会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝利益水増し:社外取締役「見通し不自然」修正されず(毎日より)

東芝粉飾事件の第三者委員会報告の概要が20日夜、本文が21日に公表される予定で、本格的にはそれから議論されるのだと思いますが、その前に、いくつか気になった記事を紹介します。

東芝利益水増し:社外取締役「見通し不自然」修正されず

東芝の社外取締役が、会社の示した業績見通しの不自然さに気づいていて、取締役会で指摘していたという記事。

「東芝の利益水増し問題で、佐々木則夫副会長が社長を務めていた2012年の取締役会で社外取締役が、売上高や利益などの見通しを「不自然」と指摘していたことが19日分かった。実態以上に高い業績を見込んでいると問題視されたが、修正されなかったとみられる。」

「関係者によると、取締役会で執行役ら幹部が利益見通しなどを盛り込んだ社内向けの予算を報告。業績が前年度より大幅に改善することを想定していたため、社外取締役の一人が「なぜ、こんなに楽観的な見通しが示せるのか」とただした。しかし、業績改善の根拠などの十分な説明はなかったという。」

社外取締役が、おそらく会社の資料だけを見ておかしいと感じたぐらいですから、外部監査人も気づいていて当然と思われますが、監査手続上、何か対応したのでしょうか。

にゅーす360度:紙面審査委員会から 「不適切会計」でいい?(毎日)

こちらの記事によると、会計士協会がマスコミに、「不適切会計」や「不正」「粉飾」の定義を説明したのだそうです。

「・・・東京新聞14日朝刊の特報面「ニュースの追跡」の記事、「東芝『粉飾決算疑惑』でしょ?」が応えてくれました。「日本公認会計士協会によれば、『不適切な会計処理』とは『意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、またはこれを誤用したことによる誤り』」。そして、「市場をだます意図がはっきりした段階で初めて不正会計、粉飾決算と評価される」そうです。要するに、故意に会計処理を誤ったかどうかで分かれるのです。・・・」

監査論的に定義がはっきりしているのは、「不正」だけですが、そこではだれをだますかは、問題になっていません。従業員が経営者をだます場合や経営者が債権者をだます場合も、当然ですが、不正です。協会が本当に、このように答えたのかどうかはわかりませんが、ちょっとおかしな説明です。東芝の場合は、会社の中のだれかが意図的に会計数値やその元データを操作したわけですから、「不正」でしょう(まだ確定したわけではないので「不正疑惑」でもよい)。

「不適切会計」については、協会の回答は「不適切会計」=「虚偽表示」ということのようです。しかし、そもそもマスコミ用語なので、協会が答えるのは「不適切」では。

「粉飾」も一般用語なので、どれが正しいということはないのですが、不正の結果、虚偽表示が発生すれば、経営者がやらせたり、知っていたりしたかどうかにかかわらず、「粉飾」と言えると思われます。東芝の場合は、「不正」によって「虚偽表示」が生じている(あるいはそのような疑惑がある)ので、「粉飾決算(疑惑)」です。(だれがその責任を負うかは別問題)

より厳しく、意図的かどうかを問わず、「虚偽表示」=「粉飾」という考え方もあるでしょう。

東芝:経営陣刷新へ 幹部、不正会計認める(毎日)

「同社幹部は「今回の問題が『意図的』と認定されるのは仕方がない。『粉飾』と批判されるのではないか」と不正会計を事実上認めており、経営責任は極めて重いとの認識が広がっている。」

【経済快説】不適切会計の東芝には「適切な罰則」を ライブドア事件を教訓に(夕刊フジ)

「・・・かつてのライブドア事件の際に、同社の株式を上場廃止にしたことが、主として株主・投資家を罰した結果になったことの不適切性を教訓とすべきだ。指定替えと課徴金で済ませる証券取引所の措置は割合妥当なものだろう。」

「今回の件が経営者の刑事的処罰、例えば実刑に発展するのかどうかはまだ分からないが、新旧の経営者が、違法な処理をせよと意図的に指示したことを法廷で立証するハードルはかなり高そうだ。落とし所は、本件に関わった経営者が現在就いているポストを辞し、社会的な制裁を受けたとして、刑事的には不起訴ないし、有罪でも執行猶予というくらいではなかろうか。」

だからといって、制度をより厳しくすることは「全体として、企業経営のパフォーマンスは落ちそうな感じがする」として、反対のようです。

「すると、投資家は、八百長も有りの競馬で馬券を買うような「達観を伴う高度な判断」の下に株を買わなければならないのか。さえないが、この辺が現実的なのであろう。 」

このコラム記事の趣旨とはちょっとずれますが、関係者の処罰よりも、実態解明とその公表の方が、再発防止のためには必要と思われます。それを会社が依頼した第三者委員会に依拠してしまってよいのかという点は、心配です。

当サイトの関連記事(虚偽表示、虚偽記載について)

東芝中堅幹部「昔から上長の顔色窺い先回りする傾向あった」(週刊ポスト)

「同社の半導体部門の中堅幹部はこう証言する。

「西田社長時代に社員の評価が事業部門ごとの査定になり、部門の業績がボーナスに直結するようになった。昔からうちは上長の顔色を窺って先回りする傾向があったが、さらに上の意向を忖度(そんたく)して動く風土になっていました」

 そして2009年、佐々木氏が社長に就任すると、“上からの指示”がさらに強くなっていったという。

「稟議書を提出しても、“利益が上がってない”と何度も突き返されるようになりました。仕事の進行に支障が出て、現場は頭を抱えていた」(前出・中堅幹部)」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事