
「なお、会社のウェブサイト又は印刷物などにより年次報告書を広く一般に提供する場合は、業務執行社員の署名、押印、又は法人名の署名のいずれかを省略したり、記名のみの監査報告書とすることができる。記名のみの監査報告書が許容されるとした背景には、我が国において株主への招集通知や EDINET に含まれる日本語の監査報告書は署名を付さない実務が定着していること、及び海外企業のウェブサイトに掲載されている年次報告書に含まれる監査報告書に署名(のコピー)がなく記名のみの報告書も散見されることなどがある。」(Q1-4より)
自署か記名かという問題と、業務執行社員の氏名(自署であれ記名であれ)を記載する必要があるかという問題があるはずです。本来は、監査報告書原本で氏名が署名されていれば、そのコピーである記名版でも記載すべきでしょう。)
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