会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

起業に便利な「合同会社」、不当な出資勧誘に悪用…「連絡取れない」トラブルも(読売より)

起業に便利な「合同会社」、不当な出資勧誘に悪用…「連絡取れない」トラブルも

合同会社が不特定多数の投資家から資金を集め、トラブルを起こす例が増え、当局が問題視しているという記事。

「「月利3%の投資先がある」。東京都内の30代男性は2019年頃、資産運用を検討する中で、投融資業を営む合同会社の「従業員」から会社への出資を勧められた。「FX(外国為替証拠金)取引でもうけている」「出金は自由にできる」という説明にも魅力を感じ、100万円分を出資した。 

合同会社に出資すると、株式会社の株主への配当のように業績に応じて利益の分配を受けられる。また、会社法の規定で出資を引きあげる時には持ち分が払い戻される。一方で、元本割れのリスクがあり、出資をやめる時期も会社の定款で制限されることがある。

男性は、リスクを十分に説明されないまま投資額を増やしたが、今春に突如、出金を拒否されたという。男性は「出資の引きあげを申し出たが、定款を理由に『できない』と言われて途方に暮れた」と振り返った。」

これが、契約に基づく投資家に対する債務(投資家側の金銭債権)であれば、裁判に訴えることもできるのでしょうが、合同会社の持分への出資となると、まずは、会社の自治の問題ということになり、ハードルが高いのでしょう。

ただ、出資者側が勝訴した例もあるそうです。

「訴訟に発展するケースも出てきた。30代男性が600万円を出資した合同会社を巡って昨秋、投資家ら約50人が同社に出資金の払い戻しを求める訴訟が東京地裁に起こされた。同社側は訴訟で「代表社員の裁量で金額を制限できる」との定款を盾に払い戻しを拒否したが、今年5月の地裁判決は、同社側が事業や財政の詳細な状況を説明せず、代表社員の裁量が合理的かどうかが立証されなかったとして、全員に総額4億8000万円を払い戻すよう命じた。」

トラブルが増えていることについて、学者が「金融当局が想定していなかった法規制の不備を突かれた形だろう」とコメントしています。

合同会社の制度は会社法に基づくものであり、法務省の縄張り、投資家保護は金融庁の縄張りということで、縦割りの弊害があるのでしょう。いくら規模が大きくても、会計監査が義務づけられておらず、決算公告もありません。定款で決めさえすれば、どんな機関設計も可能です。会社のガバナンスのブラックホールといえそうです(それを利用しているのが監査法人グループのコンサル会社など)。

記事の中でも触れていますが、金融庁は、「合同会社」による社員権の取得勧誘について、規則を強化しています。注意喚起の文書も出しています(→当サイトの関連記事(2022年11月))。しかし、その後、大々的に摘発されたという話は聞きません。

当サイトの関連記事(ポンジスキーム疑惑のエクシア合同会社を取り上げた報道について)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事