MBOにおける少数株主保護のあり方の議論が再燃しているという記事。昨年の最高裁の決定が議論となっています。
「MBOでの株式買い取り価格の妥当性は長年議論されてきた。買い取り価格は通常、株価にプレミアムが上乗せされる。ただ経営者が買収者の立場を兼ねるため、買収額を低く抑えようとする懸念は拭いきれない。経営陣と株主の利益相反が構造的に存在する。過去の裁判では買い取り価格を引き上げた判例も多い。
この点で今後、大きく影響しそうなのが昨年7月の最高裁決定だ。問題となったのは住友商事などによる2013年のジュピターテレコムのTOB。買い付けに応じなかった株主から強制的に株式を買い取る価格をTOBと同額に設定したところ、株主側が「TOB公表後の株価上昇を反映していない」と訴えた。
最高裁は同額が妥当としたうえで、利益相反関係があっても「一般に公正と認められる手続き」によりTOBが実施された場合、TOB価格は関係者の利害が適切に調整されたものであるとの判断を示した。さらに買い取り価格を独自に算定することは「裁判所の裁量を超えている」とした。
利益相反が存在する点はMBOも同じだ。MBOに関する裁判を複数争ってきた個人投資家の山口三尊氏は「状況が一変した。株式が不当に安く買い取られるリスクが高まった」と不満を示す。
証券訴訟に詳しい清原健弁護士は「国内外の投資家に対し、日本の裁判所は手続きしか確認しないと宣言したことになる」と指摘。「裁判所が少数株主の利益を守ってくれるという信頼感が損なわれ、投資先としての日本の魅力を失いかねない」と危惧する。」
MBOを行った企業の再上場については...
「現行の審査に加え、一律の規制を設けるべきだとの意見もある。東証の諮問機関である上場制度整備懇談会は2015年末から16年にかけて、MBO後の一定期間は再上場を認めないとする規制の導入を検討した。ところが「経営改革が順調に進んだ会社ほど早期に再上場できるはずだ」との意見があり、見送った。
これに対し早稲田大学大学院の黒沼悦郎教授は「MBOで退場する企業に取引所は何の制裁もできない」と指摘。「少数株主への配慮に欠けたMBOをけん制するためにも再上場まで一定期間を設ける規制は必要だ」と話す。」
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