会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

経営破綻のFTXトレーディング 新CEOが議会でずさんな経営証言(NHKより)

経営破綻のFTXトレーディング 新CEOが議会でずさんな経営証言

経営破綻したFTXトレーディングの新CEO(エンロン破綻の後始末をやった人物)が米国下院で証言したという記事。

「FTXトレーディングの新しいCEOジョン・レイ氏は議会の公聴会の中で、かつて自身が破綻処理を担ったアメリカのエネルギー会社「エンロン」の事件と、今回のFTXの事案の違いについて「エンロンの事件は、洗練された人々による巧みに計画された陰謀だったが、FTXは、顧客の資産を自分の目的のために使うという昔ながらの着服だ」と答えました。

また、大きな違いは記録の有無だとしたうえで「今回のケースは取り引き情報などの記録が全く残されておらず異常だ。従業員たちは会計処理のやりとりをチャットで行い、主に中小企業を対象にしている会計ソフトを使っていた。数十億ドル規模の会社のやることではない」と指摘しました。

そして、「通常は大きな失敗をした会社にも何が起きたのかをたどるための 手がかりがある。しかし今回、私たちが扱っているのは文字通り、書類のない、記録のない経営破綻だ。暗号資産がどのように取り引きされたのか、追跡することは非常に難しい」と述べ、全容解明の難しさをにじませました。」

たしかに、エンロン破綻について書かれたものを読むと、エンロンは、特別目的会社を使ったオフバランス取引に関する細かい会計基準を、少なくとも形式的には遵守しようとして、会計事務所や法律事務所も関与させていたようですが、報道を見る限りでは、FTXの場合は、上場会社でないということもあるのでしょうが、法律や会計基準、規則などを守ろうという意識がなかったようです。

また、米SECは、前CEOのサム・バンクマンフリード氏を提訴したそうです。

FTXトレーディングは巨額の資金を投資家から集めていましたが...

「その際、バンクマンフリード氏は投資家に対して資産を守るためのリスク対策がとられて安全だと説明する一方で、長年にわたって顧客の資金を自身が保有する投資会社に流用していたことなどを隠す詐欺を行っていたとしています。

証券取引委員会のゲンスラー委員長は、「バンクマンフリード氏は偽りの上に砂上の楼閣をつくり、投資家には暗号資産のなかで最も安全な建物の1つだと語っていた」と批判しています。」

連邦地検の起訴状によると...

「それによりますと、バンクマンフリード氏はおよそ3年前から、FTXの顧客を欺くための計画を考案し、顧客の資金を自身が保有する投資会社の経費や債務の支払い、それに不動産購入や多額の政治献金のために流用したなどとして、詐欺や資金洗浄=マネーロンダリングなど8つの罪に問われています。」

バンクマンフリード被告を米当局が起訴、FTX破綻に絡み8件の罪(ブルームバーグ)

「ニューヨーク州南部地区の連邦判事は13日、バンクマンフリード被告に対する起訴状を開示した。この起訴状によると、同被告は複数の他者と合意した上で、「FTXの顧客をだまし、顧客資金を流用して(グループ内のトレーディング会社)アラメダ・リサーチの費用や債務に使っていた」。」

関連当事者取引の問題であるともいえそうです。

前CEOはバハマで逮捕されました。

暗号資産大手FTXの創業者、バハマで逮捕(BBC)

「カリブ海の島国バハマの司法当局は12日、11月に経営破綻した暗号資産(仮想通貨)の大手交換業者FTXの共同創業者、サム・バンクマン=フリード容疑者を逮捕したと発表した。

バハマ警察は、アメリカの連邦検察が同氏を起訴したとの正式な通知を受け、米政府の要請をもとに逮捕に踏み切ったという。」

逮捕前のインタビュー記事。

「バイナンスに騙された」、FTXのバンクマンフリードが主張(Forbes)

「バンクマンフリードは、FTXの破綻が同社の競合のバイナンスの創業者の“CZ”ことジャオ・チャンポンに仕組まれたもので、その戦略がCZの予想以上にうまくいった可能性があると述べていた(バハマ警察は、このインタビューの直後に、米国からの通知を受け、バンクマンフリードを逮捕した)。」

SECのプレスリリース。

SEC Charges Samuel Bankman-Fried with Defrauding Investors in Crypto Asset Trading Platform FTX

The complaint alleges that, in reality, Bankman-Fried orchestrated a years-long fraud to conceal from FTX’s investors (1) the undisclosed diversion of FTX customers’ funds to Alameda Research LLC, his privately-held crypto hedge fund; (2) the undisclosed special treatment afforded to Alameda on the FTX platform, including providing Alameda with a virtually unlimited “line of credit” funded by the platform’s customers and exempting Alameda from certain key FTX risk mitigation measures; and (3) undisclosed risk stemming from FTX’s exposure to Alameda’s significant holdings of overvalued, illiquid assets such as FTX-affiliated tokens. The complaint further alleges that Bankman-Fried used commingled FTX customers’ funds at Alameda to make undisclosed venture investments, lavish real estate purchases, and large political donations.

やはり、バンクマンフリードの個人会社であるアラメダとの関係やそれが開示されていなかったことが問題視されているようです。また、FTX関連のトークンのことを、overvalued, illiquid assets(過大に評価され流動性のない資産)だといっています。

こちらは別の暗号資産関連事件の容疑者に関する記事。

暗号資産テラ崩壊で国際手配のクォン容疑者、セルビア滞在か-報道(ブルームバーグ)

「ステーブルコイン「テラUSD(UST)」と関連トークン「ルナ」から成るエコシステムの創始者で、600億ドル(約8兆2100億円)相当の暗号資産(仮想通貨)喪失を巡り国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配されたクォン・ドヒョン容疑者がセルビアに滞在していることを韓国当局が突き止めた。朝鮮日報が12日、匿名の韓国の捜査関係者を引用して報じた。」

FTXとは直接の関係はなさそうですが、別の暗号資産大手も捜査を受けているそうです。

米司法省、バイナンス告発か否かで結論に遅れ=消息筋(ロイター)

「 世界最大級の暗号資産(仮想通貨)交換業バイナンスに無免許の送金や資金洗浄の共謀による米資金洗浄防止法違反、米国の対外制裁に抵触の疑いがあるとして米司法省が2018年から着手している調査を巡り、告発状を提出できるかどうかの判断が省内で割れ、結論が遅れている。」

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