会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

暴力団員に金銭供与 東証プライム上場会社 社長ら役員報酬返納(NHKより)

暴力団員に金銭供与 東証プライム上場会社 社長ら役員報酬返納

三栄建築設計」(東証プライム)が、社長など3人の取締役の役員報酬の一部返納を発表したという記事。

暴力団員への金銭供与問題に関する経営責任を明確にするためとのことです。

「プライム市場は、上場企業に高いガバナンス水準を求める東証の最上位の市場ですが、この市場に上場する「三栄建築設計」の元社長が、長年にわたって暴力団員と関わりをもち金銭を供与していたとされる問題は、市場関係者に大きな衝撃を与えています。

この問題で会社は11日、元社長と暴力団員との関係に対して、適切な対応をとれなかった取締役の責任を明確にするため、千葉理恵社長が9月から役員報酬の30%を3か月間自主的に返納するなど、取締役3人が役員報酬を返納すると発表しました。」

記者会見を開かないことを批判的に書いています。

「会社は、元社長と暴力団員との長年にわたる関係性を指摘した、第三者委員会の調査結果を真摯に受け止めるとしていますが、現時点では、この結果を踏まえて記者会見を開く予定はないとしています。

その理由について、会社は「非常にデリケートな内容で、記者会見を開いてコメントすることは適切ではないと判断した」としています。」

会社のプレスリリース。

第三者委員会の提言を受けた再発防止策の策定等に関するお知らせ(PDFファイル)

「1.本件事案等の発生原因の概要
本件事案等の発生原因といたしましては、第三者委員会の調査報告を受けて、小池信三氏側の問題のほか、当社側にも以下の問題があったことを認識しております。
(1) 小池信三氏に対してものが言えない社内の風土
(2) 小池信三氏以外の役職員のコンプライアンス意識が不十分であったこと
(3) 社外役員に対する情報連携が不十分であったこと
(4) 反社チェック体制が不十分であったこと」

「4.当社取締役の責任について
本件事案の直接的な原因となった小池信三氏、併せて小池信三氏との従前の関係などに鑑み、当社経営に対する同氏の影響を排除するため、小池学氏及び吉野満氏については、それぞれ辞任しておりますが、現任の当社取締役につきましても、本件事案等の小池信三氏と規制対象者との関係性に対して適切な対応をとることができなかったこと、決算発表の延期、過年度の有価証券報告書、四半期報告書及び内部統制報告書の訂正等に至った今回の事態を厳粛に受け止め、責任を明確にするために、以下のとおり、各取締役につき役員報酬の一部を自主返上することの申し出がありましたので、お知らせいたします。」

有報等の訂正に関するプレスリリース。当サイトでは取り上げていませんでしたが、不動産物件の売却取引に関するもので、金額的にも大きな訂正のようです。元社長も絡んでいます。

過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出に関するお知らせ(8月16日)(PDFファイル)

「東京都公安委員会からの勧告に関連した警察当局からの捜査協力として、取引を精査している過程で、勧告の事実とは別に、過年度の一部の収益不動産の販売取引について、売上計上時期の適切性の検討を要する事象が発見されたことから、当社において本件取引について調査を実施した結果、売上計上の時期について不適切な会計処理がなされていることが発覚しましたので、当社の会計監査人である太陽有限責任監査法人と決算処理について協議を行い、過年度決算の訂正を行うこととしました。当該取引は、当時の代表取締役社長小池信三氏が、2018 年8月に、当時当社が保有していた収益不動産5物件について、合計約 32 億円で、販売先に対し口頭で、当該収益不動産は当社が責任をもって転売先を見つけ、売却する旨約しつつ、販売したところ、小池信三氏がかかる口頭合意の存在を、経理を担当する当社管理部門に秘していたため、当社管理部門は当該取引を当該口頭合意のない単純な売買契約と誤認し、2018 年8月に売上を計上したものであります。かかる口頭合意の存在する状況では、2018 年 8 月の販売先への販売の時点では、当社には、依然として当該収益不動産の転売先を見つけ、売却する義務が残っているため、財の移転が完全に移転したとはいえないため、実現主義の原則からは、2018 年8月の当社による販売の時点では売上を計上するのは適切ではなく、実際に販売責任を果たし(当社が転売先を見つけ、当該収益不動産を転売先に売却できたとき)、実現主義の原則の2要件である財の移転及び対価の授受を満たした(上記口頭合意を履行した)2019年 11 月時点で売上を計上すべきであったと判断し、過年度決算の訂正を行うこととしました。」

暴力団とのつきあいの問題についての少し詳しい記事。おなじみの八田教授もコメントしています。

プライム上場企業が暴力団員に利益供与の衝撃【経済コラム】

「第三者委員会の報告書によると、元社長と暴力団員との関係が始まったのは、遅くとも2000年。会社が暴力団員の自宅の設計や建築を請け負ったころにさかのぼります。

このころは、元社長と暴力団員の関係性を認識していた役職員が少なからず存在していたとのことですが、2006年の上場後は、暴力団員向けの業務がいわば特命案件となり、元社長と暴力団員との関係を知る人もかなり少なくなったということです。」

東証への批判。

「上場後も10年以上にわたって経営トップが暴力団員と関係を続けていたこと。そして、それを見抜けなかったことを東証は重く受け止める必要があります。」

「今回の問題は、プライム市場の信頼性を大きく損なうものです。それにもかかわらず、東証は、ことし6月に問題が発覚してからこれまでに再発防止や信頼回復に向けた対外的なメッセージを発していません。

ある市場関係者は、「これだけ長期にわたって暴力団との関係を許すなどガバナンス体制に問題があった企業が、本当にプライム市場の銘柄としてふさわしかったのか考えなければならない。暴力団とのつながりがないかをせめて役員だけでも詳しく調べる仕組みを東証などが検討すべきだ」と指摘しています。」

会社の対応(記者会見を開かないことなど)についての八田教授のコメント。

「青山学院大学 八田進二名誉教授

「会社は社会的公器でもあり、上場している以上、説明責任がある。第三者委員会の報告書について会社がどう受け止めたのか、今後会社はどうしていくのか、会見を開いて株主や従業員、取引先など広い範囲に対して説明すべきだ」」

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