三井物産などが出資している「サハリン2」が、ロシア政府に事実上接収されるという記事。
「ロシアのプーチン大統領は6月30日、日本の商社が参加する極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に関し、ロシアが新設する会社に移管し、現在の事業会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令に署名した。事実上、ロシア政府が接収するもので、ウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁への報復とみられる。日本企業が事業を継続できるか不透明だ。」
「サハリン2の事業会社サハリンエナジーには、ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムが約50%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ出資。液化天然ガス(LNG)生産量の約6割が日本向けとなっている。」
有報を提出した後でよかった!?
焦点:サハリン2でロシアが揺さぶり、電力逼迫の日本に踏み絵(ロイター)
日本政府の情けないコメント。
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「サハリン2」、どけと言われてもどかない=萩生田経産相(ロイター)
「萩生田光一経産相は31日の参院予算委員会で、日ロ合弁の液化天然ガス(LNG)プロジェクト「サハリン2」について、「どけと言われてもどかない」と述べ、日本として権益を守る意向を改めて示した。 鈴木宗男委員(維)への答弁。」
【速報】サハリン2運営をロシア企業へ 岸田総理「すぐにLNG止まるものではないが、注視しなければならない」(TBS)
「ロシアのプーチン大統領が石油・天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」の運営の権利をロシアで新設する会社に引き渡す大統領令に署名したことについて、岸田総理は「すぐにLNGが止まるものではないと考えているが、大統領令に基づき契約内容がどのようなものを求められることになるのか、注視しなければならない」「事業者とも意思疎通を図って対応を考えていかなければならない」などと語りました。」
ウクライナで戦争が始まった時点でこうなることは見えていたのでは。
ロシア「大統領令」の衝撃、日本勢に強烈な難題
「サハリン2」プロジェクトに揺さぶりがかかった(東洋経済)(要無料登録)
「三井物産は2022年3月期の決算で、サハリン2を含むロシアLNG事業で資産評価減を806億円、減損損失209億円を計上した。三菱商事もサハリン2で500億円の評価減を計上している。
「仮にサハリン2事業が全損しても全体の投融資残高の規模から影響は限定的」(商社関係者)とみられるが、今後、伊藤忠商事・丸紅が間接出資する「サハリン1」や三井物産が参画する「アークティック2」といったプロジェクトの先行きも一気に不透明感が増した。」
ちなみに、三井物産の有報(2022年3月期)のKAMをみると、「ウクライナ情勢のロシアLNG事業への影響」が取り上げられており、その「監査上の対応」では以下のように記載されています。
「当監査法人は、ロシア向けLNG事業における投資・融資・保証残高の評価の妥当性を検討するため、主に以下の監査手続を実施した。
・ロシアに対する制裁措置の事業活動及び開発活動、並びに会社及び連結子会社による投資活動への影響を把握するため、複数の会社担当者や役職者に質問を実施し、関連する資料の閲覧を実施した。
・パートナー企業の撤退について、その時期や事業活動及び開発活動、並びに会社及び連結子会社による投資活動への影響を把握するため、複数の会社担当者や役職者に質問を実施し、関連する資料の閲覧を実施した。
・公正価値評価における評価技法、将来キャッシュ・フロー、及び割引率の合理性について検討するため、以下の内容のそれぞれについて内部専門家との協議を実施するとともに、適切に評価モデルに反映されていること及びその計算の妥当性を検証した。
評価技法:公正価値の見積りにおける出口価格の評価において、インカム・アプローチの現在価値技法を採用することの妥当性
将来キャッシュ・フロー及び割引率:将来キャッシュ・フロー又は割引率への不確実性の反映については、ロシアの一部銀行のSWIFTからの排除、パートナー企業の撤退方針、諸国によるロシア産の原油・天然ガス等の禁輸措置等に伴う事業活動及び開発活動への影響等が適切に考慮され、ロシア国の格付けの低下等の影響として割引率に適切に反映されていること
・融資及び保証に対する予想信用損失の見積りの合理性について検討するため、予想信用損失の評価技法の適切性及び見積りに上記の不確実性が適切に反映されていることを検証した。
・投資・融資・保証残高の評価の際に用いるロシア国の格付けの決定の妥当性を検討するため、内部専門家との協議を実施した。また、経営者の判断の前提となった情報の適切性、目的適合性及び信頼性を客観的に検討するため、外部公表情報との整合性の検証や関連する情報が網羅的に考慮されていることの検証を実施した。
・持分法投資の測定の妥当性及び持分法の適用により認識する損失の取り込み方法の妥当性の検討のため、関連する国際会計基準への準拠性の検証を実施した。
・なお、当連結会計年度末以後に発生した後発事象について、役職者に質問を実施し、関連する資料の閲覧を実施することで、連結財務諸表における修正又は開示の要否を検証した。
・連結財務諸表における、ロシアLNG事業のウクライナ情勢の影響に関する開示の妥当性及び十分性を検証した。」
監査人としてできることは限られているようです。ロシア政府側の動き(接収の可能性など)について、あまり検討していない点は、少し気になりますが...。
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