あの八田教授が書いた『「第三者委員会」の欺瞞――報告書が示す不祥事の呆れた後始末』という本を紹介した記事。
第三者委員会のルーツは...
「第三者委員会というのは、外国の先例をまねしたものではなく、意外にも日本オリジナルな制度なのだという。ルーツと言われているのが、1997年12月、山一證券に設置された「社内調査委員会」だ。損失隠しが大問題になり、常務が委員長になって、社外の弁護士も招いて検証作業をした。98年4月に報告書を公表している。当時としては前例がなかった。この時の委員会メンバーに入っていたのが、國廣正弁護士。現在は、「格付け委員会」のメンバーになっている。
2000年代に入って、第三者委員会がどんどん増えた。2010年には日弁連が第三者委員会についてのガイドラインを公表している。数が増えたことで、本来の趣旨から逸脱している委員会が多くなったためと思われる。依頼者側に有利な取り計らいをするケースを念頭に、「経営陣の傀儡に過ぎないこともある」と歪みを指摘していた。
2011年にはオリンパスの不正会計事件が表面化した。オリンパスは内視鏡で圧倒的な世界シェアを誇る会社だった。日本政府としても、つぶすわけにはいかない。ここでも第三者委員会は「見事に『有効活用』された」と八田さんは皮肉る。」
会計不正を対象とする第三者委員会が多いにもかかわらず、法曹関係者が中心となっていることの問題点を指摘しているそうです。
「第三者委員会のメンバーは法曹関係者が多くを占めている。いわば弁護士の「独占業務」のようになっている。帝国データバンクの調査報告もこの状況を、「異例というべきである」と総括している。実際、最近では、「第三者委員会」の業務に特化した弁護士事務所もあるそうだ。弁護士業界にとってビッグなビジネス・チャンスになっているという。本書に登場する報告書でも、単一の弁護士事務所が、委員長も委員も、まるごと請け負っているケースがある。
八田さんは、第三者委員会が「会計のプロ」を冷遇しているのは、依頼主が意図的に避けている面もあるのではないかと推測する。要するに、本当の専門家による精査を回避している可能性がある、というわけだ。」
改善策は...
「八田さんは本書で、問題点が少なくない第三者委員会の改善点も指摘している。まず第三者員会のメンバーは、経営陣から「独立した」立場で選任すべきだとする。また、調査にかかったコスト、とくに弁護士費用は明らかにするべきだとしている。さらに、不十分な報告書が明らかになった場合は、委員会自身も責任を問われる、というメカニズムを働かせることも必要だとも提言している。」
会計不正の調査の場合は、弁護士が中心の第三者委員会の下請けではなく、きちんとした監査法人が、その法人の名前で契約し、報告書を公表するほうがよいと思われます。調査に関する責任がより明確になるでしょうし、監査法人の評判がかかっているので、いい加減な報告書を出したり、調査報酬で暴利をむさぼるということもないでしょう。調査範囲、調査依頼先等は、会社のガバナンスを担当する監査役や監査委員会が決めれば、会社の執行部からの独立性も確保でき、また、費用(少なすぎても多すぎてもだめでしょう)のコントロールも可能でしょう。
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