会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(サクサホールディングス)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(10月7日)(PDFファイル)
(訂正)「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」の⼀部訂正について(10月9日)(PDFファイル)(訂正部分だけでなく公表版調査報告書の全文が含まれています。)

サクサホールディングス(東証1部)のプレスリリース。

同社は、連結⼦会社であるサクサシステムアメージングにおける不適切な会計処理に関わる疑義が判明し、2020年3月期有報などの提出も遅延していましたが、今回、調査を行っていた特別調査委員会の報告書を受領したとのことです。

約400ページもの大作です(目次だけで20ページほどある)。

この子会社だけでなく、サクサホールディングス本体やその他の子会社でもいろいろと不正があったようです。中国における不正贈答疑惑まで調べています。

連結決算への影響(不正による影響額と不正影響額と区分できない誤謬影響額のみ)




(画像クリックで拡大)

何か大きな不正が1つだけ行われていたというのではなく、いたるところでさまざまな不正が行われていたようです。

目次から、不正疑惑の項目名だけ挙げると...

・SSA 仕掛品不正計上疑義事案について

・SSA 架空取引疑義事案について

・SHD における不適切な決算調整
ア 販売目的ソフトウェアの期末一括償却対象の調整【引下げ方向】
イ 執行役員賞与引当金の過大計上【引下げ方向】
ウ 開発費の他勘定(仕掛品)振替額の調整【引下げ又は引上げ方向】
エ 棚卸資産の減損(評価損)金額の過大又は過少計上【引下げ又は引上げ方向】
オ 開発費売上の個別原価の過大計上【引下げ方向】
カ 製品保証引当金の過大計上【引下げ方向】
キ 販売目的ソフトウェアの減価償却開始時期の操作【引下げ方向】
ク 無形固定資産の未実現利益の過大消去【引上げ方向】
ケ STE における仕掛品調整を通じた連結損益の操作

・ソフトウェア開発における会計不正及び誤謬処理

・STE における不正な決算調整(仕掛品勘定の調整)

・SHD グループ間取引における架空の修理取引による売上計上等

・架空の資産計上疑義事案について

・SAX 及び SSA における不正な売上計上(スルー取引)

・SSA における不正な売上の前倒し計上

・SPR における不正な会計処理等

・COR における不正な会計処理

・X0 に関する不適切な会計処理

・中国における贈答行為

監査法人に対する隠蔽工作についてもふれています(報告書333ページ)。

「加えて、メールレビューの結果及び EY 監査法人へのヒアリング結果等によれば、SSA 及び SHD は、EY 監査法人の監査によって SSA 仕掛品不正計上疑義事案及びSSA 架空取引疑義事案が発覚することを避けるため、例えば、以下で列挙するような隠蔽工作を行っていたことが見受けられた。

・ SSA において、2016 年 11 月の第 3 回 SSA 取締役会議事録上、長期借入 342百万円の借入目的を「■■■開発超過原価返済資金に充当」と記載されていたところ、当該議事録を EY 監査法人に提出した場合、「超過原価」という表現が問題視されると考え、「■■■開発プロジェクト運用資金」に訂正した議事録を作り直した。

・ SSA は、2017 年 3 月末に■■■開発 PJ に係る仕掛品として 300 百万円以上を計上しているにもかかわらず、EY 監査法人に対して■■■開発 PJ に係る仕掛品を約 200 百万円弱に偽装した明細書を提出していた。

・ 2017 年 5 月の期末監査に際し、SSA が、■■■開発 PJ に係る正規の注文書及び請求書を、あたかも本件架空取引に係る正規の注文書又は請求書であるかのごとく偽造し、その一部を、本件架空取引に係る正規の注文書又は請求書であるとして、EY 監査法人に提出した。」

「また、当委員会が実施した調査の過程で、EY 監査法人による監査における指摘を逃れることを目的として、以下で列挙するような、帳票類の偽造や監査目的の達成を阻害する行為が行われていたことが見受けられたので、付言しておく。

・ 前述のとおり、架空の資産計上疑義事案(第 5‐5)に関して、SSE に対する「音声多機能メディアサーバ」という架空のソフトウェア開発の委託に必要な帳票類が SAX 及び SSE それぞれにおいて作成されていた

・ 前述のとおり、SPR における不正な会計処理等(第 5‐8)のうち不正な売上の前倒し計上に関しては、SPR が、SHD 経理部及び SAX 経営管理部の指示に基づき、自ら偽装して作成し、また顧客に依頼して交付を受けた事実と異なる内容の証憑を EY 監査法人に提出していた。

・ 2014 年 4 月に EY 監査法人が実施した長期滞留品置き場となっていた栃木事業場における在庫を視察した際、SHD 経理部は、EY 監査法人から在庫の管理状態の不備、工場建物の減損等を指摘されることを懸念して、栃木事業場の工場の一部を施錠し、当日 EY 監査法人が施錠した工場の見学を希望した場合でも「外部に賃貸しているため見学できない」と説明する方針で対応することとした。

・ SAX においては、SAX が販売する製品の買主である W6 から当該製品について修理を要する不具合を指摘された場合、W6 に対し、速やかに代品を納品した上、1~数か月後に不具合品を回収する運用をしていたところ、本来であれば、代品納品時には W6 に対し代品に係る代金を請求しないため当該代品に係る売上も計上すべきでないにもかかわらず、SAXアミューズメント事業部は、誤って、代品納品時に、売上を計上していた。

その後、2016 年 11 月に EY 監査法人が実施した会計監査において、当該代品に係る売掛金が未収となっていることを EY 監査法人から指摘された SHD 経理部は、EY 監査法人に対して、代品納品時の売上計上が誤りであることを伝えるのではなく、代品納品時の売上が、通常の正規品納品時の売上であるかのように装うこととし、SAX アミューズメント事業部に、代品納品時の売上に対応する架空の請求書を作成させ、EY 監査法人に提出させた。」

経営者が退任した(「サクサHD、取締役6人辞任=不適切会計で引責」(時事))とはいえ、会社は、監査法人を会社ぐるみでだましていたわけであり、監査契約は継続できないのではないでしょうか。
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