SMBC日興証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
金融庁の証券取引等監視委員会は、SMBC日興証券株式会社に対する検査結果に基づき、行政処分を行うことを勧告しました(2022年9月28日付)。
4つの指摘事項を挙げています。(1)については、法人や幹部らをすでに起訴しています。
⑴ 上場株式の相場を安定させる目的をもって、違法に買付け等を行う行為
「SMBC日興証券株式会社(以下「当社」という。)は、その業務に関し、10銘柄の上場株式について、「ブロックオファー」取引(以下「BO」という。)における売買価格の基準となるBO執行日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を一定程度に維持しようと企て、金融商品取引法施行令第20条に定めるところに違反し、各株式の相場を安定させる目的をもって、一連の指値による買付け及び買付けの申込み(以下「本件行為」という。)を行った。」
⑵ 売買審査態勢の不備
「本件行為が行われた10銘柄のうち、8銘柄については、システム(売買動向監視システム)においては、不公正取引の疑いがある取引として抽出されているが、当社が措置を行う基準は、複数日にわたって行われる取引を対象として設定されており、本件行為のように、銘柄ごとに1立会日のみで行われるような取引は、システムにより抽出されても措置の対象とならない。
また、当社においては、ブロックトレード等の特定のイベントに係る自己売買に対しては、システムによる抽出の有無にかかわらず、売買審査(以下「イベント審査」という。)を行っている。しかしながら、BOについては、自己売買で終値に関与するインセンティブが働くなど、ブロックトレード等と同様のリスクがあるにもかかわらず、イベント審査の対象としていない。」
⑶ BOに係る業務運営態勢の不備
「当社は、BOの執行に際し、買い手顧客に対して、事前に購入の意思の確認等を行っているが、その際、当社営業員の相当数は、BOの執行日について、買い手顧客が推知可能な内容の説明を行っている。このような状況は、BO執行日に空売りを企図する顧客に対し、その機会を与え、空売りを誘発する一因となっているものと認められる。
当社は、BO導入(平成24年)の検討段階から、買い手顧客におけるBO銘柄の空売りが当該銘柄の価格形成を歪めるものとの懸念を有していたが、BO執行日に係る買い手顧客への情報提供のあり方等について、当社内で適切に議論されることがないまま、BO業務を開始していた。
また、その後、当社においては、実際にBO執行日における対象銘柄の株価下落に直面し、価格形成に関する懸念など問題提起が行われているが、これに対する有効な対策が講じられてこなかった。」
⑷ 銀行と連携して行う業務の運営が不適切な状況
「当社は、親法人等である株式会社三井住友銀行(東京都千代田区、法人番号5010001008813、頭取CEO(代表取締役)髙島 誠、以下「三井住友銀行」という。)との間において、法人顧客から情報共有の停止を求められていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を複数回にわたって行い、これを当社内で共有していた。」
証券監視委、SMBC日興に行政処分勧告 相場操縦巡り(ロイター)
「 証券取引等監視委員会は28日、SMBC日興証券に対して、金融商品取引法違反(相場操縦)により行政処分を出すよう金融庁に勧告した。また、三井住友銀行との間でファイアウオール規制に反した情報共有も認められた、としている。」
「三井住友FGの責任について、監視委は「金融庁で対応を考える」としている。」
(社説)銀証間規制の緩和が問われる(日経)(記事冒頭のみ)
「グループ内の銀行と証券会社の間にもうけた「情報の壁」はやはり必要なのか。証券会社を傘下に置くメガバンクグループが金融当局に働きかけてきた、顧客情報の銀証間の共有制限を定めた「ファイアウオール規制」を緩和する正当性が問われかねない事態だ。」