学校法人ガバナンス改革会議報告書「学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策」というのを、昨年12月に出した改革会議の座長であった増田氏(日本公認会計士協会元会長)にインタビューした記事。
「文部科学省の「学校法人ガバナンス改革会議」が(1)評議員会を最高決定・議決機関として権限を強化する(2)現役の理事・監事・教職員の評議員兼務は認めない――などを盛り込んだ報告書をまとめた。増田宏一座長(日本公認会計士協会相談役)に話を聞いた。」
改革会議の提案を説明している部分。反対論の誤解に反論しています。
「「我々の改革案では評議員会を最高監督・議決機関とするが、理事長なり理事が執行する権限は現状のままだ。経営計画や予算・決算の策定等の機能は全く変わらない」
「ただ、理事長らが監督監視する人物を選ぶ権限を持つと、自分たちに都合が悪くなれば解任できる。そこで、理事会・理事による評議員の選任・解任権や現役の理事、監事、教職員の評議員兼任は認めないことにした。評議員会は監督権限のみで執行権限は持たないから、法人の乗っ取りなどあり得ない。開催も年に4、5回程度だろう」
「社会福祉法人など他の公益法人並みにするだけの話なのに、なぜあんなに反対するのか、理解できない。誤解が多い」」
(その社会福祉法人などのガバナンスがうまくいっているのかという問題はありそうですが...。)
学校法人の開示や会計監査にふれている部分。
「「幼稚園を含む学校法人には税制の優遇措置があり助成金が出ている。助成金が1千万円以上の場合は会計監査人が入るが、目的は限られ報告書も出ない。会計基準も中途半端だ。現行制度では日大背任事件の舞台の『日本大学事業部』のような子法人も監査の対象外だ。仕組みを変えない限り改善はない」」
(報告書では、会計監査人を学校法人の機関にすることも提案しています(現在は、学校法人との請負契約)。しかし、会計監査は、本来監査対象の組織から独立した立場の者が行うべきなので、法人の機関とするのはおかしいでしょう(会社法の会計監査人制度も本当はおかしい)。また、会計士・監査法人による学校法人監査の報酬は、かなり低い水準のようですが、「機関」としての責任まで負わされたら、監査人のなり手がいなくなるのでは。計算書類やその監査報告書の開示については賛成です(現在は文科省や都道府県に提出されるだけで、公に開示する義務はない)。開示するとなれば、会計基準ももっと普通の人が理解できるようにすべきでしょう。)
評議員会については...
「――評議員会制度も問題は多い気がします。
「評議員は学校法人の委任契約になる。損害賠償義務とか善管注意義務などの責任が生まれ、ただの言い放しの機関でなくなる。責任を負わない評議員会を変えるのが今回の議論だ。まともな議論ができないから、何百人、何十人規模の評議員会はあり得なくなる。評議員会という名称を残しつつも機能を分ける。諮問委員会的なアドバイザーグループと実際に監視監督を担う少人数のグループだ。後者だけを評議員会とすればいい。既にそんな大学もある」」
改革会議の結論は反対が強すぎて、新しい組織で検討をやり直すことになっています。
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当サイトの関連記事(文部科学省の「学校法人制度改革特別委員会」について)
(補足)
不祥事を起こした日本大学は、補助金不交付となるようです。
日大への私学助成金、全額不交付へ 文科省など(日経)
「日本大学に対する2021年度分の私学助成金について、文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団が全額を不交付とする方向で検討していることが24日、分かった。田中英寿前理事長(75)による脱税事件や元理事らによる背任事件など一連の不祥事を受けた対応で、26日に開かれる事業団の運営審議会を経て正式に決める。」
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