会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

オリンパス:虚偽記載、行政処分へ…証券監視委

オリンパス:虚偽記載、行政処分へ…証券監視委

オリンパスの粉飾事件に関する取引所や当局による処分についてふれた記事。

「・・・証券取引等監視委員会は、旧経営陣の個人による企業買収を巡る不正疑惑と、会社が問われる有価証券報告書の虚偽記載問題を切り離し、虚偽記載については課徴金などの行政処分にとどめる方向で検討に入る模様だ。このため同社は上場維持となる公算が出てきた。」

「関係者によると同社は過去20年分の有価証券報告書の訂正を近く財務局に提出。監視委は現在の有価証券報告書には損失隠しがないとみた上で、旧経営陣による企業買収疑惑と有報の虚偽記載を切り離し、会社本体については行政処分にとどめるとみられる。」

上場廃止にしないのはよいと思いますが、ライブドア事件などと比べて会社に対する処分が甘いように感じます。

また、企業買収を巡る不正は、バブル崩壊以来続けられていたといわれる損失隠しの清算を目的としたものであり、虚偽記載に直結するものです。切り離すことはできません。

さらに、「現在の有価証券報告書には損失隠しがない」という点も疑問です。例えば、会社発表によれば、ジャイラスに発行させた優先株の買い取りにより、のれんが約400億円も計上されています(その後ごく一部は償却されていますが大部分は残っているのではないか)。こののれんは有価証券投資の損失が形を変えたものですので、オリンパスの貸借対照表には、まだ損失が残っている状態といえます。その他にも何か隠されているかもしれません。

そもそも不正発覚時点の「有価証券報告書には損失隠しがない」というのは、ライブドア事件の場合(資本取引とすべき自社株の取引による利益を損益計算書において利益としていたので、発覚時の貸借対照表には影響なし)も同じであり、それが処分が軽い理由になるとも思えません。

さらに、仮に現時点の財政状態に影響しないとして、それは買収取引に絡めて不正に穴埋めしたことによるものです。不正に穴埋めする前に発覚した場合には、隠れた損失が残っているという理由で処分が重くなり、穴埋めが終わるまで隠し通した場合には処分が軽くなるというのでは、隠しておいた方が得だということになり、粉飾隠しのインセンティブを与えるようなものです。

オリンパス虚偽記載、行政処分へ 上場廃止判断に影響も(朝日)

「オリンパスの損失隠し問題で、証券取引等監視委員会は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑については同社の刑事責任を問わず、行政処分の課徴金にとどめる方向で検討を始めた模様だ。同社が近く、過去の有価証券報告書の訂正を財務局に出すことが条件。」

オリンパスに課徴金、法人の刑事責任は見送りも(読売)

「光学機器大手「オリンパス」の損失隠し問題で、証券取引等監視委員会は同社が粉飾決算を繰り返したとして、金融商品取引法に基づき課徴金を科すよう金融庁に勧告する方向で検討に入った。」

「関係者によると、監視委は、2008年までの経理処理で過去の損失は解消され、現在の財務状態には問題がないと見ているという。」

国際問題になってしまったので、当局としても早く終息させたいのでしょうか。

【オリンパス損失隠し】多額で長期の虚偽記載 悪質性の指摘も 上場廃止判断に影響(Sankeibiz)
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