最低賃金1500円目標 岸田首相表明、30年代半ば―新しい資本主義会議
(どこがどう新しいのかさっぱりわからないという批判もある)政府の新しい資本主義会議が8月31日に開催され、最低賃金引き上げなどが打ち出されたという記事。
「岸田文雄首相は31日、首相官邸で開いた「新しい資本主義実現会議」で、最低賃金を2030年代半ばまでに全国加重平均で1500円へ引き上げることを目指すと表明した。」
現在、1004円だそうですから、ちょっと計算してみると、年4%程度の引き上げ率になるようです。名目価格だとすると、インフレ率に少し勝つぐらいでしょうか。
最低賃金以外に、税務に関係する事項があるようです。
知的財産から生じる所得に税制優遇、政府検討-技術の海外流出防止へ(ブルームバーグ)
「政府は、特許などから生じる所得に優遇税率を適用する制度の検討を始めた。...
新しい資本主義実現会議で、今年度議論するテーマとして設定した。自国で研究開発が行われた特許や著作権で保護されたソフトウエアが生み出す利益に優遇税制を適用する制度は、2000年頃に欧州で導入が始まり、近年では韓国や中国にも広がっている。」
新しい資本主義実現会議(首相官邸)
総理コメントより。
「最低賃金については、さらに着実に引き上げを行っていく必要があります。引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の賃上げ額についてしっかりと御議論いただき、その積み上げにより2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指してまいります。」
「国内投資促進に向けたさらなる政策的対応として、戦略的に重要な分野であるが、初期投資コストやランニングコストが高い分野について集中的に支援する税制や、知的財産の創出に向けた研究開発投資を促す税制を検討するとともに、新たな経済対策において、地方において賃上げが可能となるよう、中堅・中小企業による投資促進策を強化いたします。」
会議資料など。
↓
新しい資本主義実現会議(第21回)(内閣官房)
論点案(上記の会議資料より)(PDFファイル)
論点案より。
「国内投資促進について、米国・欧州等では、初期投資コスト及びランニングコストが高いが国として戦略的に長期投資が必要となる分野について、国内立地・投資を促進するため、インフレ抑制法(米国)やグリーンディール産業計画(EU)といった制度を設けつつある。我が国においても、国として戦略的に重要な分野であるにも関わらず、初期投資コスト・ランニングコストが高いため民間での事業採算性に乗りにくい分野の中で、特段に国として不可欠な投資を選んで、税制等で集中的に支援する制度を検討すべきではないか。」
「併せて、賃上げのためにも、地方で中小企業・スタートアップ等による工場立地を加速するため、支援制度の充実や規制制度の見直しについて検討すべきではないか。」
「イノベーションを加速するため、スタートアップのストックオプション関連の法制度や税制を早急に使い勝手の良いものにすることが必要ではないか。」
「利益の源泉たるイノベーションについても国際競争が進んでいる。ヨーロッパ等では、研究開発拠点の国内立地を促進するため、特許権やソフトウェアといった知的財産から生じる所得について優遇税制を適用する制度を導入しており、OECDも、自国で研究開発が行われたものであれば、知的財産から生じる所得に対する税制優遇を許容している。我が国においても、海外と比べて遜色なく民間による無形資産投資を後押しする観点から、知的財産の創出に向けた研究開発投資を促すための税制面の検討をすべきではないか。
「企業の参入・退出を促進するため、親族や長く務めた従業員が事業を承継する場合の事業承継税制について、延長・拡充を検討すべきではないか。また、M&A・事業承継等の幅広い選択肢について、早い段階から相談・支援できる体制を整えるべきではないか。」
「社会的起業家を育成するため、インパクトスタートアップの認証制度における企業選定を年内早期に実施すべきではないか。」
意図はよいのでしょうが、税優遇を受けるためには、国のお墨付きをもらう必要がある制度が多いようで、手続き的には、ますます煩雑になりそうです。