会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「第23回政策評価に関する有識者会議」議事要旨等の公表について(金融庁)

「第23回政策評価に関する有識者会議」議事要旨等の公表について

金融庁のサイトに「政策評価に関する有識者会議」という会合(5月30日開催)の議事録などが掲載されています。

何か決めるというよりは、ご意見番の話を拝聴するという会議のようです。金融庁の政策に関連するテーマについて、質疑応答がなされており、参考になる部分もあります。

会計・監査関連では、J-IFRSや会計士業界について、少しやり取りがあったようです。

まず、J-IFRSについて

委員の発言

「任意適用を増やして、国際的な発信力をさらに強化するなどの目的はよく理解できますが、幾つかの基準をカーブアウトした基準をエンドースメントIFRSとして用意したときに、任意適用の数が急速に増えていくのかについても、疑問視する声もないわけではありません。エンドースメントした基準は、どういう位置づけの基準なのか、将来はどう考えているのか等についてもう少し明確にする必要があると思っておりますので、その辺についてのご意見をお聞かせいただきたいというのが2つ目です。」

金融庁の回答

「総務企画局から、島崎委員のご意見の2点について申し上げたいと思います。1点目が、「エンドースメントされたIFRS」についての基本的な考え方等ということでございます。このいわゆる「修正版IFRS」と申しますか、「日本版IFRS」と言われることもございますけれども、これにつきましては、先ほど島崎委員がおっしゃられたとおり、昨年6月の企業会計審議会の「当面の方針」というものの中で、策定が提言されたものでございます。その際、「当面の方針」では、一体どういう理由でこれが提言されたかと申しますと、釈迦に説法で恐縮ではございますけれども、1つが、日本が考える、あるべきIFRSを国際的に示すことになるという理由。もう一つが、先般の世界金融危機のような非常時に、我が国の事情に即した対応をとる道を残しておくことになるということです。

1点目は割とわかりやすいと思うのですけれども、2点目の「先般の世界金融危機のような非常時に、我が国の事情に即した対応をとる道を残しておく」というのは、なかなかちょっとわかりにくい。私としての解釈を申しますと、基本的にある金融危機が起こったときに、非常事態として会計基準の内容を少し変更することがございます。そのときに、日本基準であれば日本独自で変更ができます。しかしながらIFRSですと、例えば全世界的に金融危機が起こっていれば、全世界的な危機意識のもとでそういうことが議論されるんでしょうけれども、日本だけの現象の場合、対応がなされない可能性が十分にある。その場合、ピュアなIFRSだけで全部やっていると、多分身動きがとれない。そういうときに、「修正版IFRS」、「エンドースメントされたIFRS」というものがあれば、そこを若干工夫することによって、ピュアなIFRSから、割と移りやすい道を残しておくという意義があるのではないかと思っています。

ただし、いずれにしても、同じ「当面の方針」においても、まさに島崎委員がおっしゃったような問題意識がございまして、そうすると日本基準、米国基準、それからピュアIFRS、エンドースメントされたIFRSという4つの基準が併存するということになってしまうと。それは制度としてわかりにくく、利用者利便に反するという懸念があるとの指摘があるということを、「当面の方針」の中でも触れられていまして、そこでは4基準の併存状態は、「大きな収斂の流れの中での1つのステップとして位置づけることが適切である」というふうに書かれておるところでございまして、私どもとしても、そういう認識でおるところでございます。

それで「ピュアIFRS」と「修正版IFRS」のどちらを一体企業が採用するのかということでございますけれども、これはあくまでも企業自身が自らの判断において決定されるべきものであると思っています。ただし、考えますと、IFRSに移行する企業でございますけれども、例えば海外の子会社と国内の拠点とを同じ基準で決算を行いたいというような具体的なメリットを念頭に置きますと、そうしたメリットというのは、基本的にはピュアなIFRSでしか得られない。修正版IFRSは、多分そういうメリットは得られないということであろうかなと思っています。こうした中、金融庁として、こうしたメリットを度外視して、修正版IFRSに誘導するようなことは考えておりません。そういう意味では、個人的には基本的にはやはりIFRSに移行される企業であれば、大半はピュアIFRSを選択される可能性が多いのかなとは思っております。ただし、修正版IFRS、エンドースメントされたIFRSについても、先ほどのような意義もございますので、大きな収斂の流れの中での1つのステップとして、今回ASBJにおいて策定されているというふうに理解いたしております。」

会計士業界の魅力低下について

委員の発言

「中長期的な視点から私が懸念しているのは、この会計士業界というか監査業界というか、この業界の魅力が低下しているのではないかということです。これはひいては、優秀な人材が確保できないということにもつながっていくのではないかと思います。会計士試験の受験者数が激減しているとか、会計大学院も定員割れで厳しい状況であると聞いています。先日会計大学院の年次総会後のパーティーに出席しましたが、新たな受講生徒が1桁になりそうだという大学院も出てきているということで、この業界全体の問題になってくるのではないかなと感じております。」

金融庁の回答

「2つ目として、会計士の業界の魅力低下についてどう考えるかというお話がございました。私どもとしても、公認会計士というものは単に監査業務のみではなくて、会計の専門家として多様な分野で活躍していただくこと、これが期待されるというふうに考えています。そういう観点から、公認会計士資格の魅力向上と、優秀な人材の確保・育成という点については、島崎委員と全く同じ認識に立っておりまして、そのための方策について、公認会計士協会ですとか、私どもの中の公認会計士監査審査会などと連携して、必ずしも制度改正にとらわれない広範な観点から、検討を行っているところでございます。具体的には、まだ検討途上ではありますけれども、例えば国際的に活躍できる公認会計士を育成する、そういう支援をどうやって行っていくかとか、業務の多様性を踏まえた研修とか制度を構築する、そういうものを今後どのように工夫していくかとか、そういったことを通じて、会計の専門家として多様なキャリアが描けることを示していきたいと考えています。今後も多くの関係者とも議論しながら、具体的な施策の実施に向けて取り組んでまいりたいと考えています。また、そういう中の一環として、会計士さんに、企業の中で活躍していただくというのも重要な課題だと思っておりまして、そういうことの支援のために、私ども金融庁、先ほど申しました審査会、公認会計士協会、経団連、金融団体等で毎年意見交換会を行って、アクションプランを策定して、少しでも後押しができないかという取組みを行っているところでございます。今後とも、先ほど承りましたご意見等も念頭に置きつつ、どんなことができるのか検討していきたいと考えております。」

別の委員の発言

「それで先ほどの島崎先生のご発言に関連しますと、例えば会計士の試験をアジア共通の試験にする。そうすると、日本の公認会計士の方々が、アジアですごくビジネスがやりやすくなるわけです。そういう形で、アジア連携の中で、いろいろなところで日本のプレゼンスが出ていくようにすることが必要ではないかと思います。」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事