企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が6月30日に開催され、IFRS導入に関する議論が再開しました。
報道等によると、IFRS反対派から以下のような多数の新委員が企画調整部会に送り込まれたようです。
伊地知隆彦・トヨタ自動車専務
逢見直人・日本労働組合総連合会副事務局長
大竹健一郎・TKC全国会会長
加護野忠男・甲南大学特別客員教授
河崎照行・甲南大学会計大学院長
佐藤行弘・三菱電機常任顧問
鈴木行生・日本ベル投資研究所代表取締役
谷口進一・新日本製鉄副社長
廣瀬博・住友化学工業副会長
和地孝・テルモ名誉会長
金融庁ホームページによると、会議では以下のような資料が配布されています。基本的に、IFRS反対派側の資料や、反対の根拠のひとつとなっている米国の動向の説明資料です。
・自見金融担当大臣談話「IFRS適用に関する検討について」(2011年 6月21日)
・米国の状況
・「単体財務諸表に関する検討会議」報告書(2011年4月28日)
・産業界の「我が国のIFRS対応に関する要望」(2011年5月25日)
・連合の「2012年度 連合の重点政策」(抄)(2011年6月30日)
・経団連の「国際会計基準(IFRS)の適用に関する早期検討を求める」 (2011年6月29日)
・自見庄三郎大臣提案検討事項
ちなみに、「我が国のIFRS対応に関する要望」の賛同企業・ 団体は以下のとおりそうそうたる企業・団体ばかりです。
新日本製鐵、JFEホールディングス、住友金属工業、トヨタ自動車、パナソニック、日立製作所、東芝、三菱電機、三菱重工業、IHI、キヤノン、旭化成、三菱ケミカルホールディングス、三菱UFJリース、三菱地所、JXホールディングス、ニコン、セブン&アイ・ホールディングス、リコー、東海ゴム工業、愛知産業、日本商工会議所
配布資料の最後の「検討事項」では以下のような項目を挙げています。
「IFRS適用の検討に際し、さまざまな立場からの総合的な成熟された議論がされることに加え、中間報告等において議論されてきたもののうち関わりの深いものとして更なる検討を求める事項
1.強制適用の判断にあたって、国内の任意適用の状況等、中間報告において要検討とされた事項について
2.今後予定される開発費やのれんの基準開発についてのASBJでの活動が今般の内外情勢の変化を踏まえたものとなっていくよう、今後のコンバージエンスの方向性、あり方について
3.税法等との関わり、日本基準の位置づけ、単体開示のあり方を踏まえた 「連結先行」の考えの見直しについて
4.会計基準適用の前提となる多様な資本市場のあり方、単体開示の廃止といった制度に関わる論点について」
IFRS適用だけでなく、ASBJが進めているコンバージェンスを目標とする日本基準の改正作業にも、ストップをかけるということなのかもしれません。また、「連結先行」ではなく「連単分離」も検討するということでしょう。さらに、「多様な資本市場」ということだと、上場会社すべてにIFRSを適用するのではなく、規模などにより市場を分けて、特定の市場に上場している会社にのみ適用することを考えているのかもしれません。
「中間報告を見直すべきか」、企業会計審議会がIFRS強制適用に関する議論再開(ITpro)
2年前に逆戻りしたIFRS議論――大幅増員した審議会で結論は?(@IT)
「IFRS適用、5~7年の準備期間に多くの委員が賛成」、金融相(@IT)
前代未聞の審議会で打ち出したIFRS導入先送りの「論理」。これで国益は守れるのか?(磯山友幸のブログ)
「推進派の藤沼亜起・元日本公認会計士協会会長や、国際派の柴田拓美・野村ホールディングCOOは欠席だった。東証自主規制機関(財務次官OBの林正和氏がトップ)の会議とバッティングして止む無く欠席した藤沼氏は「意見書」を出したが、事務局は無視し、提出の事実すら明らかにしなかった。」
反対派の意見を読むと、IFRSが嫌いというだけでなく、すでに日本基準に導入済みの、金融商品会計、企業結合会計、退職給付会計なども、気に入らないようです。また、いまどき「税務を尊重した会計基準作りが必要」などといっている学者の委員もいて、これで本当に議論がまとまるのか不安になります。
(補足)
会議の冒頭での大臣挨拶の全文が金融庁のサイトに掲載されていたのを見落としていました。
企業会計審議会総会, 企画調整部会合同会議6/30/2011 自見大臣冒頭あいさつ(PDFファイル)
今後の検討方針の箇所を紹介します。
「まず、 国内の任意適用の状況等、 中間報告において要検討とされた事項の検証をしっかり行っていただきたいと考えております。また、問題はここに留まりません。次に、これも中間報告で示された内容ですが、今後のコンパージェンスのあり方についてはIFRSの適用の話と密接に関わります。今後予定される開発費やのれんの基準開発等、会計基準委員会 (ASBJ)での活動が今般の内外情勢の変化を踏まえたものとなっていくよう、 ASBJの活動に委ねるのではなく、この審議会でコンバージエンスの方向性をしっかりと議論をしていただきたいと考えております。また、税法等との関わり、日本基準の位置づけ、単体開示のあり方を踏まえ、「連結先行」の考えも見直さざるを得ないタイミングに来ているものと考えております。さらに、会計基準適用の前提となる多様な資本市場のあり方、単体開示の廃止といった制度に関わる論点もご議論頂くようお願いします。
審議会のこれまでの取組にとらわれず、目本経済が心底元気になるように自由で活発な議論をお願いする次第です。 」
最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事