会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

汚職まみれの中国企業を次々に暴く「カラ売りファンド」という殺し屋の正体(プレジデントより)

汚職まみれの中国企業を次々に暴く「カラ売りファンド」という殺し屋の正体

カラ売りファンド、マディ・ウォーターズの調査方法を紹介した記事。

サイノ・フォレストという会社を調べたときの様子を詳しく述べています。

「サイノ・フォレストは、裏口上場によってカナダのトロント証券取引所に上場していた香港の会社で、中国で商業植林事業を行っていた。売り上げは主に紙などの原料になる木材チップの販売で、ピーク時の株式時価総額は約60億カナダドル(約5222億円=2011年4月4日)に達していた。

2011年6月2日、マディ・ウォーターズは、「サイノ・フォレストは資産と売り上げを不正に膨らませている。同社の資金調達は何十億ドルものネズミ講だ」という39ページに及ぶ売り推奨レポートを発表した。レポートは同社が関係会社と循環取引(売買の相互発注)を行って、売り上げや利益をかさ上げしていることを証拠資料とともに示した。これにより20カナダドル前後だった同社の株価は3週間後には2カナダドル前後まで暴落した。」

会社は、独立調査委員会を設置し、PwCに調査を委嘱するなどしましたが、結局、会社は破綻、経営者は逃亡、カナダの監督当局は不正を認定したのだそうです。

調査の方法は...

「サイノ・フォレストをカラ売りする際、マディ・ウォーターズは、法律・金融・製造業などの専門知識のある10人のチームにほぼフルタイムで2カ月以上も現地調査をさせ、関係機関や取引先への聞き取り、1万ページ以上の関係文書のチェックなどを行った。

チームは、サイノ・フォレスト社が高収益を上げていると宣伝していた広東省雷州市の合弁企業のパートナーである同市の林業局を訪問し、サイノ・フォレスト社が出資金を払い込んでいないため、合弁が解消されている事実を突き止めた。また同社が主要取引相手としている5つの会社を実際に訪問し、そのうち29億ドル(約2348億円)の取引をしたという4社には実態がなく、唯一実態がある会社も、吹けば飛ぶような中小企業で、巨額の材木取引はできないことを明らかにした。

またサイノ・フォレストは2010年に中国雲南省臨滄市で2億3100万ドルの広葉樹の立木を売ったとしていたが、臨滄市林業局を訪問して事実関係を確認し、その販売量は中央政府が臨滄市に割り当てた切り出し量の6年分で、輸送のためには片側一車線の山道を5万台以上のトラックを走らせる必要があり、あり得ないことであると喝破した。」

日本の監査法人も見習うべきかもしれません。(普通は、こういう反面調査的なことまではやりませんが、いざとなったら、ここまでやるぞと会社に思わせる必要はあるでしょう。)

日本企業にも目をつけましたが、空振りに終わったようです。

「日本において、マディ・ウォーターズが中国ほど目覚ましい成績を上げられていないのは、中国企業(特に裏口上場で米国に上場したような会社)のような極端な不正会計が少なく、また同ファンドが優秀な日本人アナリストや情報ネットワークを獲得できていないためと思われる。」

カラ売りファンドは、「会社の内部情報を使うと、インサイダー取引になるので、有価証券報告書や統計など、公になっている情報を徹底的に分析」するのだそうです。監査法人は、会社の内部情報を使えるので、はるかに有利なのでしょう。ただし、会社に内部情報を操作されるところっとだまされるおそれもあります。
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