会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

原発廃炉の会計制度見直し、6月中に有識者会合(日経より)

原発廃炉の会計制度見直し、6月中に有識者会合

経済産業省が、原子力発電所を廃止した場合の会計制度の見直しを議論する有識者会議設置を正式発表したという記事。

「経済産業省は4日、電力会社が原子力発電所を廃止した場合の会計制度の見直しを議論する有識者会議を6月中に発足させると正式発表した。老朽化した原子炉を廃止しやすくするために廃炉費用を電気料金に転嫁する仕組みなどを検討する。

有識者会議は一橋大学大学院商学研究科の山内弘隆教授が座長を務め、公認会計士や消費者団体の代表など計5人で構成する。」

「会計で焦点となるのは廃炉のための積立金と減価償却だ。電力会社は原発が一定以上の稼働率で40年運転するのを想定して廃炉費用を積み立てているが、40年未満で廃炉になれば積み立て不足が特別損失として一括計上される。有識者会議では損失を費用として10年程度に分割計上できるかどうかを検討する。

一方、40年未満で廃炉となれば減価償却が足りないため、多額の除却損も発生する。廃炉に必要な設備を資産と見なした上で、廃炉後も償却を続けられるようにすることも検討する。積立金や減価償却費をどこまで電気料金に転嫁できるかが争点となりそうだ。」

1.会計は企業の実態を表現するものですから、会計のルールを見直せばいいということではなく、費用・損失をだれがどのように負担するのかが先に決まって、それに従って、会計数値が決まるということであるはずです。記事を読む限り、経産省のやり方はすべてを会計制度に押し付けて、解決しようとしているようです。

2.有識者会議のメンバーを経産省のサイトでみると、座長の山内教授(会計ではなく経済政策が専門)のほか、東大教授(有名な会計学の先生)、大手監査法人の公認会計士、消費者代表みたいな人、もうひとりの東大教授(専門はわかりません)という構成です。「会計制度検証」という看板になっていますが、電気料金をまずどうするかという議論をするのでしょう。

3.「廃炉に必要な設備」の減価償却費は何のための費用かというと、廃炉のための費用ですから、「廃炉に必要な設備」を資産に残すのであれば、資産除去債務(あるいは引当金)がその分膨らむだけのことでしょう。「廃炉に必要な設備」と廃炉のための引当金をひとつのグループと考えると、グループとしての価値は変わらない(おそらく大きなマイナスの価値になる)わけですから、その資産・負債グループの中で「廃炉に必要な設備」の計上額を増やせば、引当金の金額を同額増やさないとつじつまが合いません。

4.常識的に考えれば、発電所資産はゼロ評価したうえで廃炉費用全額を引当て計上する(廃炉作業や廃棄物の保管は長期にわたるので割引現在価値にするか割り引かない金額にするかは議論の余地がある)、もし、発電所の一部施設を資産価値があるとして残すのであれば、その分は引当金を増やすということでしょう。そのうえで、将来の電気料金として確実に転嫁できる部分についてどうするかという議論になりますが、大口契約などは料金が自由化されているそうですから、転嫁できるのは一部分ではないでしょうか。経産省は廃炉に関する直接の会計処理と料金への転嫁の問題を分けないで検討したいのかもしれませんが、それは粉飾決算につながります。もちろん、東大教授が2人もワーキンググループに入っているので、常識を超えた秘策が出てくるのかもしれませんが。

廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループを設置します(経済産業省)

当サイトの関連記事

廃炉費用は誰が負担すべきなのか!? この本質的な議論を避け、将来の電気料金にツケを回そうとする経産省の腹積もり(現代ビジネス)

原発廃炉:迫る前倒し廃炉 月内に損失処理の見直し会議(毎日)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事